第4話・コーヒー
貪欲にピザとその他諸々を食べ終えた私は罪悪感にかられていた。目の前にあるのは証拠のゴミ、ひとしきり眺めた後片付けに入った。
この家は全く生活感がなくモデルルームみたいなのだが流石にキッチン回りはそれなりに使っているようだった、手早く方付けを済ませると自室に戻り進学する学校のパンフレットを気まぐれに見始めた。学校は運良くここからでも通える距離なので転校はせずに、と当麻さんと話し合って決めたのだ。─暇だなぁ。思い立ったが吉日私は小さいバックパックにスマホや財布といった最低限の貴重品を詰め込むと家から出た。
「暇だしちょっと探検してこよう」
心配はいらない、メモは残してあるし当麻さんが帰宅するまでには帰ってこれるだろう。
しばらく家の回りを歩いていると綺麗な噴水のある公園が見えてきた。元気良く走り回る子供たちにそれを見ている保護者、私の家は共働きでそんな家族団らんなんてなかったも同然だから少し羨ましく感じてしまった。噴水近くのベンチに腰かけ空を見てみると噴水の水がキラキラと反射して薄い虹が出来ていた、思わずうっとり眺めていると頬に冷たい感触を感じた。
「ひえっ」
「あっはは面白い声を出すね」
冷えた缶をもってにこりと微笑むのは先ほど私が注文したピザを届けに来た配達員の白城さんだった。
「白城さん、こんにちは─へんな声は余計です」
─あはは。なんて笑いながら缶コーヒーをくれるもんだからイラッと来たのもつい忘れ受け取ってしまった、イケメンはなにしてもイケメンらしい人生特だらけだろう。
「横に座っても?」
「どうぞ、ちょっと寄りますね」
そんな会話をしてから数分何故か無言になってじった。
「ここ綺麗でしょ」
唐突なお喋りの再開に反応できた私を誰か誉めて欲しい、なんて場違いな事を思いつつも案外回転が速い頭はきっちり会話をしてくれた。
「そうですね、白城さんお仕事は?」
「ん?さっき終わったとこ、君の所が最後だったんだ」
「そうですか」
「仕事終わった後ここに来るのが日課でね、黒葉さんは?」
探検と言うのも恥ずかしく私は散歩ですと誤魔化した。─ならいい散歩コースを教えるよ。なんて言われてしまって焦ったが私は散歩が好きなのでそこはありがたく頂戴した。その後もぼちぼち話をしていると思ったより時間が立ってしまったのか黒くに沈んできていた。白城さんは一言告げると慌てて公園から出ていってしまった。─何がしたかったんだろう。そんな言葉を飲み込みながら辺りを見渡した。
「私も帰ろうかなぁ」
白城さんだけでなく周りの人も帰り始めていたので私も空になった缶コーヒーを持ちながら家路についた。
─あぁコーヒーは苦いのに心は甘ったるいなぁ。