希望への扉
猿ぐつわのような物を口に着けられたあと、看守に連れ出されたのは、拘置所の外。
太陽の日差しが、やけに眩しい。
立ち止まってボーっとしていると、「こっちだ、来い!」と監守に怒鳴られた。
緩い坂道を降りる。
その先には、もう二棟の別の建物があった。
その建物に隣接するフェンスに囲まれた広い運動場。
もう死ぬと言うのに、そこで運動する囚人たちを羨ましく思い、眺めていた。
“ちくしょう、みんな楽しそうにしやがって!”
監視されながら運動をする仲間たちを何度か見たことがあったが、そのたびに馬鹿な奴らだと思っていた。
しかし、その中の一点を見たときに俺の考えは全て吹っ飛んだ。
“ユキ!!”
そう。
どんなに遠くても、見間違うはずがない。
どんなに沢山の中に居ても、俺が見つけられないわけがない。
あのユキの可憐な姿を。
大勢の囚人の中に混じっても、薄れることのない煌びやかな輝きを放つ、その姿はユキだ!
声を出してその名前を呼びたかったが、猿ぐつわが邪魔をして声を出せなかった。
その代りに、俺はユキに向かって走ろうとした。
「おい、こら! 暴れるな!」
看守に強い力で引かれた。
それでも暴れているともう一人の看守がやって来て二人の力で引かれ、俺の体はズルズルとユキの居る方とは違う方向に引きずられ、二棟あるうちのユキから離れた棟の檻に入れられた。
「まったく油断も隙も無い奴だ」
看守の一人が鍵を掛けながら言った。
“ガチャッ”
冷たい金属音が、薄暗い部屋の中に響く。
その音は、俺に絶望を与えるために用意された音。
しかし、今の俺にはもう絶望などない。
あるのは希望だけだ。