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Babel Online   作者: 虹色橋
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 形成されていた列も意外にもはやく捌け、あっという間に私の手番が回ってきました。


「ご用件はなんですか~?」

「えっと、占領戦に参加したいんですけど」

「占領戦ですねー。では、このクリスタルに触れてください~」


 随分と、のんびりとした喋り方をする受付ですね。

 言われた通りにクリスタルに触れると、クリスタルが淡く輝いた。

 

「はい、条件は満たしていますね~。これで解放の手続きは終わりです~」

「え? これで終わりですか?」

「そうなりますね~。後は日付が変わるまでゆっくりお待ちください~。それでは次の方どうぞ~」


 特に何の説明もなく占領戦の解放が終わってしまいました。MMOでありがちな、話しかけるだけで完了するクエストですか。

本当は、並んでる間の隙間時間でスキルを弄ったりしたかったんですが。想定よりもずっと早く自分の番が来たせいで、時間が足りませんでした。


「お姉様の姿も見えませんし……」


 日付が変わるまでは、まだ三時間程残っています。今のうちにスキルの確認でもしておきましょうか。レベルが15に上がったので、新しいスキルが増えているはずですし。


「あ、やっぱり新しいのが増えていますね」


 中央の広場まで戻って、近くにあったベンチに腰を掛けてからスキルタブを開くと、新しい種族スキルが二つ取得可能になっていました。


≪ストックパイル≫

対象からの攻撃を食べることで無効化し、体内に溜め込むことで防御力を少し上昇させる。最大、三回まで溜め込むことが出来る。


≪スピットアップ≫

ストックパイルで溜め込んだ力を直線状に吐き出す。溜め込んだ回数が多い程、威力が上昇する。


 スピットアップは単体でこそ意味を成しませんが、前提条件のストックパイルの効果を考えると腐りはしなさそうですし。この二つも習得しておきましょう。

 あとは、キャラクリの時に付与された初期ポイントがまだ残っていましたね。画面に表示されているのを確認するまで完全に忘れてましたけど。


「さて、何を取りましょうか」


 とは言っても、初期スキルで取りたいのってあんまりないんですよね。お姉様の話によると、生産系スキルはクエストを受けることで習得出来るらしいですし。やっぱりパッシプ系を取るべきですか。

 あ、買い物もきちんと出来ることが分かったので≪値引き≫は取っておきましょう。


「あと二つ……」


 無難な所で≪攻撃増加≫≪防御増加≫でしょうか。攻撃メインにするのか、防御メインにするのか……。いや、防御に振っても倒せないと意味がないですし、ここは≪攻撃増加≫にしておくべきですね。

 残る一つは≪運増加≫にでもしておきましょう。ラック値が高いとクリティカル率の増加やドロップアイテムのレアリティアップがあるらしいですし。

 気休め程度ですけどね。いざとなれば、スキルリセットも出来るみたいですから、ダメだーって思った時はやり直せばいいんです。


「あとはウェポンスキルを取らないと」


 攻撃スキルがツインスラッシュとエアスラッシュ、それに暴飲暴食だけでは心もとないですし。料理を食べればスキルが追加されるとは言っても、時間制限もありますからね。

 あと、材料を集めるのも一苦労ですし。スケルトンとかアルラウネとかはそのまま食べることも出来ませんからね。


「遠隔よりも近接の方が私の性に合っていますし、近接主体のスキルを取っていきましょうか」


 双剣のスキルタブを開き、スキル一覧から使えそうなスキルを探していく。種族スキルはレベルで解放されていきますが、ウェポンスキルは武器の熟練度で解放されていくので、同じ武器を使い続けていれば勝手に解放されていきます。

 ウェポンスキルを習得するためのスキルポイントは、それぞれ武器毎で違うので時間さえかければ全部の武器を極めることも可能のようです。


「とりあえず、これとこれは確定ですね」


≪スピニングホールド≫

剣を握った状態でその場で回転し、周囲の敵を攻撃する。

スキルレベルに応じて威力が増加する。


≪ウィンディロート≫

相手を空中に切り上げ、回転切りで追撃を行う。

スキルレベルに応じて威力が上昇する。


 占領戦は16vs16で戦うことが確定しているので、囲まれた時のために範囲攻撃。それと単純な攻撃スキルですね。≪クロスガード≫という防御系スキルもありましたけど、≪ストックパイル≫の方が有能そうなので止めました。


「うーん、まだまだ熟練度が足りませんね」


 覚えられるスキル数もまだ少ないですが、一気に何個も新しいスキルを覚えても本番で使えないかもしれませんし、この程度が丁度いいかもしれません。


「まだ時間もありますし……」


 新しいスキルの試し打ちにでも行ってみましょう。周辺に生息しているモンスターのレベルもそこまで高くはなかったようですし。

 あ、一応お姉様には連絡を入れておきましょう。チャットタブを開いて、お姉様に「少し街の外に出てきます」と送ってから、通ってきた道を戻り北の門から外に出る。


「手頃そうなモンスターは……あ、あれでいいですね」


 見つけたのは近くで草を食べている牛のようなモンスター。

 とりあえず、殺さないように素手で殴ってみましょう。


「えいっ」

「ぶもぉぉぉ!」


 胴体の辺りを軽く殴ると、大きな鳴き声を上げて牛が臨戦態勢に入りました。あとは、相手の攻撃に合わせて≪ストックパイル≫を使えば……。


「ごふっ!?」


 勢いよく突進してきた牛の攻撃はそのまま私に直撃してしまいました。


「あ、あれ?」


 結構いい感じだと思ったんですが。タイミングが少し遅かったのかもしれません。今度は気持ち早めに試してみますか。

 気を取り直して再度チャレンジしてみたものの、またもや同じように私の胴体へと攻撃がヒットしました。

 その後も、タイミングをずらしたり、相手を変えたりして何度も試してみたけれど、やがて一つの結論に至った。


「近接攻撃には使えないじゃないですかー!」


 試行錯誤した結果≪ストックパイル≫が使える攻撃には制限があることがわかりました。

 まず近接攻撃は不可能。これは散々試してみたので、ほとんど間違いないと思います。次に遠距離攻撃ですが、一度≪ストックパイル≫を使うと次に使用出来るまで数秒ほどのキャストタイムが発生するので、連続攻撃は一段目しか防ぐことが出来ません。

 現状、判明しているのはこの二つ。近接攻撃が吸収できないのは、≪クロスガード≫を習得すればいいだけですが。


「連続して使えないとなると、溜めるのが難しくなりましたね」


 相手からの遠距離攻撃を無効化出来る、というのは確かにスキルとして強いですが警戒されてしまうと使いづらくなりますし。

 いや、乱戦になればそんなの関係ないですか。出来るだけ人の多いごちゃごちゃした戦場だといちいち確認もしてられないでしょうから、そういう立ち回りを心がけていきましょう。

 それに、AI相手なら有能そうなスキルですし。


「あ、そうだ。忘れないうちに≪クロスガード≫を習得しておきましょう」


≪クロスガード≫

二本の剣を交差させて、相手の攻撃を受け止める。


 これで近接攻撃の防御も出来るようになりました。スキル関連はこんな所ですかね。一応、使えるかどうかはわかりませんが料理のストックを作っておきましょうか。


「ん? なんでしょう、これ」


 インベントリを確認しようとして、タブを開くと新しいメッセージが届いていることに気が付きました。

 お姉様からの返信かと思いましたが、どうやら差出人は運営からみたいです。


『Babel Onlineをご愛顧いただきありがとうございます。レイヴン様が投稿されたレシピブックの使用回数が一定数を超えましたので、ロイヤリティーを受け取ることが可能になりました』


 レシピブック……? 特に目立った料理を作ったような覚えはないですけど、どうやらあのレシピを使った人がいるみたいですね。


「受け取り方法は……」


 ロイヤリティーの受け取り方法は直接受け取るか、銀行の口座に振り込まれるかの二種類。直接受け取る場合は一度に受け取れる金額に制限があるみたいですし、銀行の口座に振り込んでもらった方が良いかも知れませんね。

 確か、先程の通りに銀行があったはずなので開設しましょうか。ついでに、料理に使えそうな食材も探してみましょう。手持ちは相手を石化させる効果を持ったミニトリスの肉と、蔦を伸ばして攻撃が出来るようになるローズバトラーの花びらくらいしか素材がないですからね。


「えーっと、確かここら辺にあった気が……」


 中央の広場へ戻って、先程占領戦の解放をした建物の近くへと戻ってくる。私が並んだ時よりも、列が随分と伸びていました。


「あ、ここですね」


 占領戦クエストを解放するための建物の丁度向かいの位置に、目的の銀行はありました。列に並んでいる人たちを横目に、銀行の中へと入っていく。

 建物の中に受付以外の人は見当たりません。カウンターの向こうには、受付嬢と思われる人が一人だけポツンと立っていました。

 入口で立ち尽くしているわけにもいかないので、カウンターの方へと向かう。


「ようこそいらっしゃいました。本日のご用件はなんでしょうか?」

「口座の開設をお願いしたいんですけど」

「新規口座の開設ということでよろしいですか?」

「はい」

「かしこまりました。では、このクリスタルに触れてくださいませ」


 差し出されたクリスタルに触れる。


「それとレシピブックのロイヤリティを直接口座に振り込むようにしたいんですけど、出来ますか?」

「大丈夫ですよ。その手続きも一緒に済ませておきますね」


 無事に口座の開設を終え、ついでに持っていた所持金の八割を預けて建物の外へと出る。丁度、解放のクエストを終えたお姉様とばったり出くわしました。


「お姉様、お疲れ様です」

「あれ? 麻央、フィールドに出てるんじゃなかったの?」

「もう用事は終わったので戻ってきました。食材でも探そうかな、と思って」

「食材? あー、最初の街だから特筆するようなものはないと思うよ? イベント前だから、露店を出してる人も少ないし」

「私も急に新しいスキルを使うつもりはないので、本当に暇つぶし程度ですよ」

「スキル?」


 ああ、お姉様は私のスキルを知らないんでしたっけ。確かに説明もした覚えもありません。

 面倒なので説明はしないですけど。

 それから二人でNPCの商店やフリーマーケットを見て回りましたが、あまり良さそうなものが出品されていなかったので、日付が変わる直前までお姉様とお話をしながら時間を潰すことになりました。

 途中、街で見かけたシスさんを捕縛してパーティを半ば強制的に組んだので準備は万端です。


 いざ、占領戦へ。

次回から占領戦開始です。

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