25話 入学初日5
席に着くとまずカイン様に「呼びつけるような真似をしてごめんね」と謝られた。
「いえ、大丈夫です、それにイベントの件、ですよね?」
「そうだね、流石にこの件についてはこのメンバーの時じゃないと話せないから」
「でしたら私、その件でお話したい事があるのですが」
「ん?何かあったの?」
そして私は今日聞いた、お昼休みに既にイベントが発生したかもしれない事と、何故かクリスティーナ様に絡まれ、サイモン様に威嚇された所までを話した。
するとアリスに「マリー、貴女入学早々災難ね」と言われ、カイン様は「数年前からあんまり成長してないのかなぁ」と困った笑みを浮かべていた。
ウィルは何か考え込んでいたのだが、何かを察したカイン様に「ウィル、駄目だよ」と王子スマイルで注意され、不服そうながらも「分かってますよ」と返事をしていた。
私が精霊の泉に行けてしまった件については、分からない事が多すぎるので、ヴィンス先生にちゃんと教わってから話そうと思い、伝えるのは止めておいた。
「でもまさかもうイベントが終わってるなんて思わなかったわ、しかもサイモン様とでしょ?」
「会話の内容からするとそうだと思うんだけど、でももしかしたら放課後にも何かあるかもしれないと思って見に来たの」
「そうだね、しかもマリーのその予想、当たりそうだよ」
そう言ってウィルが指差した先には、サンルームから見える中庭に入ってくる、クリスティーナ様とサイモン様が見えた。
「おや、しかも鳥の巣がある木に近付いて行ってるね」とカイン様が言い、アリスが「何をするつもりかしら?」と言った。
するとウィルが「え~っと…どうやら昼に巣に戻した小鳥が無事か確認したいみたいですね」と教えてくれ、カイン様が「本当に伯爵令嬢が木登りするんだね」と呆れている。
「あっ誰か止めに来たわ、ってアレはまさか…」
「うん、そうだねアリス、そのまさかだよ」
「アル、何でお前が来るんだよ」
「でもウィルほら、バージル様もいらっしゃるわ」
私達がアルベール殿下、バージル様、クリスティーナ様、サイモン様の動向を見守っていると、初めのうちは、バージル様が木に登ろうとする2人を説得していたのだが、埒が明かないと判断したのか、アルベール殿下が魔法で巣ごと木から降ろし、2人に確認させ帰らせた後、巣を木に戻しバージル様と中庭から出て行った。
一部始終を見ていた私達は、まずカイン様が「ねぇアリス、マリアンヌ、これってイベント的にはどうなの?」と尋ねてきた。
「そ、そうですわね、私はたぶんアルベール殿下のイベントでは、と思うのですが自信がありませんわ、マリーはどう?」
「そうね、私もアルベール殿下じゃないかと思うけど、バージル様もサイモン様も絡んでるから分かり辛いわ」
「やっぱりそうなるんだね、どうしようかなぁ」
カイン様が何かに悩んでいると、ウィルが「ねぇマリー、ちなみに次のイベントって何なの?」と質問してきたので「次は確か、来週のダンスの授業でのイベントです」と答えた。
「あぁ、上級生が参加するアレか」
「はい、ダンスの授業でクリスティーナ様が誰とペアになるかで、今1番好感度が高い方が分かる、というイベントのはずです」
私がそこまで言うとカイン様が「じゃあそのイベント、ちょっと変えてみようか」と言い出した。
本来、黄昏のメモリアで起きるイベントは、新入生のダンスレベルを測る為、ダンスの授業を修了している上級生がパートナーをしてくれるというものだ。
ゲームでは2章までに登場する攻略対象で、1番好感度が高い方がクリスティーナ様のパートナーになるのだが、ご都合主義満載の為、好感度が高ければ講師のはずのルーク先生まで現れたりする。
流石に現実で講師である先生が来る事は無いと思うが、カイン様はどうするつもりなのか聞いてみた。
「カイン様、イベントを変えるとはいったいどうするんですか?」
「新入生は最初のダンスの授業で、相手を変えて2回踊るんだけど、クリスティーナ嬢が攻略対象の誰とも踊らなければどうなるのかと思ってね」
「なるほど、でもどうやって別の方と踊ってもらうのですか?」
「ウィルとニコラスに相手をお願いしようと思うんだ」
「えっ!俺マリー以外と踊るなんて嫌です」
「ウィル⋯最初のダンスはマリアンヌと踊ってくれていいから」
「分かりました、我慢します」
「ありがとう、あとマリアンヌ、君には2回目のダンスの時アルと踊って欲しい」
「アルベール殿下とですか?」
「うん、私とアルは王族だから新入生とのダンスは恒例行事みたいなものなんだけど、クリスティーナ嬢の場合あの行動力で自らアルを誘いかねないから」
「あ、はい、分かります」
「だから悪いんだけどアルが誘われないよう先に組んでくれると助かる」
「分かりましたわ」
「もしそれでも割り込んできた時は、私かウィルが助けるから安心して」
「マリーに近寄れないよう俺がさっさと捕まえておくよ」
「ウィル、ありがとうございます」
こうして次のイベントの対策を講じた私達は、サンルームを後にし、カイン様とウィルがアリスと私を寮まで送ってくれて解散となった。
私はその日の夜、あまりに色んな事が起きた入学初日に疲れ、早めに就寝しようとしていたら、またあの銀色の猫がやってきた。
ルーフバルコニーの扉を開けると、猫は中に入り足にすり寄ってきたので「あなた自分の家があるんじゃないの?」と聞いてみるもののもちろん返事は「にゃー」だ。
私の部屋に頻繁に来るし、首輪もないので、もしかしたらちゃんとした飼い主は居ないのかもしれないと思った私は、とりあえず猫にメーネスと名前を付けて呼ぶことにした。




