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第0話・始まりの日
梅雨に入り雨がじとじと肌を濡らす季節私はいっぺんに家族を失った。
事故だった、雨が降っていて道路が濡れてスリップした車に巻き込まれたのだ、私の父親が運転していた車が事故の要因ではなかったのは幸いだったのかもしれない。
私はまだ未成年で社会的な地位も低い、正直一人でやって行くのは無理がある。─なら親戚に引き取ってもらえば?なんて最初は思っていたが今はそんな考えが全く浮かばない。耳を済ませば私が相続する両親の遺産の事、まだ高校が決まったばかりの中学生なんて引き取れない施設にいれよう、なんて話ばかりだ。
元々親戚との関係が良好ではなかったので、幻滅はしなかったが軽い嫌悪感を懐いた。
部屋の端っこで突っ立っている私を気に止める事もなく、繋がりの薄い親戚達は醜く言い争いをしている。そんな光景を冷めた目で見ていた私の肩に手が置かれた。
「こんにちは」
笑顔で挨拶をしてきたのは私よりもぐんと年上のおじさんだった。
このおじさんとの出会いがこれからの人生を変えることになるとは、今の私は全く思っていなかった。
─あぁ好い人オーラが駄々漏れだ。