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28話 精霊の寵愛者1


歴史学の授業が終わった後、パトリック様とリリアン様はやや放心状態で次の授業に向かい、私はヴィンス先生に残るよう言われたので、そのまま残った。


「マリアンヌさんは次も私の精霊学の授業ですから、一緒に行きましょう」

「はい、分かりました」

「ではこの魔法陣に乗って下さい」


ヴィンス先生がそう言うと床に魔法陣が現れたので、言われた通りその上に乗ると「では行きますよ」と言ってヴィンス先生が指を鳴らし、次の瞬間精霊の泉に来ていた。


「えっ精霊の泉?先生これ転移魔法、ですか?」

「そうです」

「転移魔法って個人で使えるものなんですか?」

「使えますよ、エリック先生はもちろん使えますし、生徒でも何人か使えます」


そんな説明を受けた私は、周りを見て昨日来た時は無かったものがあるのに気が付いた。

白くて丸いテーブルに、同じく白い椅子が3脚、しかもそのうち1つに足を組んで座っている人がいて、私はその人に会うのは初めてだが知ってはいた。

3章のシークレット攻略対象の1人、アルヴィン・フェアリード大公爵、アーノルド国王陛下の弟だ。

襟足が腰位までの長さがあるサラサラの白銀色の髪、綺麗な琥珀色の瞳に、この人今31歳のはずなんだけど20代前半に見える美貌、服も白を基調にしているせいか全体的に眩しい、アルヴィン様は椅子から立ち上がると「初めまして」と声をかけてきた。


「初めまして、マリアンヌ・ガルディアスと申します」

「アリアンナの娘だろう?知ってるよ」

「マリアンヌさん、彼はアルヴィン、精霊の寵愛者で私の友人です、ここで授業をする事を話したら参加するって言い出してね、勉強にはなるから特別講師みたいなものだと思ったらいいですよ」

「あの、大公閣下は」

「私の事はアルヴィンと呼んでくれ、大公なんて柄じゃないんでね」

「分かりました、アルヴィン様は普段領地にいらっしゃると思っていたんですが、何故王都に?」

「それは座りながら話そうか」


言われた通り席に着くと、アルヴィン様が指を鳴らし、テーブルの上に可愛らしいティーセットに入った紅茶が現れた。


「さて、どこから話そうか、ちなみにマリアンヌは私について何を知ってる?」

「国王陛下のご令弟様で精霊に好かれていた為、早くに王位継承権を放棄し、ほぼ社交に出る事もなく領地にずっといらっしゃる、と聞いています」

「なるほど、貴族向けの言い訳しか知らないんだね」


私が今言った内容はゲームでも言われているアルヴィン様情報なんだけど、これが貴族向けの言い訳って事は、ゲームでは語られてない内容があるのかな、今度またノートをまとめなおさなきゃ、と思いつつアルヴィン様の話を聞いた。


「まず私は間違いなく前国王陛下の息子でアーノルド兄さんとは兄弟だ、瞳の色云々はまた次の機会に言うとして、次に私は精霊に好かれているなんてレベルじゃない、寵愛者だ、おかげで子供の頃は精霊との付き合い方が分からず、私の機嫌ひとつで天候が変わるもんだから、周りは皆私を避けるようになった、そこに「こんな危険人物に王位継承権は与えてはいけない」と騒ぐ奴が居てね、放棄ではなく剥奪されたんだ、まぁ継承権に関しては興味無かったから、むしろありがたかったんだけど、ここまではいいかな?」


私は王家の闇を垣間見た気がしつつも「はい、大丈夫です」と答えた。


「そんな経緯で私は6歳の頃、1人で今いるフェアリード公爵領に送られたんだけど、あそこは大昔にここに住んでた王子が、大公爵になった後治めてた領地なおかげで、領地のほとんどがルルティナの森っていう精霊が居る森なんだ、だから生活に困る事も無かったし、1年もすれば精霊との付き合い方も分かって、ルルティナの森からこの泉へ来れるようになったんだ、で、そんな時にこの泉で知り合ったのがこいつ」

「そんな事もありましたね」

「ありましたねじゃねぇよ、俺は俺以外の人間が精霊の泉に居て結構焦ったんだからな」

「アルヴィン、口調」

「仕方ないだろ、外面仕様なんて久しぶりなんだから」

「マリアンヌさんが驚くじゃないですか」

「あ、大丈夫です、お気になさらず」

「すまない、まぁこの口の悪さも社交に出ない理由の1つだな、もう1つは、今私は生存不明という扱いになってるから、今更出て行って騒がれるのも気が進まない、というのがある」

「生存不明なんですか」

「領地に送られて以降、城とは連絡を取ってないからね、暗殺者なんて送ってこられても面倒なだけだし」


アルヴィン様の口から不穏なワードが出たところで、私は聞かなかった事にしようと思い、出されていた紅茶に口をつけたのだが、今まで飲んだ中で1番美味しくて驚いた。

アルヴィン様にしたり顔で「美味しいだろ」と聞かれたので、何度も首を縦に振ってしまった。


「凄く美味しいです、今まで飲んだ中で1番だと思います」

「精霊が選んだ茶葉で作ったからな、そこらのより美味しい自信はあるよ」

「そこらどころかお城で出された紅茶より美味しいですよ」

「あぁ、そういえばマリアンヌはカインやその婚約者と仲が良かったんだったな」

「…何故ご存じで?」

「そこは私が説明しましょう」


そう言ったヴィンス先生によると、精霊に好かれる人は3種類に分けられるらしく、それぞれ寵愛者、祝福持ち、加護持ちと呼んでいるそうだ。


「私と先生は祝福持ちになるんでしたっけ?」

「そうですね、そしてアルヴィンが寵愛者です」

「私が精霊に愛されてて、好かれているのがヴィンスやマリアンヌだな、金目の奴らは精霊が好きな魔力持ちの証だ」

「え、では金色の瞳の方達は加護持ち、という事ですか?」

「正解です、それぞれ出来る事に差があって、加護持ちの方は自身の魔力を対価に精霊魔法を使います、私達祝福持ちは精霊に好かれているので、願うだけで精霊魔法が使えますし、精霊が私達の幸せを願っているので、凄く勘が良くなります」

「勘が良くなる…」

「精霊の力を借りた勘を侮ってはいけませんよ、人の嘘が分かるようになりますし、何となく思った事はほぼ当たります、無意識の未来視に近い現象ですね」

「思い当たらなくもないです」


私が初めてウィルに会った時にウィルだと分かったのは、精霊のおかげだったという事なのだろう、だってウィル無くして私の幸せはあり得ない、精霊さんめっちゃいい仕事してくれてる、ありがとう。


「ちなみに私は精霊の居るこの大陸ならほぼ無敵だ、望めば誰がどこで何をしているのかも分かるし、誰かが私の名を呼べばすぐ分かる、それと精霊と契約してるおかげでほぼ不老だ」

「アルヴィンは人というより半精霊だと思った方が受け入れやすいですよ」

「そ、そうですね」


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