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10話 転生者


以前お茶会で「今度マリアンヌ様宛にお手紙を送りますわね」と言われていた通り、アリス様から手紙が届いた、3か月以上経ってから届いたのは、おそらくカイン殿下と婚約されたから忙しかったのだろう。

アリス様は現在10歳、再来年にはゲームの舞台になっているサンステラ魔法学園に入学される歳だから、他家のお茶会に呼ばれたり、王子妃教育を受けたり大変そう、などと思いながら手紙を開封して中身を読む。

簡単に言うと、2人きりで話したい事があるから都合のいい日を教えて欲しい、というものだった。

私は先月の誕生日で6歳になったのだが、まだ1人での外出許可は貰えないので、アリス様が我が家に来られるならいつでも構いません、といった内容を返信しておいた。

すると翌日には了承の返事があり、会う約束をして、今現在私の部屋のソファに隣同士で座りお茶している。


アリス様の話したい事って何だろうと思っていると「そのブレスレット素敵ですわね」と、話しかけられた。

アリス様のいうブレスレットとは、私が右手首に着けている美しい彫金が施され、中央に小さなエメラルドがはまっている、細身で金色のブレスレットの事だ。

このブレスレットは先月の誕生日にウィル様からプレゼントされた物で、「お揃いにしたから頻繁に着けてくれると嬉しいな」と同じデザインの石がサファイアに変わってるものを笑顔で見せてくれた、もう今思い出しても、推しの尊みが凄過ぎてどうしようかと思う誕生日だった。


そしてアリス様から「もしかして、ウィリアム様からのプレゼントだったりします?」と聞かれたので「そうですよ」と返すと「そう、やっぱりそうなのね…」と複雑な顔をされてしまった。

何が気になっているのか分からない私は「あのアリス様、それがどうかされました?」と聞くと、アリス様は意を決したような顔をして「ねぇマリアンヌ様、あなた『黄昏のメモリア』という言葉に聞き覚えは?」と聞かれてしまった。


「え、何故それを…」


聞き覚えがあるどころかバッチリ前世でプレイした、この世界そっくりのゲームのタイトルですよ、もちろん知ってますけど、何でアリス様が知っているのかと。


「まさか、アリス様も前世の記憶をお持ちだったり…」

「しますわ」

「ええええええぇぇぇ!?」


驚きのあまり淑女らしさはどこへやら、思いっきり前世が前面に出た驚き方をしてしまった。

転生者というのには驚いたけれど、私が居るんだから他に居ても不思議じゃない、という事でお互い情報交換をした。

アリス様は5年前に記憶を思い出し、私と初めて会ったお茶会の日は、私がシナリオ通りアルベール殿下と婚約する為、キャサリン様の邪魔をしに来たのではと警戒されていたらしい、なんてこった。

しかもアリス様はマリアンヌがヒロインの黄昏の裏側編をプレイされていた。


「えっ!うそ!!私黄昏の裏側編プレイしてないんです、そこの所詳しくお願いします!」

「えぇ!?知ってたからこんなに早くウィリアム様攻略出来たんじゃないの?」

「え?」

「わぁ、本当に知らずに追放回避したんだ、あ、そうだ転生者同士だし私の事はアリスって呼んで」

「あ、なら私もマリーで、って私追放回避出来てるの?」

「出来てると思うわよ、追放は」

「追放は…え?まだ何かあるの?」

「ごめんなさい、私無課金だったからヒロインルートでの追放を、回避するとこまでしかプレイ出来なかったの、難しすぎて」

「あ、ならせめてそこまでのシナリオを…」

「長くなるから手紙にするわね、もちろん日本語で」

「ありがとう」


そうして私達は今後の事を話し合い、ヒロインがどのルートを進むのか確認し、間違ってもキャサリン様やアリスや私に被害がいかないようお互い協力する事を約束した。


「そういえばマリーが転生者だって知っている人はいるの?」

「今はいないよ、アリスは?」

「前々から「何か隠してるでしょ」って疑われてて、お茶会でやらかしちゃったからカイン殿下にはバレてるわ」

「あー、なるほど」

「マリーもそのブレスレット貰ったならウィリアム様には言った方が良いかもしれないわよ」

「え、なんで?」

「それたぶん、ゲームと同じならウィリアム様の自作で、現在位置を特定出来るような魔法がかかってると思う、ゲームのアイテム欄で見るとそんな説明書きが出てたよ」


んん?ゲームのウィル様意外と束縛系だったの?それとも私のシナリオに拉致監禁フラグでもあるの?どちらにしろ今のウィル様がそんなもの作れるのか分からないから、今度それとなく聞いてみよう。


「まぁ話すか話さないかはマリーが決めたらいいと思うわ」

「うん、分かった」

「それでは私そろそろお暇させて頂きますわね、とても有意義な時間が過ごせて良かったわ」

「こちらこそ、またこうしてお会いしましょう」

「えぇ、もちろん、マリーも何かあれば連絡してね」


こうして私達は秘密を共有する友人として、笑いあってその日は終わった。




その頃王城ではアーノルド国王とロナルド宰相、そして王家の影としてバーナードが密談していた。


「異世界の聖女がティルステア聖国に現れた、か」そう呟いたのは国王のアーノルドだ。

すると宰相のロナルドが「それで、真偽のほどはどうなんだ?」と聞いた。

「それがあの国の上層部って全員聖人聖女だろ、部下じゃそんな噂があるって事くらいしか分からんかったみたいでな、3日ほどくれたら俺がパッ行ってサッと情報取ってくるけどどうする?」そう言ったバーナードはどこか楽しそうである。

「お前は久しぶりに現場に出たいだけだろう、どうしますか?陛下」

「そうだな、本来なら異世界の聖女なんて無視するところだが、ここ最近転生者報告も聞くしなぁ、後手に回るのも良くない、今回は真偽をはっきりさせとくか、バーナード行ってきてくれ」

「はっ、陛下、お任せください」そう言ってバーナードはその場から消えた。


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