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そして僕は泣いた。  作者: ゆるふわ腐女子
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プロローグ

 南無阿弥陀仏…無感情なお経が聞こえてくる。周りでは声をあげて派手に泣く者もいればすすり泣きする者もいた。きっとほとんどの人が泣いていたであろう。もしかしたら僕を除く、全員。


 20XX年、9月5日、僕が子供のころから好きだった幼馴染の小西向日葵が交通事故で死んだ。僕たちが中学二年生の頃の出来事だった。


 いつも僕と小西は二人で登下校をしていた。別にカップルとかそういうわけじゃないけど、昔からの幼馴染だったし、皆とは家が離れているから帰る方面が同じ同級生は小西しかいなかった。


「お前も恥ずかしくないのか?そろそろ一人で帰れよ。」

「いつも和くんそーゆ事言うよね…。全く…ひどいよ」


 少し膨れながら彼女は言った。内心、二人で登下校できるのは嬉しかった。なぜなら僕は小西の事が好きだったから…。


 小西の事は小学生…いや、幼稚園の頃から好きだった。


 僕は幼稚園に入った時、病弱でほとんど欠席していた。だからもちろん友達なんていなかったし、みんなから「和に近づくと菌がうつる」と言われ避けられていた。


 ある日、帰ろうとしたら僕のリュックが無くなっていた。いや、リュックだけではない。粘土も筆箱もノートも…何もかも。僕は教室の中を一生懸命探した。


 結局、僕の私物は全てごみ箱の中に入っていた。


 そして見つけると同時にきっとごみ箱に僕の私物を入れたであろう人間が二、三人集まってきて


「お前の存在価値なんて無いんだよ。」

「早くお前もごみ箱の中に入れよ。」

「俺らがごみ出ししてやるからさ。」


 その時、少女がすっと現れて


「なにやってんの…。弱い者いじめとかほんと…最低。和君…大丈夫?これ、私物…でも汚いよね。新しいの買ってもらうように先生に言っておく!」


 そういって少女…小西は去っていった。


 きっとこの時から小西に恋をしていたんだと思う。


 そんな優しい、今まで僕を守ってきてくれた小西に色々暴言を吐きすぎてしまったのだろうか…。夏休みも明けて間もない9月5日、小西は僕の下駄箱に置手紙を置いて先に帰ってしまった。


『和くんへ 今日は部活が無かったから先に帰るね。それに中学生にもなって私と二人で帰るなんて和くんも恥ずかしかったよね。ごめん。ほんとは登下校、これからも一緒にしたいけど、和くんが望まないんだったら私、一人で行くから大丈夫。遠慮しなくっていいから。 向日葵より』


 申し訳なくなってきた。学校を出たらメールをしよう、そう思いながら歩き始めた。


『小西へ わざわざ置き手紙有難う。言いすぎちゃったかな…。いつも一緒に帰ってくれて嬉しいよ。これからも宜しく! 一富美より』


 しかし家に帰ってから受信ボックスを見ても通知はゼロ。既読もついていなかった。いつも小西は既読が早いはずだったが…。用事でもあったのかなと思いその時はスルーすることにした。


 だが一時間たっても二時間たっても夜になっても返信は一向に来なかった。少し心配になってきたから電話をかけることにした。


「こんにちは、いつもお世話になっております一富美和です。」

 そこで電話に出てきたのは号泣している小西のお母さん。


「和君ね…ごめんね、向日葵は…向日葵は今日交通事故で死んだのよ…。」


 ここからの話はもうほとんど耳に入ってこなかった。というより入れようとしなかった。罪悪感で踏みつぶされそうになった。僕が一緒に帰っていれば防げたかもしれない、僕があんな酷いこと言わなければ防げたかもしれない。


 この出来事があってからもう僕は人と関わるのを避けるようになった。又、クラスでは小西が死んだのは僕に原因があると皆も判断したそうで、僕の悪口が飛び交っていた。


「一富美、こっちちょっと来て。」


 そう言いながら古河が近づいてきた。家の位置は離れているが幼馴染。小学校六年生ぐらいまではよく話していたが、最近はあまり話していない。どうせ小西の件の事で僕を責めるのだろう。


「あんた、向日葵に申し訳ない、助けたかったって思ってるでしょ。」

「…」


 僕は何も答えなかった。


「できることならやり直したい、でもどうせ無理だろう…。そう思ってるでしょ。」

「…」


 僕はさっきと同じように何も答えなかった。


「ちょっと…答えなさいよ…!まあいいわ…。あのね、私、時間を操ることができるのよね。だから過去に戻ることもできるし、未来に行くこともできるの。」

「え⁉…」


 僕は一瞬耳を疑った。


「この小っちゃい時計を枕元に置いて私と一緒に寝れば行けるわ。ただし…その時計は使い捨てなのよ。ちなみに私の所持数は5個…。つまりチャンスは最高で5回。」


「え、一緒に寝る?」

 異性である古河と一緒に寝る?いくら幼馴染といったって流石に…。


「それだけで向日葵を助けられるんだからいいじゃない。あなた、向日葵を助けたいのよね?」

「うん、絶対。」


「それじゃあ今日の夜8時、私の家に来て。」


 僕は絶対に5回のチャンスで向日葵を助ける、そう固く決心した。

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