25 占領戦5
「イオ! 大丈夫ですか!」
「ん」
イオに切りかかろうとしていた敵の攻撃を剣で弾き、加勢へと入る。ヴィイさんは少し下がった場所から矢を放って援護をしてくれています。これで人数の差は無くなりました。
「くそっ、新手かよ!」
「関係ねェ! 体力の少ない奴から倒すぞ!」
「つれないことを言わないでくださいよ」
疲弊しているイオから倒そうとしているようですが、そうはさせません。イオの敵の間に割り込むようにして入り、攻撃を体力で受ける。
「くそっ! 邪魔だテメェ!」
他二人に指示を出していたリーダー格のような男が敵の横を抜けてこちらへと切りかかってくる。
「この一人は私が持ちますね」
「りょーかい」
近くまで寄ってきた男が剣を振り上げた瞬間を狙い≪ウィンディロート≫で上空へ打ち上げる。イオの戦闘スタイルは超近接主体。巨大な斧を豪快に振り回すので、周りに私がいると邪魔になってしまう可能性もありましたし、これが正解でしょう。
「だぁっ、めんどくせぇっ……な!」
「くっ……」
空中で追撃を繰り出した私の剣は受け止められ、そのまま力任せに振り下ろされた剣の勢いを止めることが出来ず、一足先に地面へと着地した。追撃に備えて武器を構えましたが、相手は距離を取ることを優先したようです。
相手の武器は両手剣。リーチの長さでは勝てません。ですが、両手剣はその長さゆえ、懐近くまで入られると対処がしにくいはず。
「そんな大振り、あたりません!」
距離を詰める私に対して、相手は剣を横に大きく薙ぎ払った。当てるのではなく、近づかせないために置かれた斬撃を掻い潜って、相手に切りかかる。けれど、攻撃を避けたせいで踏み込みが一歩足りなかったのか、私の剣先が身体を掠めただけで致命傷には至らない。
「……っ!」
「おいおい、後ろがガラ空きだぜ」
相手は後ろに飛び退り、再び、距離を取ろうとした――が、背後から飛びかかって来たパパラチアさんが相手の喉元を噛み千切った。持ち主を失った頭部は地面へと落ちて消滅する。
「すみません、助かりました」
「気にすんな。嬢ちゃん、悪いけど手が空いてんならこっち手伝ってくれねえか? A方面から敵が来てんだが、一人じゃ捌き切れねぇんだわ」
「了解です。でも、二人でどうにかなるんですか?」
「ちょっと厳しいかもしれんが、イオは人の話を聞かねえし、ヴィイには他の支援してもらわないといけないだろ?」
「おねえ――トクヒメさんとシスさんは?」
あの二人なら手も空いていますし、頼めば手伝ってくれると思いますが。
「会話したことねぇし、楽しんでる所を邪魔したら悪いだろ……」
そんな所でコミュ障を発生しないでくださいよ。というか、
「その言い方だと私の邪魔はしても良いと思ってるってことですよね?」
「いやいや、嬢ちゃんのことは信頼してんだよ」
「はぁ……。そういうことにしておきましょうか。トクヒメさん、ちょっといいですか?」
「どしたのー? 今ちょっと手が離せないんだけど」
背後で戦っていたお姉様に声を掛ける。
「今からパパラチアさんとA方面の防衛に回るので、速度低下の糸を私たちの近くに撒いてもらってもいいですか?」
「了解。こっち片付いたら撒いとくね」
「ありがとうございます。もし抜けられたらその時はカバーお願いします」
「はいはーい」
戦闘中のお姉様に話しかけすぎると集中力が途切れてしまうので、最低限の要請だけにしておきましょう。あんまり長話をしている場合でもありませんし。
パパラチアさんと一緒に、Bの北側――Aへと繋がる通路へと向かう。左右の通路から二人ずつ、合わせて四人の敵がこちらへと向かって来ていました。
「パパラチアさん、どうしますか? 通路で戦います?」
個人的には通路で戦いたくはないのですが、ここは救援を求めてきたパパラチアさんの指示を仰ぎましょう。
「あー……いや、すぐに来るだろうし待つか。通路で戦うと後ろから増援が来た時に不利になるし、それならこの広場で戦った方がいいだろ。一応、ヴィイの援護が届く範囲だしな」
「手が負えなくなったら、パパラチアさんを盾にして逃げさせてもらいますね」
「安心しろ。死ぬときは一緒だ」
格好良い感じで言っていますが、心中したくはないので、逃走経路の確保だけはしっかりとしておきましょう。
ミニマップに映る味方の動きを見る限りでは、ちゃんとCの防衛をしてくれているみたいですし、私たちがBを守り通せば勝ちの目が見えてきます。
大外を回ってAに向かっている人も何人か見えるので、敵がそっちに多く意識を割いてくれると負担が減るのですが、期待はしないでおきましょう。
「おぅおぅ! そこをどきやがれ!」
「早くどかねえと怪我するぜェ!」
私の前に立ちはだかったのは、木製バットと金属バットを持った二人組。頭の上にハンバーグが乗ったようなリーゼントに、白と黒の長ラン。いかにも、という風なコテコテの不良ですね。木製バットに釘が刺さってないのは少しだけ残念です。
左側の通路から現れた残りの二人は少し離れた所から様子を伺っている。武器は鞭と槍……ですかね。少し遠いので、確証は持てませんが。
不良の二人組が後続を待たずに突撃してきてくれれば二対二を二回やればいいだけだったので楽だったのですが……流石に上手くはいきませんか。
「ここは通しませんよ。ねえ、パパラチアさん」
「そういうわけだ。悪いが、諦めてくれよなッ!」
パパラチアさんが言い終わると同時に相手に飛びかかった。少し遅れて私も相手に向かって走っていく。木金コンビはパパラチアさんの突撃を読んでいたのか左右に飛びのいて攻撃を躱した。
「ちっ!」
「「見え見えなんだよ!」」
左右からパパラチアさん目掛けバットをフルスイングする木金コンビ。
「させませんよ!」
私は近かった方の木製バットに剣を打ち付けて邪魔をした。
「嬢ちゃん! しゃがめ!」
「はいっ!」
パパラチアさんの声を聴いて、地面を這うように伏せる。
その上をパパラチアさんが飛び越え、がら空きになっていた木製バットの胴体に鋭い爪を突き立てた。
「ぐっ……」
「ッ……野郎!」
背後から振り下ろされる金属バットを身を捩って躱し、態勢を立て直しながら剣を振るう。
「行かせません」
私を無視して木製バットを助けに行こうとしている金属バットの進路塞ぐように立つ。更にその向こうには鞭と槍が見えますが、金属バットの影に隠れているお陰か攻撃は飛んできません。
「逃がしませんよっ!」
無理だと判断しかのか、金属バットは飛び退って距離を作る。
私も深追いはせず、背後の木製バットをパパラチアさんと二人で囲んで殴り、止めを刺す。
機先を制したおかげで、槍と鞭の二人組が戦闘に介入してくる前に、おそらく連携が取れていたであろう二人組の片割れを落とせたのは大きいですね。
これで二対三。戦力差はほぼ無くなりました。
「パパラチアさん。近接二人は受け持つので、鞭持ちをやってもらってもいいですか?」
私が鞭持ちと対峙するより、素早いパパラチアさんに任せます。放ったままにしておいてもいいですが、戦闘中に横槍を入れられるのも面倒なので先に仕留めておいた方がいいでしょう。
「わかった。すぐに終わらせるから、少しだけ耐えといてくれ」
パパラチアさんが相手の所へと向かいやすいように、わざと相手に向かって一直線に突っ込んでいく。金属バットに切りかかる……振りをして、槍を持った敵の方へと攻撃を仕掛ける。
私が持っている双剣とリーチの変わらない金属バットよりも、槍の方が優先度は高いです。
「え、わ……ちょっ!?」
自分の方に向かって来ると思っていなかったのか、攻撃を食らった敵が面食らっている。
「このまま――っ!」
「くらいやがれェ!」
追撃を繰り出そうとした私の頭部に鈍い痛みが走る。
槍持ちを攻撃することに集中していた私は、背後から振り抜かれた金属バットを避けることが出来ず、まともに食らってしまったようです。
今の一撃でかなり体力を持っていかれてしまいました……!
パパラチアさんに自分から提案して置いてこの体たらくは流石に合わせる顔がありません。
というか、想像以上に金属バットの一撃が痛いです。
離脱する際、金属バットに一撃を加えて一度距離を取る。体力の自動回復は当てにならないので、ヴィイさんの援護を期待して少し拠点内に近寄りましょう。
相手も態勢を立て直すためか、追っては来ていませんでした。
……これ、パパラチアさんが鞭を倒すまで粘れますかね?




