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追憶の旅(2)

しかし次の瞬間、そんな幸せな思い出の一ページは気紛れな旅の案内人の手によって造作も無くめくられてしまう。

そこで私はふと気付く。

そうか、私は旅をしているんじゃなくて、旅をさせられているんだ……と。


そして次に私の目に映し出されたのは記憶に新しい、つい数時間前の光景だった。

これでこの長かった不思議な旅もきっと終わり。でも、これが終わったらどうなっちゃうんだろ……私の意思に関係無く進行していくこの旅に、小さな不安が顔を覗かせたのだった。


そんな私の視界に広がる、段々と落ち着き始めた夏の陽射しがまるで暖炉に灯る火のように温かなオレンジ色で染まる私の部屋。

そこで私は、エアコンでいつもより強めに冷やした室内で、姿見の前に立ってお母さんに浴衣を着付けてもらっていた。


「やっぱり莢果は白が似合うわね」


「ほんと?少しは可愛く見えるかな?」


「そりゃ見えるわよ。だって私の子だもん」


鏡に映るお母さんはそう言って何故か照れ臭そうに微笑んだ。


「何それ? ていうか私やっぱりこの白いのにして良かった。あのピンクのやつだとちょっと子供っぽかったよね」


「やっぱり」


お母さんは、夕陽を浴びてきらきらと輝く帯を片手に鏡越しに私へと視線を送る。


「何が?」


「莢果、値段の事気にしてたでしょ?」


お母さんはそう言いつつ私のお腹に巻いた帯をギュっと強く締めた。


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