17話 入学前に1
最初のイベントが発生してから1年と10か月、ウィル様も来月にはサンステラ魔法学園に入学する歳になったので、今は入学前の最後のお茶会中だ。
ゲームの舞台でもあったサンステラ魔法学園は、11歳から18歳までの貴族の子供が通う学園で、王都サンステラにある貴族の居住区や貴族向け商業区に正門が隣接しており、周囲は精霊がいると言われている森に囲まれている、元ははるか昔に居た、精霊の寵愛を受けた王子の居住区だったのを学園に改装したらしい、全寮制でどんなに家が近くても入寮を義務付けられており、義務にした理由は毎朝馬車の行列なんて作っていられないかららしい。
許可を取れば外出、外泊も出来るし、夏季休暇や冬期休暇中は帰省したりもできる為、特に厳しいという事はないけれど、今までのように頻繁にウィル様に会う事は出来なくなるだろう。
他に以前と変わった事があったとすれば、私もお母様と一緒にお茶会に参加するようになり、同年代の子達と知り合うようになった、ただ私が転生者な事とよく話をするのがウィル様やカイン様、アリスといった子供っぽくないメンバーだった為、今のところ表面上でしか付き合えなかった。
ただ、アルベール殿下の婚約者のキャサリン様は、ゆるふわな天使の様な可愛らしさに癒されるので、キャシー、マリーと愛称で呼び合うくらい仲良くなった。
ウィル様も最近は何やら忙しそうで、以前より会う回数が減っているのだけれど、それに比例するようにスキンシップの回数が増えていくので、正直気が気じゃない、今もお茶にはまったく手を付けず、私を膝にのせて後ろから抱きしめている。
「あの、ウィル様、毎回思うのですが重くないんですか?」
「重くないよ、って普通に言っても心配だよね、俺は仮に大岩をのせたとしても平気だから心配しないでって言えば大丈夫?」
「あ、はい、そうでしたね」
私には基本優しいので忘れそうになるけど、ウィル様も大概チート仕様だった事を思い出した。
「それよりマリー、俺達もうすぐ更に会えなくなるから、そうなる前にお願いがあるんだけど」とウィル様が言うので「はい、何でしょう?」と聞くと、ウィル様は私の向きを前から横に変えると「ウィルって呼んで」と間近で微笑んできた。
今まで何度も似たような事をされているのに、相変わらず私の心は「うああぁウィル様が近いいぃ」と騒がしい、だって好きなんだから仕方ない、でも多少メンタルも成長しているようで、ウィル様の行動に前みたいに固まらず、何とか応えれる程度にはなった。
「わ、分かりましたわ…ウィル」
私がそういうと顔が見えないよう抱きしめられて「もう1回」と囁かれた、本当に毎回何のご褒美なのかと思いつつ「ウィル」と呼ぶと「うん、ありがとう」とお礼を言われた、今日もウィルが尊い。
しばらくされるがままでいるとウィルが「マリーに会えなくなるの嫌だなぁ」と言い出した。
「私もウィルが学園で他のご令嬢に言い寄られないか心配です」
「俺は大丈夫だよ」
「何で言いきれるのですか、ウィルは優しいですし、何でも出来ますし、容姿だって素敵なのですから」
「うん、マリーは俺の顔好きだよね」
「んぐっ、そ、そうですけど、そうじゃなくて」
「俺学園では認識阻害魔法かけるから大丈夫だよ」
「⋯はい?」
「辺境伯三男の俺に言い寄るなんて、アルやカイン様目当てか顔目当てだろうからね、マリー以外に言い寄られても迷惑だし」
「え、問題はないので?」
「んー、実技は父さん仕込みだから免除だし、俺は基本ロナルド様と約束してる座学がメインだから、大丈夫じゃないかな?」
「そうですか」
「安心した?」
「えぇ、まぁ、それなりに?」
許されるならウィルの制服姿とか、授業風景とか、色々見たいけれど歳の差ばかりはどうしようもないので諦める。
私はウィルの婚約者だと胸を張って言えるように、勉強と自分磨きを頑張って、入学後、もしヒロイン達と戦う事になっても勝てるように備えるだけだ。
そんな入学前の努力をしていたらあっという間に時が過ぎ、私も来年には入学という年の夏季休暇初日に、カイン様に呼び出された。
お城のカイン様の部屋に着くと、カイン様、アリス、そしてウィルといういつものメンバーが既にいて、私はウィルの隣に座るように言われた。
この日半年ぶりに見たウィルは、声変わりもして大分大人っぽくなっていた、うん、笑顔が眩しい、そんな事を考えつつ呼び出された理由を聞いてみた。
「あの、このメンバーという事は、何かあったのですか?」
「えぇ、マリー、落ち着いて聞いてね、何故か新ヒロインが入学してきたわ」
「⋯え?ん?いや、待ってアリス、新ヒロインって確か、クリスティーナ様が15歳の時に編入してくるはず」
「そのはずなんだけど、何故か今年普通に入学してきたわ」
聞かされたのはヒロイン入学前に既に新ヒロインが学園に居るという衝撃的な事実だった。




