31話 友人の隠し事1
登校中、ウィルが「ねぇマリー、本当に何もしなくて大丈夫?」とまた尋ねてきた。
「大丈夫です、別に殴られたりする訳ではないですし、今日はきっと大人しいと思いますから」
「だといいんだけど」
昨日、私が入学初日から、連続でクリス様とサイモン様に絡まれていると知ったウィルが、私を心配して何かしようとするので正直困っている、何をするつもりなのかは教えてもらえないので、もし今日絡まれる事があっても黙っておこうと思った。
ウィルに教室まで送ってもらい中に入ると、リリアン様が既に教室にいたので、今日の午後一緒に行く予定の料理セミナーについて話していたのだが、そこに「マリーちゃん、リリアンちゃんおはよう」とクリス様がやってきた。
私達が挨拶をすると「2人で何の話をしていたの?」と聞かれたので、料理セミナーの事を簡単に説明した。
するとクリス様は凄く興味を示して「私も一緒に行きたい」と言い出した為、リリアン様の様子を伺うと、料理仲間が増えて嬉しそうだったので、一緒に行く事にした。
思えばクリス様はゲームでも料理が出来る設定だったので、元から料理が好きなのだろう、リリアン様とも話が弾み、気付いたら3人共マリー、リリ、クリスと愛称で呼ぶ事になっていた。
しばらくするとホームルーム開始のベルが鳴り、私はこの時初めてサイモン様が登校してない事に気が付いたのだが、サイモン様がそばにいないクリスが無害過ぎて驚いた。
最初話が通じないと思っていたのも、今まで自分の思うまま自由に行動し話しても、親に叱られた事がない、と言っていたので、それとなく教えてみると、ちゃんとこちらの話を聞くし直せる子だった、おい、誰だこの子をここまで甘やかしたのは。
そもそも害が無いなら、私がヒロインと仲良くするのは悪い事ではないのでは?と思ったので、あえて距離を作るのは止めようと思った、問題があるとすればサイモン様だ。
今日の午前の授業は男女別れて礼儀作法の授業だったのだが、私は家での教育もあり特に問題はなく、リリはもちろん、クリスも多少姿勢は直されていたが特に問題はなさそうだった。
クリスは普段令嬢らしからぬ行動がやや目立つものの、やはりやれば出来る子らしい、流石初期ヒロイン、優秀だ。
順調に午前の授業は終わり、昼休みとなったので、クリスに「クリスは昼休みどうしてるの?」と聞くと「いつもはサイモンに誘われるから食堂について行ってるんだけど、今日は1人かな」と言った。
「クリス今日は1人なの?なら私と食べる?」
「え!いいのリリ、ありがとう!」
リリがクリスをお昼に誘ったのだが、確かリリには2つ上の婚約者がいたはずと思い、こっそり「リリ、貴女婚約者は大丈夫なの?」と聞くと、複雑な顔をした後「一緒には食べてないから、大丈夫よ」と言った。
私はその表情に何かあると思ったので、昼食のいつものメンバーが集まった時に、誰に聞こうか悩んだ末、勘に従いニコラス様に聞いてみた。
「ニコラス様」
「ん?なーにマリーちゃん」
「リリアン・マールデン侯爵令嬢の婚約者って誰かご存じだったりします?」
「うげっ、それならディーン・ダールヴィスト伯爵令息だよ、何?あいつとうとう何かやったの?」
「ディーン…そんな、あいつがリリの婚約者だなんて」
「マリー?そいつがどうかしたの?」
「女の敵…」
「え?」
「ウィル、あいつは、女の敵なんです!」
「うん、マリーちゃんそれ正解!」
ニコラス様のお墨付きまで貰った女の敵、ディーン・ダールヴィスト、こいつこそ2章攻略対象でありながら賛否両論巻き起こした私が1番嫌いなキャラだ、なぜ嫌いかと言うと、誠実さが欠片もない!
ディーンルートをざっくり説明すると、常日頃から、女とみればとりあえず声をかけ、5股6股当たり前のディーンが、ある日ヒロインに声をかけるものの、見事玉砕、逆に火が付きヒロインを落とそうとあの手この手で迫ってくるというものだ。
一見、数多の女から1人の女に一途になったように思えるが、こいつときたらヒロインを落とす最中も普通に別のご令嬢と付き合っている、意味が分からん、挙句に好感度を上げ終わると婚約者がいる事を告白してくる屑っぷり!いやいや、浮気してんなよと言いたい。
最終的に、ヒロインを理由に婚約破棄し、ディーンは次男で家督を継がない為、ヒロインの家にやってくる形だ、正直「え、こいつヒモじゃね?」としか前世では思えなかった。
そんな奴がリリの婚約者だなんて、何とかしたい、でもこればっかりは本人を無視して出来ないから、今度リリの意思を確認しなければと思っていると、ウィルがニコラス様からディーンがどんな人物か聞き終わったらしく「うわ、最低だなそいつ」と言っていた。
「あいつはね~散々遊んだ娘が、他にも遊んでる女の子がいる事に怒ると「じゃあ、君もういいや」とか言って捨てちゃうんだよね、元々愛人枠狙いの遊び慣れてる娘ならまだしも、男慣れしてないご令嬢とかも平気で引っ掛けるから、いつか痛い目見ると思うな~、ちなみに俺はあいつ嫌~い」
「ニコラス様、よくご存じですね」
「泣かされた娘何人か知ってるからね、で、あいつ何したの?」
「いえ、実は私リリアン様と仲良くなりまして、婚約者の話をした時複雑な顔をしていたので気になって」
「あ~、なるほど、マールデン侯爵令嬢も可哀そうだよね、婿養子に来る気がある歳の近い奴で、家柄が1番上なのがあいつなんだから、あんな大人しくて地味な娘じゃ強く出れないんだろうね」
「えっ?」
「ん?」
「彼女、地味、ですか?」
リリは綺麗な銀色の髪に、浅葱色の瞳をしていて、前髪は少し長めだが目の覚めるような美少女だ、間違っても地味などではない。
何故地味だなんて思われてるんだろうと悩んでいると、ウィルが「ねぇマリー、その子認識阻害魔法使ってるよ」と言ってきた。




