32話 友人の隠し事2
「認識阻害魔法ってあの?」
「そう、あの」
美少女のはずのリリが、ニコラス様に地味認定されてしまった事に納得できないでいたら、ウィルにまさかの認識阻害魔法を使用してると言われてしまった。
「マールデン侯爵令嬢って今クリスティーナ嬢と食べてる娘でしょ?」
「はい」
「あの娘なら入学式の時から認識阻害魔法使ってるよ、俺と一緒で目立ちたくないんだと思ってたけど、マリーのクラスだから一応気にしてたんだよね」
「じゃあ本当は彼女美少女なのかぁ、なら普段大人しいのもディーンに地味だと思わせる為の演技なのかもしれないね」
ニコラス様の言う事も一理ある、認識阻害魔法は訓練を受けてるような人でなければ、その人をモブ認定させる魔法だから、地味に思えてしまうのも納得だ。
しかも、それがディーンを嫌っての事なら尚更協力したい、やはり早急にリリの意思を確認しなくてはと私は意気込んだ。
午後からは私とリリとクリスで料理セミナーに受講申請をするつもりだったので、私は早めにお昼を終わらせ、席を立ったのだが、リリとクリスが食べていた席に向かうと、何故かクリスしかいなかった。
「あら?ねぇクリス、リリはどこに行ったの?」
「あ、マリーちゃん、リリちゃんならさっき話しかけてきた男の人と一緒に、話があるからって行っちゃったの」
「男の方のお名前覚えてる?」
「リリちゃんはディーン様って呼んでたよ」
「ディーンですって!?いったい何の用かしら、心配だわ…クリス、私ちょっとリリを探してくるわ」
「私も行く!何かあの人嫌な感じだったし」
そうして私達がリリを探すと、食堂から少し離れた廊下に2人の姿を見つけたのだが、どうやら揉めているようで、近寄る私達にも会話が聞こえてきた。
「お断りします」
「はぁ!?俺にそんな態度とっていいと思ってんのかよ、侯爵家への婿入りだっていうから、お前みたいな暗くて口うるさい地味女の婚約者になってやったんだぞ!」
「だからと言って、どうして私が貴方に他家のご令嬢を紹介しなければならないのですか」
「お前が可愛くないからに決まってんだろ」
「はぁ…侯爵家に婿入りするつもりなら、節度ある行動をして頂かないと困ります」
「はっ!ならお前も貧乏人がするような料理なんて趣味をやめる事だな!」
「っ…!」
うわぁ、酷い、こっちに転生してきて初めて、どうしても許せない人物に会えた気がする。
私とクリスは「何をしてるの!」と声をかけ、ディーンとリリの間に入り、少し距離をとった。
リリは少し驚いたようで「マリー、クリス、どうして…」と言っていたが、それに被るようにディーンが笑顔で話しかけながら近寄ってきた。
「何?君達もしかしてリリの友達なの?可愛いね、誤解させてしまったのなら悪いけど、俺はディーン・ダールヴィストと言ってリリの婚約者なんだ、ただ話し合いをしてただけだから、そんなに警戒しないでよ」
「とてもそうは見えませんでしたわ」
「やだなぁ、本当だよ、リリは君達みたいに華やかじゃないからね、ちゃんと友達は出来たのか婚約者として心配していただけさ」
私とクリスはその変わり身の早さと近寄ってくる気持ち悪さに鳥肌が立ち、その上「君達リリの友達なら俺とも仲良くしてよ」と言いながら触ってこようとしたので、思わずその手を叩き落とそうとしたら、ディーンの腕を掴んで間に入ってきた人がいた。
「なぁ、お前何で俺の婚約者に触ろうとしてんの?」
「ウィル!?」
「はぁ?お前誰痛たたたっ…!!」
「ちょっと黙ってろ、マリーごめんね、2人が食堂を慌てて出ていくのが見えたから追いかけてきちゃった」
「いえ、助かりました、ありがとうございます」
「で、こいつ誰?」
ウィルの問いに「すみません、私の婚約者のディーン・ダールヴィスト伯爵令息です」と答えたのはリリだ。
「へぇ、こいつが…」とウィルが若干不穏な空気を出し始めた所で、「ウィル待って~!」とニコラス様とカイン様がやってきた。
ウィルはディーンを掴んだままニコラス様と何か話し、カイン様は私とクリスから事情を聴くと「君達3人はこれから予定があるんだろう?彼はちょっと聞く事があるから私達に任せて行っておいで」と解放してくれた。
何とも言えない空気だったが当初の予定通り、料理セミナーが開催される調理実習室のある学部棟に向かったのだが、その途中「2人を巻き込んでしまってごめんなさい」とリリが謝ってきた。
「リリ違うわよ、私達が巻き込まれに行ったの」
「そうそう!リリちゃんあんなのが婚約者とか可哀そう、婚約やめれないの?」
「そうよリリ!ディーンは無いわ!アレは女の敵よ!」
「ふふっ、もう2人共、初対面の彼の事めちゃくちゃ言うのね」
「「だって気持ち悪いもの!」」
私とクリスの声が被ると、リリはとうとう笑い出してしまった、しばらくして「放課後2人に聞いて欲しい事があるの」と言われたので、私とクリスはもちろん了承した。




