12話 推しの誕生日
今日はウィル様の誕生日なので王都にあるクレメント辺境伯邸にお邪魔している。
パーティーなどではなく、ウィル様、ウィル様のお母様、そして私とお母様の4人でお祝いするささやかな席だ。
「主人は仕事だし、上の子達は学園の寮に居るから、今日は少人数なのだけれど、ウィルったらマリーちゃんがいればそれでいいとか言うのよ、何でこんなにも急にませちゃったのかしら」
そう語るのはウィル様の母親のコルネリア・クレメント辺境伯夫人だ。
美しい赤毛にウィル様と同じエメラルド色の瞳、顔立ちもよく似た綺麗な女性だ、ちなみにアルベール殿下の母親のシンシア王妃殿下のお姉様でもある。
「母さん、余計な事は言わなくていいから」
「あら、どれを言ったらいけないのかしら」
「もう、母さん!」
「冗談よ、マリーちゃんとアリアンナも今日はゆっくりしていってね」
「はい、ありがとうございますコルネリアさ「お義母さん」」
「はい?」
「私の事はお義母さんって呼んで欲しいわ」
「お、お義母さん」
「はああぁ、やっぱり可愛いわね、うちも娘が欲しかったわぁ、もう男ばっかりでむさくるしくて」
私が茫然としているとウィル様が「うちの母さんずっと娘が欲しかったんだって、でも実際は男3兄弟だから、今回の俺とマリーの婚約凄く喜んでくれてるんだ」と教えてくれた。
それからお義母さんとお母様は2人で色々話し込みだしてしまい、私は「うちの庭園も結構綺麗なんだよ、行ってみない?」とウィル様に誘われたので、彼の案内で庭園を2人で散策中だ。
「あ、ウィル様、私ウィル様にプレゼントがあるんです」そう言って私はウィル様に用意していたプレゼントを渡した。
「わぁ、ありがとうマリー、ここで開けても?」
「えぇ、もちろん」
ウィル様は包装を綺麗に取ると、箱を開けて中を確認した。
「へぇ、ポーラー・タイかぁ、飾りがマリーの瞳みたいで綺麗だね、ありがとう、大切にするよ」
「はい、そうして頂けると私も嬉しいです」
「せっかくだからこれ、マリーが俺に着けてみてくれない?」
「えっ、構いませんが、少し屈んで頂いても良いですか?」
「もちろん」
するとウィル様は今着けていたアスコット・タイを外すと、私が着けやすいよう屈んでくれた。
私は箱からポーラー・タイを出すと、輪の部分を広げ頭から通して襟元にかけて調節しようとしたのだが、ここで気づいた、顔が近い!!!
輪の部分を通した時は、屈んでくれていたので目線ぐらいに頭があったのだが、襟元での調節がしやすいよう、普通に立ってくれたので、前を見るとウィル様の口元が見える形だ。
私は間違いなく顔が赤い自覚をしながら、長さの調節をし「着けれましたよ」と言って少し離れようとすると、知らない間に後ろに回されていたウィル様の手に阻まれた。
思わずウィル様を見上げると、悪戯な笑みを浮かべて「似合ってる?」と聞いてきた。
もう、その笑みの破壊力ときたらヤバ過ぎて、私は数年後成長したウィル様に耐えられるのか心配になるレベルだった、生きてる推しの笑顔はマジ凶器である。
そんな狂喜乱舞した心ながらも「に、似合ってます!」と答えるとウィル様は嬉しそうな顔をして、私にキスをした。
「ありがとう、マリー」
そのお礼の言葉で私は我に返り、実感した嬉しさやら恥ずかしさやらに耐え切れず、手で顔を覆ってしまった為、ウィル様に「マリーはもうちょっと俺に耐性をつけるべきだね」なんて笑われてしまった。
しばらくして「じゃあそろそろ戻ろうか」とウィル様に手を取られた時に、今日も着けていた誕生日プレゼントに貰ったブレスレットが目に入ったので「そういえば、ウィル様に頂いたこのブレスレットって、何か魔法がかけてあるのですか?」と聞いてみた。
少し驚いた顔をしたウィル様だったが「よく気付いたね、それとも誰かに聞いたの?」と笑顔で答えてくれた。
「いえ、えっと、その、ちょっと、色々ありまして⋯」
「色々ね、俺には言えない事なの?」
「そういうわけではないのですが⋯その、長くなるので今度会った時にお話しします」
「分かった、じゃあ今日は聞かない、それとそのブレスレットの魔法についてだけど、今のところはマリーがどこに居るか分かる魔法がかけてあるよ」
「やっぱりそうなんですね」
「着けるの嫌になった?」
「え?ウィル様から貰ったプレゼントですもの、これからも着けますよ、それにこれを着けていれば、私に何かあった時ウィル様が助けてくれるのでしょう?」
「もちろん俺が絶対助けるよ、そもそもマリーを危険な目に合わせるつもりもないんだけどね」
「なら何の問題もありませんね」
そう言って歩き出そうとしたらウィル様に手を引かれ、気付いたら抱きしめられていた。
これは何のご褒美だろうか等と考えつつ、私もそっと抱きしめ返すとウィル様は上体を少し離し「俺が好きになったのがマリーで良かったよ」と言った後「ねぇ、もう1回キスしていい?」と首を傾げて聞いてきた。
そのあざとさ、反則です。
変な声が出そうになるのを何とか耐え、私ウィル様に萌え殺されるかも知れないと思いつつ、頑張って心の準備をして「どうぞ」と目を閉じ、本日2回目のキスをした。




