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料理をする前に、使える食材の確認しておきましょうか。作り置きしておいた自分用の料理も使ってしまいましたし。
ええと、メインに据えることが出来そうなのは……チスイコウモリの肉かミニトリスの肉ですか。ううん、チスイコウモリの肉も決して美味しくないわけではないのですが、結構癖のある味をしているんですよねえ。それに比べると、ミニトリスの肉は元になっているのが鶏肉っぽくて食べやすいので、こっちはミニトリスで確定ですね。
既にチキンステーキは作ってしまいましたし……そうだ、ローストチキンなんていいんじゃないんですか? まるごと一匹使うわけではないので、ローストチキンという言い方は正しくはないですが、便宜上そう呼ばせていただきましょう。
そうなれば、後は先程ドロップした茎や葉の使い道ですが……。
ここはシンプルに天麩羅……ですかねえ? 天麩羅にするとなれば、ミニトリスの肉を使ったとり天なんかもいいですが……。とり天、野菜天だけでは、彩りや種類が物足りない気がします。
スピアフィッシュを宿屋のアイテムボックスの中に置いて来たことを後悔する日が来るとは。もし、手元にあれば魚、肉、野菜と三種揃った天麩羅盛り合わせを食べることが出来たというのに、不覚です。
っていうか、そもそもローストチキンと天麩羅って合わないですよね。
どちらもメインに据えられるべき料理ですし……。天麩羅は今度、野菜か魚介類が手に入ってから作った方が楽しそうですしね。ピーマンにエビにカニもいいですね。次は海鮮系の魔物がいる場所に探検に行ってみましょう。
料理の方は、最初の予定通りローストチキンと何か……とはいえ、使えそうな材料がないので普通にサラダにするべきですね。今のレベルで使える調味料を混ぜ合わせれば即席のドレッシングも多分作れるでしょうし。
よし、そうと決まれば早速作り始めてしまいましょう。まずは肉に下味をつけていきます。
インベントリの中からミニトリスの肉を五つ取り出し、皮目の部分にフォークで穴を開けてから、塩コショウを肉に揉み込んでから……いや、醤油ベースも捨てがたいですね?
ううむ……悩みます。悩みはしますが、あまり時間をかけている余裕もありませんので、ここは多数決で決めてしまいましょう。
パーティ全体チャットのタブを開いてっと。
「すみません。質問なんですけど、皆さんって目玉焼きに何をかけますか?」
サプライズ感を出したいので、あえてローストチキンの事は隠して質問です。
目玉焼きにかける調味料は大体塩コショウか醤油……それに、居たとしても少数派のソースくらいでしょう。ちなみに私は醤油以外かけた事がありません。
「目玉焼きに? んー、私はシンプルに塩コショウだけかなあ」
なるほど、ヴィイさんは塩コショウですか。なんというか、予想通りですね。
私の中の百パーセント個人的な予測ですが、ヴィイさんとイオは塩コショウでパパラチアさんは醤油のイメージです。パパラチアさんの方は本当に第一印象となんとなくのイメージだけですが、ヴィイさんが塩コショウであるなら、イオはほぼ確実に塩コショウであると判断しても良いでしょう。
「俺はその日の気分によって違うんだが……一番多いのはケチャップだな」
「ケチャップ!? お、美味しいんですか」
「おう。元々俺がケチャップ好きなのもあるが、以外と合うんだぜ?」
まさかの第三勢力ケチャップ派……。
でも見方を変えれば、ケチャップベースのローストチキンも全然アリですし、むしろ美味しそうです。とはいえ、これだと私を含めて醤油、塩コショウ、ケチャップ派がそれぞれ一人ずつになってしまいました。これでイオが全く別の調味料をかけていた時には、多数決の意味がなくなってしまいますが……おそらくそれはないでしょう。
イオは私の推測だと塩コショウ派のはずですが……。この推測には割と自信があります。そもそも目玉焼きになにをかけるか? という戦争は個々人の間起っているように見えて実はそうではありません。少なくとも、同じ食卓を囲んでいて目玉焼きに別の調味料をかける事自体が珍しい事なのです。
私の家族は、目玉焼きには常に醤油をかけて食べていました。もちろん、それを見て育ってきた私も醤油以外をかけるという選択肢以外は考えられません。つまり、目玉焼き調味料戦争は個々人ではなく家族・・・・・・家単位で起きている事柄なのです。
そして、私は先程ヴィイさん達と合流した時にパパラチアさんが零した『お前ら姉妹は』という言葉を私は聞き逃しませんでした。
どちらがお姉さんなのか、情報が少ないですしそもそもネット内でリアルの詮索をするのはマナー的にもよろしくないですが、おそらくヴィイさんの方がお姉さんでしょう。
妹という存在は、姉という存在に惹かれるモノなのです。私も何かとお姉様の真似をして同じ化粧品を使ってみたり、真似して同じ調味料をかけたりしていますし! そう考えると自然とヴィイさんとイオの味の好みが似通うのも必然だと、私は判断します。
「僕はねー、お砂糖! 甘くてとってもおいしーんだよ?」
全然違うじゃないですか。
目玉焼きに砂糖って本当に合うんですか? 今度試してみましょう。
というか、多数決の意味全くありませんでしたね? こんなことなら初めからローストチキンの事を隠さなければ良かったです。
ふーむ、こうなってしまうと結局何にするか決められませんでしたが、今回は私を誘ってくれたヴィイさんに合わせてシンプルに塩コショウにしましょう。すりすり~っと塩コショウを揉み込んでから、本来ならここにすりおろしにんにくやローズマリーを揉み込むのですが・・・・・・ハーブなどはもっていないので今回は省略です。
一昔前の私ならば、ローズマリーとローズって名前が似ているのでおそらく薔薇系の何かでしょう? なんてことを言いながら薔薇の花びらを揉み込んでいたところですが、既にその失敗は経験済みですので。
あ、良い事を思いつきました。この薔薇を使ってアレを作ってみましょうか。お姉様のお手伝いでよく作っていたので手順は覚えていますし、特別なものは必要ありませんしね。
肉も少しの間放置しておかないといけませんし、サラダは千切るだけで大丈夫。
よし、じゃあボウルの中にインベントリの薔薇の花びらを全て投入して……ざぶざぶと洗っていきましょう。料理のスキルレベルが上がったことで、使える調理器具や調味料が増えたのは嬉しいですね。まあ、全部最低ランクなんですけど。品質やレアリティが高いものは自分で作ったり買ったりする必要があるみたいですけど、わざわざ自分で買って揃えなくても使えるのは嬉しいです。
薔薇の花びらと言えば、個人的に何かと浴槽に浮かんでいるか少女漫画のエフェクトとして使われているイメージがあります。お姉様なんて、健康と美容にいい! なんて言いながら一時期病的なまでに薔薇に執心していましたけど……。
流石に、薔薇の花びらを部屋に散りばめて寝ていた時は気が狂ったかと思いましたが。
……。
…………。
………………。
もしかしなくても、これ結構面倒ですね? どのくらい洗えば十分なんでしょう。最初から最後までお姉様のお手伝いをしたわけではないので、ちょっと分からないですね。
ボウルの中の花びらをかき混ぜるたびに、薔薇の甘い香りが辺りに充満して……これ、ラップとかしてないんですけど、お肉に匂いが移ったりしませんよね?
……ちょっとだけ距離を取っておきましょう。
というか、結構かき混ぜた気がしますし、もうそろそろ大丈夫なんじゃないですか? 特段これをそのまま食べるわけではありませんし。
ボウルの中の花びらを鍋の中に移して、花びらが浸る程度まで水を投入。あとは、少しだけ待って・・・・・・沸騰する寸前で花びらを少し絞ってからボウルに戻す。
さて、後はこの花びらに砂糖と――。
「ああー!!!」
足りない……。完全に失念していました……これじゃあ作れないじゃあないですか。
「どうした嬢ちゃん!?」
「あ……いえ、その……作ろうとしていた料理に足りないモノがあって……」
私の叫び声に反応したのか、いつの間にかパパラチアさんが近くまで戻ってきていました。
「レモンさえ……レモンさえあれば……」
「ん? レモンならさっき何処かに転がってたぞ?」
「本当ですか!?」
「お、おう……」
私が急に詰め寄ったせいで、パパラチアさんが若干引いているように見えますが、そんな事は気にしていられません。というか、ヴィイさんとイオもこちらに戻ってきているじゃないですか。
「ど、何処にありました!?」
「ちょ、ちょっと待て。俺は拾ってねえから……ヴィイ、お前拾ってねえか?」
「んー……私も拾ってない、ですねえ。確かに、レモンは見た気がしますが……イオは?」
「僕も持ってなーい。というか、そこで転がってるそれじゃないの?」
イオが指差したその先に……ころころと転がる、レモンの姿。
おお……なんという事でしょう。植物系のダンジョンですし、幾つか果物があってもおかしくはない、と思っていましたが、まさかここまで運が良いとは。これなら当初の予定通り薔薇のジュースを作ることが出来ますね――あれ?
地面を転がるレモンを拾おうとして伸ばした手は、何も掴む事が出来ずに空を切る。
いけませんいけません。あまりにも私に取ってご都合主義と言わんばかりの展開が訪れているので、慌ててしまったようです。
今度は取りこぼさないように、転がるレモンの進路上に割り込んでから両手で優しく――。
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまいましたが……そんなことも気にならない程に、目の前のレモンが不可解な動きをしていました。
普通なら、あのまま転がって私の手に収まるはずであったレモンはまるで私を避けるかのように、跳ねて逃げてしまいました。
いやいやいやいや、どう考えても絶対おかしいじゃないですか今の挙動。物理演算バグってないですか? 地面の石に当たって少しだけ跳ねたくらいならありえますけど。
というか、私の見間違えでなければ、跳ねた瞬間に足が生えていませんでしたか?
気のせいですか? 気のせいですよね? 多分、変な動きをしたせいで、気が動転
しちゃっているんですよね、きっとそうです。
振り返ると、そこには普通のレモンがあるはず……!
振り向いた私の視界に入ってきたのは。
黄色い羽根と手足を生やし、非常にむかつく笑顔でこちらを見下すレモンの姿でした。
・・・・・・かなりイラっときたので、不意打ち気味にフォークを突き刺そうと思っていたのですが、躱された挙句、鼻っ面にカウンターを頂いてしまいました。
「くぅっ……」
「ぎゃはははははは!」
「うわぁ……良い笑顔してんなぁ……」
空中を自由に飛び回る相手に対して、双剣では分が悪いですが……何より私を莫迦にしたかのように笑うあの果物にせめて一発入れてやりたいです。
「すみません、少しだけお肉を見ていて貰っても構いませんか?」
「それは構わないけど・・・・・・手伝う?」
「私が一発入れるまででいいので、手を出さないで頂けると助かります」
「ん、わかったよ。確かに、ちょっと腹が立つもんね」
さて、と。どうやって一撃を与えしょうか。あの感じだと、普通に攻撃をした所でカウンターをされてしまいますし……。とりあえず、遠距離攻撃でどのきょうな挙動をするか確認をしてみましょう。
全速力で近づいて、真下から右手のナイフで切り上げる。相手がこれを避けるのは予想済みなので驚きもしません。切り上げた右手を勢いよく回し、身体を捻りながら左手のフォークで追撃をしつつ、エアスラッシュでの奇襲なら……っ!
しかし、どの攻撃も全て躱されてしまいました。
うぅ、やっぱり駄目ですか。どうしたものでしょう。手伝いは大丈夫です、と言った手前、今更助けて下さいとは格好悪くて言えませんし。
そういえば、あの魔物は私の攻撃に対して全てカウンターをしてこようとしていました。別に、私が攻めなくとも相手から来るのを待てばいいのでは?
相手のAIがどれほど賢いかわかりませんが、手も足も出ない今の状況よりも幾らかマシです。
じりじり、とレモンとの距離を詰めて行く。相手は頭上でげらげらと笑っていますが、気にしたら負けです。
あえて隙の多い、両手を使った横凪ぎで・・・・・・かかった! こちらの攻撃を躱そうとレモンが後ろへ下がった瞬間を狙って、武器を握っていた左手を離した。解放されたフォークはレモンへと向かって一直線に進んでいく。
不意打ちに近い、この形。流石に避けられないでしょう――と思っていました、が。羽根に少しだけ掠った程度で、クリーンヒットとはほど遠い結果となりました。しかも、フォークと入れ違いになるように、レモンがこちらへと突っ込んできています。
そして、私はそれを狙っていました。
一度目の突きを繰り出した時、私に向かって激突してきたので、鋭い攻撃に対してそう返してくるのでは、と読んでいましたが……。
その場でぐるり、と回転しながら残されたナイフを両手でぎゅっと握り締める。ナイフで切るのではなく、面で叩くように――フルスイングっ!
確かな手応えと、勢いよく吹っ飛んで行くレモンの姿。ああ、スッキリしましたね。これで満足です。あとは皆さんに手伝って貰って――って危ないっ!?
吹き飛ばされていったはずのレモンが壁に当たった所で、勢いを増してこちらへと戻って――ちょ、ちょっと待って下さい! また跳ね返って来て――。
「ぐっふぅ!?」
私の鳩尾へ、ピンボールのように跳ね回っていたレモンが突き刺さる。
想像以上に痛くて死にそうです。痛みのレベルを下げて置いて正解でした。
お腹の中で動きを止めているうちに、握っていたナイフを刺してトドメを刺してしまいましょう。お腹でもごもごと蠢いていますが、そこまで大きくないので、押さえ込まれたら出てこれないようです。
しばらくメッタ刺しにした所で、ぴくりとも動かなくなったのを確認してから手を離す。
うわぁ……果汁か何かわからないもので物凄いベタベタしているんですが……。
でも、これで当初の目的通りレモンが手に入りました。なんか、羽根とか手足とか生えてますけど。
「嬢ちゃん、大丈夫か? 最後、綺麗に入ったみたいだが」
「え、ええ。一応大丈夫ですよ。ボールが身体に当たるのは慣れているので。お騒がせしてすみません。必要な材料はコレで揃ったので、もう少しだけ待って貰えますか?」
「急がなくても大丈夫ですから、ゆっくり作って下さいね」
そう言われても、流石に待たせすぎるのも悪いですからね。なるべく急いで作ってしまいましょう。
ボウルの中に移した薔薇の花びらに、砂糖をとレモン汁を全体にまぶすようにふりかけて、丁寧に揉んでいきます。
赤い汁が少量ほど出てきたら、揉むのをやめて……。スキレットの中に砂糖と水を入れて煮立てていく。香り付けにブランデーとかがあれば良いんですが、生憎持っていないので割愛です。なくても美味しいはず?
しばらく煮詰めた所で軽く舐めてみる。んー……甘すぎるのもアレえすし、ここら辺で止めておきましょう。
あとは、密閉出来る容器の中にシロップと薔薇の花びらを入れて……薔薇ジュースの完成です!
後は、綺麗に色が付けば良いんですが。あー、レシピの登録は後で纏めてしましょう。たぶん出来ますよね?
次は、放置していたお肉を焼いていきますか。レモンとの格闘時間があったおかげで、それなりに染みこんでると嬉しいんですけど。
油を引いたフライパンに、お肉を投入。流石に一気に焼く事は出来ないので、先に一つだけ焼いてしまいましょう。
ちゃんと皮目を下にして強火で熱していきましょう。こんがりと焼けて来たら、少しだけ水を投入して蓋をして蒸し焼きに。
その間に、サラダに使う野菜を洗っておきます。茎や葉が食べられるかどうかちょっとわからないですが、多分大丈夫でしょう。作ってから毒味をすれば問題ありません。
ボウルの中に水を溜め、野菜を洗っていく。蛇口のようなものがないので、いちいち水が入ったペットボトルから出さないといけないのが面倒です。楽をするために水魔法を覚えた方が良いかもしれません。検討しておきましょう。
洗い終わったら、葉はそのままで、茎と根を食べやすい大きさに切り刻んで盛り付けて――っとと、いけません肉が焦げてしまいます。先に肉を取り出して、次のお肉を二枚投入。皮目が焼けたのを確認してから先程と同じように蓋をして放置です。
さて、サラダの盛り付けに戻りましょう。葉をお皿に敷き詰める前に一度水に通してからお皿に盛り付けていく。ぎゅうぎゅうに詰めると見栄えが悪くなってしまうので、ふんわりと置く感じで。そして小さく切った茎と根を全体に散りばめてから……。
ここで、先程一枚だけ先に焼いて起きたお肉の出番です!
食べやすい大きさに身を解していきましょう! 中央に小さなお山を作るように、解した身を乗せていく。そして、作り置きして置いたゆで卵と、先程のレモンの余りを輪切りにして・・・・・・。肉の山を囲うように盛り付ければ、レイヴンの気まぐれサラダの完成!
さてさて、焼いていたお肉も良い感じに仕上がったので、残る二枚を焼いている間、サラダにかけるドレッシングを作っていきましょう。
お肉が塩コショウベースなので、こちらは醤油ベースのドレッシングを作っていきましょう。
レシピを見ないで作れるドレッシングがそれしかないだけ、とも言うんですけど。
ただ、玉ねぎとかがないのはちょっとだけ困りました。やっぱり、野菜の入手経路は確保しないと不便です。畑欲しいですね、畑。確か、ハウジングで家を買えばついて来るんでしたっけ。家はあんまり欲しくないですが、畑は欲しいです。誰かルームシェアとかして頂ける人が居れば良いのですが。
自由に使える調味料で作れる醤油ベースのドレッシング。そうなると、やっぱりアレですね。あんまり時間もかかりませんし。
用意するのは、砂糖・醤油・酢・サラダ油のたった四つだけです。手順も簡単、密閉出来る容器の中に、酢・醤油・サラダ油を投入したあとお好みで砂糖を入れるだけ! 砂糖が多ければ甘くなりますし、少なければサッパリとした味わいのドレッシングになります。
本当なら、酢と醤油は大さじ二杯、サラダ油は大さじ四杯なのですが、いつも計らないのでここでも計りません。お菓子を作るとき以外は適当でも美味しくなるものですよ。
んー……。一応、イオのためにちょっと砂糖多めの甘いドレッシングも作っておきましょうか。目玉焼きに砂糖をかけるくらいですし、もしかすると甘いのしか食べられないかもしれません。
後は全部入れた容器を適当に振って完成です。
んー、いいタイミングでお肉も焼けましたね。後は、この料理をレシピブックに登録して完成です。
確かレシピブックって料理の名前もこっちで弄って登録できましたよね。せっかくですし、名前をつけておきましょうか。
【料理】レイヴンのきまぐれサラダ
醤油ドレッシングをふんだんにかけたサラダ。
【料理】ミニトリスのローストチキン
ミニトリスのもも肉を焼いたシンプル料理。
【料理】適当醤油ドレッシング
さっぱりとした醤油ベースのドレッシング。
【料理】ローズジュース
鮮やかな彩りの薔薇のジュース。
名前がかなり適当になってしまいましたが、わざわざレシピブックを使う人もそんなに居ないでしょうし、大丈夫でしょう。
「すみません、皆さん。お待たせしました。大したものは作れませんでしたが……」
「「「おぉ……!」」」
「もし美味しくなかったら、残して頂いても構いませんので」
「いや! そんな事しないですよ!」
「ほー。ゲームの中でもここまで美味そうに作れるんだな、すげぇ」
「ねぇねぇ、もう食べて良い?」
「大丈夫ですよ。ヴィイさんもパパラチアさんも、どうかご遠慮なく……って、パパラチアさん、このままだと食べにくいですよね?」
「あー・・・・・・ちと行儀が悪い食べ方になるから、ちょっと離れて食うわ」
「私は別に気にしないので大丈夫ですよ? せっかくですから、皆で一緒に食べましょう?」
「レイヴンさんもこう言ってくれてるんだしほらほら、こんなに美味しそうなんだよ?」
私たちが喋っている間に、イオはもう料理を食べ始めていました。って、大変です。味見をするのを忘れてました!
料理を口に運んでいるイオの表情は全く変わらず、ひたすら小さな口の中へ料理を放り込んでいます。
あれ……? もしかして、あんまり美味しくなかったですかね?
「んん~! 美味しい!」
そんな私の心配を打ち消すかのような、ヴィイさんの声。パパラチアさんに関しては身体が大きいせいで、割と大きかったはずのローストチキンを一口で飲み込んでいました。
「あ、サラダにかけるドレッシングは二種類あるので、どちらかお好きな方を選んでださい。こちらがサッパリ系で、こちらが少し甘めに作っていますので」
「僕、そっちの甘い奴がいい」
「はい、イオ」
ドレッシングを受け取ったイオはサラダに軽くかけてから、口に運んで「ん、美味しい」と小さく呟いたのを見逃しませんでした。これには小さくガッツポーズです。
「レイヴンさん、ドレッシングってわざわざ二つも作ったの?」
「いえ、作ったという程の手間はかかっていませんよ。使用した調味料は同じなので、少しだけ分量を弄っただけです」
「へぇ~。レイヴンさんって、料理得意なんだ」
「このゲームは普通のMMOと違って、レシピがなくても料理が作れるので楽しいです。他はレシピ通りに材料を集めて~って感じなので、どうしても作業感が拭えないのですし。なにより、趣味でやっているお料理のスキルがゲーム内で役に立つっていうのが良いですね」
「確かに、結構自由度は高いですよねえ。あーむ」
普通に喋りながら料理を食べているだけなのに、とてもヴィイさんがとても可愛らしく見えます。魅了とか魔性のスキル取ってません? これ。
パパラチアさんの方をちらりと確認すると、すでにお皿に盛り付けてあった料理が綺麗さっぱりなくなっています。
「ごちそうさん、美味しかったぜ」
パパラチアさんの方をじっと見ていると不意に目が合って、そんなことを言われました。
やっぱり、人から美味しいって言葉を聞くのは嬉しいですね。
私も、早く食べて探索を再開しましょう。
今年も年末が近づいてきました。
皆様良いお年を。




