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ようやく行動

 七日目の深夜、俺は残った気力と体力を振り絞って、夜中にコッソリとゴミ箱の残飯を漁った。

 これじゃあまるで野良猫じゃないか。

 でも今は仕方がない。逃げた俺を奴らが捜しに来ないとも限らないから、今は人の目につかないようにしておかないと、誰かが密告するとも限らない。


 カサカサ。


 枯葉を踏む音に驚いた。

 まさか、こんな時間まで俺が出てくるのを待ち伏せしていたのか!

 だが振り向くと、猫の目が残飯を漁る俺を恨めしそうに見ていた。


「フンッ。野良猫か……」


 驚かされた腹いせに威嚇すると、猫はサッと闇に消えた。

 シルバー人材派遣センターだかなんだか知らないけど、このあたりのゴミ箱は毎朝綺麗に掃除されるから残飯と言っても『腐った残飯』ではなく、言うなれば『新鮮な残飯』だ。

 中には観光に来た家族連れが持って来たお弁当を食べ残して捨てて行ったり、うっかり落としてしまった売店の団子なんかもある。

 甘いものは有難い。脳がよく働くから。

 ひととおりゴミ箱を漁ると、栄養が脳や体に染み込むのが分かる。

 頭の回転も、冴えてきた。


 でもまだ、ユキを助ける方法は、思い浮かばない。

 思い浮かばないなりにも、やらないといけない事だけは分かってきた。

 それは、ユキが今どうしているのかということ。

 既に殺されていたのでは、救出作戦も何もない。

 先ずはユキの安否確認をしよう。


 そして、ユキがまだ生きているか、もう死んだかは意外に簡単に調べることが出来る。

 ユキが死んだ場合、おそらくはこの坂道の途中にある集団墓地に埋葬されるはずだ。

 俺は柵を潜り抜け『供養塔』と呼ばれる恐ろしく高い塔のある集団墓地に忍び込みユキの痕跡を探した。夜中にも拘わらずまだ蠟燭の灯がともり物悲しい。幸いなことにユキの痕跡はなかったので未だ大丈夫そうだ。

 しかし、おびただしい数の霊魂がここに眠っているのだと思うと奴らの犯した罪と過ちを思い知る。

 供養塔まで造るくらいなら最初から俺たちを捕らえなければいいのだ。

 そうやってユキの安否確認みたいなことを一週間も続けていたが、そのことは俺自身が安心したいだけなのだと気が付いた。

 俺は今でも逃げていると。


 供養塔に寄りかかるように寝そべってユキを救出する作戦を考える。

 なぜかこうしていると心が穏やかになる。

 生きている世界で自分が生きること考えるとイライラしてくるが、こうして死んだ世界に近づいた場所にいると妙に落ち着いて物事が考えられる。答えはまだ見つからないが、ここで隠れていても何もならない。

 次の日から俺はユキが居た頃と同じように外に出た。

 とりあえず情報収集のため、なるべく昼間から目立つ場所に行き、大勢の人たちと接する。


「久しぶり!」と声を掛けてくれる人の中には、いなくなったユキのことを心配してくれる人もいて、そのなかで一人の女が俺にヒントをくれた。


『お寺でお参りすれば直ぐ会えるよ』と。


「お寺……?」


 俺は目の前にある山門を潜って女と一緒に境内に入った。

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