20話 女子寮2
食堂に着くと思いのほか人がいなかった、いつもこうなのかとアリスに尋ねると「いつもはもっといるのよ、ただ春休みの最終日である今日ギリギリに寮に戻ってこられる方もいるから」と教えてくれた。
食堂はセルフ形式で、寮専属の料理人に注文して作ってもらい、各々自分でテーブルに運ぶ事になる、学園の食堂も同じだが、学園の方は頼めばお弁当にもしてくれるらしい。
私は何の疑問もなく注文してテーブルに着いたのだが、何故かキャシーが驚いていたので首を傾げていると「公爵令嬢の貴女がセルフ形式に普通に馴染んでるから驚いてるのよ」とアリスが笑っていた。
確かに、今まで食事はサーブしてもらって当たり前な生活をしていたご令嬢が、初見でセルフに馴染んでいたら驚くだろう、アリス曰く「毎年一定数はセルフ形式に戸惑うご令嬢がいるのよ」だそうだ。
「マリーは大丈夫だと分かっているけど、酷いと自分で運ばずに下位貴族のご令嬢や侍女に運ばせる方もいらっしゃるわ」
「あらまぁ、自身の事は自らするのも勉強だと思うのですけれどね」
するとキャシーが「私たまにマリーの方が年上なんじゃないかと思う事があるわ」と、ある意味核心をついてる事を言い出した。
「そうかしら」
「そうよ、私よりもしっかりしてるし、お姉様とも話が合うみたいだし、私もマリーやお姉様のようになりたいのに」
そう言ってキャシーはむくれてしまったのだが「キャシーにはキャシーにしかない良さがあるわ、アルベール殿下もそういう所が好ましいと言ってくれてるのではなくて?」とアリスがフォローを入れた。
するとキャシーはほほを染めて「確かにアル様には「お前はそのままでいいんだ」とよく言われますけど…」と恋バナをし始めたので私とアリスも乗っかってしばらく盛り上がった。
そして、恋バナも食事もひと段落したところでアリスが「そういえばマリーは選択科目で悩んでるんだったわね」と私の相談に乗ってくれた。
「アリスやキャシーは何を選択しているの?」
「私達は王子妃教育との兼ね合いもあるから言語と世界史と外国文化とかかしら、外交を前提としたものがメインよ」
「内政や社交、国内の歴史に関してはお城で勉強するんですよね、お姉様」
「そうよ、キャシー」
「なるほど、2人共王子殿下の婚約者ですものね、そもそも前提が違いましたわ」
「この学園なら社交以外は何を選択しても大丈夫だと思うわよ」
「え、社交は何かありますの?」
「社交はねぇ、何というか時間を持て余した方々が、見栄やプライドをぶつけ合ってる感じの所よ」
「…そう、それは無いわね」
「えぇ、無いわ」
私とアリスが小さくため息を吐いていると、キャシーが「マリーは何か知りたい事は無いの?」と聞いてきた。
「知りたい事ねぇ、気になるのは精霊学と歴史学かしら」
「あ、それならヴィンス先生よ、凄く目立つ格好してるから明日の入学式でもすぐわかると思う」
「そ、そうなの、ありがとうキャシー」
苦笑い気味に答えているとアリスがそっと耳打ちしてきた。
「ちょっとマリー、ヴィンス先生って私が以前話したアレよ!?」
「分かってる!分かってるんだけど、シナリオ的にも精霊については知りたいし、あと神話についても個人的に調べてみたくて」
「ん~、まぁそういう事ならいいわ、あえて近寄ってみるっていうのも有りかもしれないし、でも気をつけてね」
「大丈夫よ、ありがとうアリス」
その後入学式や学園内の施設等について聞いていたのだが、ふと気になったので「そういえばクラス分けってどうやって決めているの?」と聞いてみた、テストなどは選択した学科毎に違うので学力順位のようなものはこの学園には無い。
「あぁ簡単よ、爵位順になってるわ、ホームルームの為だけのクラスだからね、クラス替えも担任替えも基本なし7年一緒よ」
「爵位順、そうなのね⋯」
少し考え込んでいると「マリー、何か気になる事でもあるの?」とキャシーに聞かれてしまったので、とりあえず「なんでもないのよ」と誤魔化しておいたけれど、クラスが爵位順なら、私は伯爵家である初期ヒロインのクリスティーナ様と、幼なじみ兼わんこ枠攻略対象のサイモン様と同じクラスになるような嫌な予感がしていた。




