は
約束だよ。
そう笑い合ったあの日は、どれだけ離れて行ってしまったことだろう。
手を取り合って微笑み合っていた、手が届かなくなってしまうなんて、二人が会えなくなってしまうなんて、とても思ってもいなかった。
考えるようなことが、あるようなはずもなかった。
だってそんなことは、当時の僕たちにはありえないことだったのだから。
無邪気な幼い心は、永遠というものを素直に信じ、疑うようなことがありはしなかった。
けれど今の僕はそうではない。
年を取って、知ってしまっているのだ。
果たされない約束が存在してしまっているのだということを、思い知らされてしまっているのだ。
絶対なんてものは存在しない。存在してはくれないのだ。
永遠という名の刹那が、その儚さというものが、わかってしまっている。
わかりたくてわかったのではなくて、わからされてしまったのだ。
思い知らされるという形で。
汚れた瞳は全てを知っているのだ。知らされてしまっているのだ。
能動態ではなくて受動態として、そうあっているのだ。
知っているだけならまだ良いのかもしれないが、変に嫌なところだけ素直なもので、瞳にそれを映してしまう。
もし今の僕の瞳に君を映してしまったら、君に穢れを映してしまうことになるのだろうか。
君に穢れをうつしてしまうことになるのだろうか。
そんなことがあって良いはずがない。
僕の知っている君の瞳は純真無垢だ。
汚れを映した僕の瞳に、君の姿を映してしまうようなことがあったとして、それでぼくはきみになにをあたえることになるのだろう。
それで僕は君に何を与えることになるのだろう。
無邪気に煌めいていた君をただ汚してしまうだけなのではないだろうか。
絶望して傷付いて、僕はまた大切な人を傷付けることにもなるのだ。
知らないという尊さを、知ってしまった僕は知っている。
知らないという無邪気な心のために、その無邪気な瞳を濡らさないために、僕はそっと瞳を伏せる。
幻想は幻想のまま、ほんの少しだって現実に引き寄せようと考えてもいけないのだ。
これは、僕が大人になってしまったということなのだろうか……?