第1話・自己紹介
誤字報告ありがとうございます。
これからも誤字脱字あるかと思いますが暖かい目でみてもらえれば幸いです。
「本当に良かったのかい?」
「……はい、引き取ってくださり感謝します」
堅苦しく挨拶をする私に苦笑いをしながら、車のハンドルを握ったのは私を引き取った男性だった。
しばらく車内は無言で、外の雨の音が嫌味なくらい響いていた。
ついたよ─なんて声に沈みかけていた意識を戻せば、一般的よりも明らかに広い一軒家が視界に入る。
ガチャリと車のドアを開けられ、恐る恐る車内から出ようとすると流れるように手を差し出された。ここで拒否るのも後味が悪いと思い、私は少し遠慮がちにその手へ触れた。
その後も家のドアを開けられて、荷物を持たれてと、さりげなくやっている行動が紳士すぎて呆気にとられてしまう。
一通りの荷物を置いた後、私達はリビングにある椅子に腰かけていた。
「改めて自己紹介をしようかな、僕は青崎当麻君のお父さんの大学の後輩でね、昔からお世話になっていたんだ」
にこりと微笑まれつい顔を凝視してしまった。普通の精神状態なら、恋愛に疎い私でも赤面してしまっていただろう。青崎当麻さん、歳は今年で48になるという、有名なIT企業の重役で何故恋人がいないのか分からないくらいの高スペックだ。
「夜矢さん?」
「あっ、はい、そのよろしくおねがいします」
「うんよろしくね、僕に出来ることがあればなんだってするから」
正直お父さんの知り合いだからって私を引き取ったのは納得がいかないがあの人達に引き取られるよりは多分ましだろう、お金持ちの気まぐれかなにか、だと思いたい。
今日はもう遅いからと、これまた紳士的に部屋に丁寧に案内された私はこれからの生活に早くも自信を無くしかけていた。
──あぁふとんがふっかふかだ。