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Babel Online   作者: 虹色橋
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06

 無事アイテムもゲット出来ましたけど、此処からどうやって降りれば良いのでしょうか? そもそも、内部に取り込まれた時点で死ぬしか脱出方法がない……?

 えぇ……。欠陥だと思うのですが……。まあ、こっちの方が手っ取り早いですし、飛び降りてしまいましょう。


 ぴょん、と。木から飛び降りて、視界がブラックアウトするまで待機。リスポーンが完了したら痛覚レベルを元に戻して……と。

 これでもうここには用はないですかね……?

 

 あ、あの鍵付きの扉を完全に忘れてました……。

 うーん……。でもあれなんですよねえ。鍵は見当たりませんし。鍵を落としそうなあいつは倒しきれませんし……。


 一応、もう一つ肉が余っているので挑戦しておきましょうかね? このまま肉を持っていても腐るだけですし。

 肉を捨てて空腹樹の内部へと再度侵入。そろそろ他のマップへと行きたいのですが……。

順調に登りながら、下ってくるイーターの元まで辿り着き、そのまま流れるように戦闘開始。


 あれ……?

 前回までなら、この時点で枝が迫って来ていたはずですが……来ませんね?

 まあ、来ないのであれば好都合です。このまま倒してしまいましょう。

 

 さてさて、ドロップは……。


【イベント】古錆びた小さな鍵 レア:EX

 今にも折れてしまいそうなぼろぼろの鍵。


 ビンゴですね。

 ただどちらかにしか使え無さそうな雰囲気がありますが……。

 

 そんなことはありませんでした。二つ目の扉を開けた時点で折れてしまいましたが、両方とも開いたのであれば問題はありません。

 まずは向かって左側の扉から……。何かいいアイテムでもあればいいですが。

 これは……宝箱? ペタペタと表面を触ってから、宝箱を開ける。


【素材】空腹樹の枝 レア:R 品質:D

 見た目よりも重量感のある枝。


 なんで木の内部の宝箱から枝が出てくるんですか。頂上で散々折り散らかした枝ってもしかして素材として拾えた可能性が?

 この宝箱以外は何もなさそうなので、反対の扉へ向かいましょう。こっちには何がありますかね? 空腹樹の葉とかだったら笑いますけど。


 扉の先には先程と同じように宝箱。中身は……。


【素材】空腹樹の葉 レア:R 品質:E

 煎じて飲むことで、病が治るとされている


 ……はい。

 大体想像がついてましたけど。わざわざ鍵をかけた扉に保管するには大したことがないですね。これで、空腹樹は踏破完了です。

 さて、外に出る方法が分からないので、投身自殺です。


 先程痛覚レベルを戻した事を忘れていたので、地面に叩きつけられた衝撃を受けてしまいました……。普通に痛いです。

 これからどうしましょうか。マップの出入口は確認できただけでも東西南北にそれぞれ一つずつ。

 んー。別に行きたい場所があるわけでもないですし……。

 

 良いことを思いつきました。先程拾った空腹樹の枝をインベントリから取り出して……。


 えいっ!

 

 精一杯の力を込めて枝を真上へと放り投げる。くるくると回転しながら、やがて地面へぽとりと落ちた。

 先端はどっちを向いていますかね? えーっと、東ですか。

 それでは東の方へと向かって進みましょう。相手を見て無理そうであれば、引き返せばいいだけですし。

 

 空腹の森を東へと進んでいき、ミニマップの表示が切り替わる。

 えっと、幻惑の沼地? 森の次は沼ですか。

 なんにせよ、マップを埋めていきましょう。パッと見た感じ、周りに敵はいなさそうですし。


 沼地の中に足を踏み入れると、移動速度が落ちました。どうやら、沼地の中にいる間は『鈍足』が付与されるみたいです。

 歩きにくいですし、ここのマッピングは苦労しそうですね……。

 とりあえず、北方面へと向かって進んで行きましょう。


 ずんずんと、上に半分ほど進んで行った所で、突如壁が現れました。

 ミニマップを最大まで拡大して確認してみても、ここに壁が存在している反応はありません。まだ先に道があるはずですが……。

 封鎖されている以上、先に進めないので進路を東へと変更。

 壁沿いに歩いて行ってみましょう。


 何事もなく、マップの最東端へ到達出来ました。

北方面へと続いているはずの道は、一面壁で塞がれていて通ることが出来ませんが。

通れないのであれば仕方ありません。そのまま南下するしかないですね。


 嘘でしょう?

 南へと下った私を待ち受けていたのは、先程と同じ壁。北側にあった壁と同じようにミニマップに反応は存在しない……と。

 マップギミックでしょうか……? 壁にスイッチとかあったりしませんかね?


「……へ?」


 壁の付近を調べようと手を伸ばした手は、そこに存在しているはずの壁をすり抜け空を切った。

 壁に当たり判定がない……? これ、バグじゃなくて仕様ですよね?

 デバッグの不備じゃ……無さそうですね。周辺の壁を一応調べてみましたが、同様に当たり判定はなさそうです。北方面の壁も調べておけばよかったと後悔。


 とりあえず、南側のマップを埋めてしまいたいのですね。北へと戻るのはその後でも十分でしょう。ただ、『鈍足』のせいでマップ埋めに時間が掛かるのがとても面倒ですが……。

 そういえば、このマップでまだ敵を見ていませんね? 結構、マップを歩いたつもりなのですが……。イーターは割と頻繁にいたのですが。

 移動速度が低下している状態で敵に囲まれるのは勘弁して頂きたいので、好都合ではあるんですがね。


 南側のマッピングが半分程済んだ所で。


「あいたっ」


 突如、背後から殴られたような衝撃。


 ……あれ?

 振り返ってみても、攻撃を仕掛けてきたはずの敵の姿が見えません。


 ――っ。

 勘違い……ではないようですね。今度は正面から何かがぶつかって来たような衝撃。遠距離攻撃でしょうか? ただ、遠距離攻撃にしても何か飛んできたような痕跡はないですし。

 面っ倒ですが、逃げることも出来ない……。背を向けて逃げようものなら背後から一方的に殴られるだけですし……。ああ、この移動速度低下さえなければ……!


 ああ、もう、痛いですね!

 見えない敵の痕跡を探しながら、ジリジリと後ろに下がる。その間も、見えない敵からの攻撃は続いてきている。一撃が軽いのが、不幸中の幸いでしょうか。

 とはいえ、このまま一方的に攻撃され続けるのも状況的には拙いです。どうにかして状況を打開しなければ……。


 と、そう思っていた矢先。正面からだけなく、同時に背後からも何かがぶつかって来たような衝撃が。

 

 ……。

 もしかして、挟まれました?

 

 敵が見えない状態で複数に囲まれるのは、普通に死刑宣告じゃないですか?

 うぅ……! マッピングがこんな中途半端な状態で死にたくありません……!

 っ! 体力ゲージが半分を切りました。と、とりあえず最後まで抵抗を……! 攻撃が来ていない方向へ逃げて……。

 

 あっ……。

 逃げようとして方向転換をした私の視界に入って来たのは。

 全速力で、こちらへと向かって走ってくる人影。

 もしかして、助けが……?


 その人影が近づいてくるにつれて、徐々に姿が鮮明になって来ました。遠くから見た限りでは、普通の人型だったのですけれど、その頭部にはカエルの頭がくっ付いています。

 

 魔物……? いや、良く見れば頭の上にプレイヤーであることを証明するマーカーありました。

 こちらへと近づいてきた、彼(彼女?)は私の前を通り抜け、腰に携えていた剣を抜いて何もない空間を切り裂いていく。すると、ピギィと小さな悲鳴を上げ、漬物石程度の大きさのカエルの死体が二つ、目の前に現れました。

 

 助かっ……た?


 カエル頭の人が辺りをきょろきょろと見回してから、こちらへと近づいてきました。


「大丈夫ですか? 遠くから見ていたのですが、苦戦していたように思ったので、勝手に助太刀してしまいました。お邪魔をしてしまったのであれば、申し訳ありません」

「あ、ええっと、いえ、大丈夫です、助かりました。敵の姿が見えなくて……」

「大丈夫なら良かったです。ここのマップの敵は基本的に見えないので、気を付けた方がいいですよ。よく見ていれば、沼地を這いずっている痕跡があるので、それさえ発見できれば、あとはその付近を攻撃すれば殺せます」

「なるほど、そういうことですか。自分が居たマップと大分魔物の感じが違っていたもので……」

「隣のマップから来たんですか?」

「ええ、このマップの西にある空腹の森から……。えーっと、貴方はここにリスポーンを?」

「ああ、すみません。名乗ってなかったですね。私は、グレンと申します。種族は蛙騎士フロッグナイト。種族リスポーンなので、此処に飛ばされて……。死に戻ったら丁度貴方の姿が見えたので」

「私の事はどうかレイヴンと呼んで頂けると。一応、種族はイーターです。自分の湧いたマップの探索が済んだので、こっちに移動してきたのですが……。マッピング途中で、当たり判定のない壁に邪魔されて……」

「ああ、あの壁はただそこにあるだけなので、気にしなくてもいいと思います。幻惑の森って名前の通りで、ここは見えるはずのものが見えずに、見えないはずのものが当然のようにそこにあるマップになっているので。基本的に、見えているものに当たり判定はありませんよ」

 

 グレンさんは、ゲコゲコと笑っていた。

 まさか、こんな所でプレイヤーと出会うなんて思ってもいませんでした。確かにお姉様も他のプレイヤーと出会っていましたけれど。本当に、人外のプレイヤーっているんですね。

 いや、そもそも私も人外なんですけれど。


「さて、私はそろそろ自分が死んだ場所まで戻るとします。レイヴンさんも、ここを探索するのであれば、見えない敵に気を付けてくださいね。たまーにですが、毒や麻痺にしてくる敵もいるので、それでは!」

「はい、グレンさんもお気をつけてくださいね。本当にありがとうございました」

 

 せっかくなので、という事でフレンド登録をしてからグレンさんはマップ南の方へと向かっていきました。


 それから南半分のマッピングを終えて北へ、と思いましたが。そろそろいい時間ですし。今日はこの辺りで一区切りにしておきましょう。


 一応、魔物の痕跡が見当たらない安全な場所に移動してから、ログアウトを。

 

 んんぅ……。疲れました。コフィンの外に出ても、ゲーム内の痛みが身体に残ってるような気がしないでもないです。

 

 晩御飯を済ませて自分の部屋へ。

 コフィンに潜り込みたい衝動を抑えて、今日は課題をやっておきましょう。そこまで数が多くないとはいえ、ある程度ゲームに時間を割きたいですし。面倒くさいものは先に済ませておくに限ります。

 現在時刻は21時丁度。三時間のタイマーを仕掛けてようとして、一件のメールが来ている事に気が付きました。

 

 送り主は…………生徒会長からですか……。

 見なかったことにしてもいいですかね? 一応内容確認だけでもしておかないとダメですよね……?

 

 だらだらと関係のない長文が書かれていましたが、つまるところ緊急の用事が出来たので、急遽明日生徒会執行部の皆には学校に集まってもらうことになった、と。

 ものすごく見なかったことにしたいですが……生徒会副会長としてはそうは行きませんよね……。


 明日も朝からBOに入り浸る予定だったのですが……。

 こればっかりは仕方がありませんね。

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