第3話・好青年
熱いシャワーで疲れを流すと私はキッチンに来ていた、流石にあのお金を使うのは躊躇してしまったからだ。こう見えても自炊が出来る事に今はただ感謝しかない。
「─なんですって」
ガチャリと大きな冷蔵庫を開けた私の視界に飛び込んできたのは虚しい空間だった。空っぽだったのだ、大きな冷蔵庫なのに卵の一つ入っていない。私は無言で扉を閉めると机に置いてある封筒からお札を数枚抜き取ると、スマホを手に取りピザを頼んだ。─あのピザの配達をお願いしたいんですけど。朝御飯がピザなのは少し胃に重いかも今の私はガツンとくる物を食べたいのだ、ニキビとかカロリーは明日の私が何とかしてくれるだろう。
ピンポーンなんて間抜けな音がなり無駄に長い廊下を足早に進むとドアを開ける前からいい匂いがしてきて疲れきっていた心が踊るような気持ちだった。
「今開けますね」
ガチャリとドアを開けると好青年がピザの箱を持ってたっていた。
「え~チーズ特盛ピザとオレンジジュース、それからピリ辛ポテトでお間違いないですか?」
「大丈夫です」
確認すると好青年からピザとその他を受け取り廊下に置くとお札を手渡した。
「あっどうもです」
好青年はお札を数えると慣れた手つきでポーチから小銭を取り出した。
「お客さん初めてですよね?」
─イケメンだなぁ。そんな言葉を口には出さず一所懸命飲み込んで返事を返した、そうすると好青年は何を思ったのか自己紹介をしてきた。
「僕白城桜蘭と言います」
「へっ、あ私は黒葉夜矢です」
つい釣られて自己紹介をしてしまった。─なるほど名前まで好青年みたいだ。その後も軽く言葉を交わした後白城さんは何故か来たときよりも笑顔で帰っていった。
待ちわびたピザにうきうきしながら手をつけるとチーズが伸びる伸びる、トロリとしたピザに食らいつくともう顔のにやけが止まらない。疲れきった体には高カロリーの食べ物が染み渡る。
─あぁ背徳的なお味で。