再開
復習の成果もあって、俺は誰よりも早くこの二次収容棟を卒業して、ユキの居る通称“奴隷棟”に入る事が出来た。
“やっとユキに会える”
そう思っていた俺の考えは、甘かった。
ここでも牢は独房。
ユキは一番向こうの独房で、新参者の俺は一番こっちの独房。
ここに来て、今迄の経験から、独房生活は極端に他の者たちとの接触を制限されている。
向かい合う牢もなく、実質コミュニケーションが取れるのは、両隣位なもの。
あとは訓練の機会に、ホンノ少しだけ看守の目を盗むようにして、話しが出来る程度。
しかもその場合の班分けも、牢の近い者同士。
“こりゃあ、会うのも容易じゃないな……”
入棟早々そう思った俺に、思いがけないチャンスがやって来た。
それは、新入居者の紹介を兼ねた簡単なパーティー。
直ぐにユキは俺のことに気が付いて、近くに来てくれた。
「おい新米! 俺たちのマドンナに緊張して、おしっこ漏らすなよ!」
誰かがそう言うと、ドッと笑い声が上がった。
「いったいどうしたの、アキラがヤツらに捕まるなんて……」
「いや、捕まったんじゃない。捕まったふりをして助けに来た!」
「どうやって?」
「それは……」
まだ何も考えが浮かばない自分が情けない。
しかしそれよりも、俺が声を掛ける前に、ユキの方から俺に声を掛けて来た事が意外だった。
意外だったのは、それだけではない。
あの時、俺が一次収容棟から二次収容棟へ移るときに遠くからでもハッキリ見えた、監守や仲間たちと仲良くしていたユキ。
ここに来て、誰に聞いてもユキの評判は抜群に良かった。
それは監守たちの間でも。
そのユキの口から“ヤツ”と言う単語が出た事。
もちろん“ヤツ”が指すのは監守たちの事。
「ユキ。お前、いったい何を考えている!」