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社畜の勇者  作者: 夏イロハ
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一話「本当の始まり」

 高梨たかなし 東也とうや

特徴のない名前。年齢は29 独身 サラリーマン

しかも、頭の出来も悪いときた。

低学歴で就職活動をした結果、ブラック企業に引っかかってしまった。

低給料で、しかも会社が裏の組織と繋がっていると言う。運命とは残酷なものである。

これまでこんな自分にも、

支えてくれる友人もいた。だが、その人たちも時が経つにつれ減っていった。

日々のハードワークにより、心も体も疲れ、やがて会社を辞めていった。

ただそれも、 形だけは である。

辞めようとした人たちは、ことごとく社会的に抹殺されてしまった。

すべて会社と繋がっている裏の人間によるものだった。

今、生きているとしても、楽な生活は送れてないと思う。

だから俺も働くしかない。

ひたすら働いて、働いて、働いて。

逃げることもできず。

投げ出すこともできず。

そんなことを繰り返しているうちに、俺にも限界が来たようだ。

どうしてこんなことになってしまったのだろう。

そんな疑問が、頭の中で渦巻いて仕事が手に着かなくなってきた。


(もう、止めよう。)


生きることに疲れた。仕事に疲れた。

気づけば俺は、会社のビルの屋上に遺書などが入ったカバンをもってに立っていた。


「もっと、楽しく生きたかったな....。」


こうしていざ死のうとすると様々な感情が心にうまれてくる。本当に死ねば、楽になるのだろうか。

晴れ渡る青い空を見上げ、込み上げてくる涙をそれ以上外に出てこないようにする。


ドクン


心臓が大きく跳ねた。いくら死にたいとは言えど、死ぬのはこれが最初で最後なので恐怖が無いわけではない。


ドクンドクン


ビルの淵に足をかける。

鼓動がどんどん早くなってくる。胸に手を当てなくても聞こえるほどに。

不意に下を見てみるとそこは、会社の裏にある墓場だった。

場所を変えようとも思ったが、何だかここから落ちる方が良いような気がしてきた。それが自分には相応しいものに思えた。

覚悟を決め、体を真っ直ぐにし前のめりに倒れる。十分に体が倒れたところで、足を少し力をいれ蹴る。

その時、一瞬世界が止まってしまったように思えた。


ドックン ドックン ドックン


心臓が脈を打つ度に心臓に痛みが走る。

止まっていた世界が動きだし、体が浮遊感に襲われる。


「うっ_________ 。」


まるでジェットコースターに乗っているかのような、気持ち悪い感覚に思わず、変な声が出てしまった。

最期なのになんとカッコ悪い。 実にカッコ悪い。

少しずつ地面が近づいてきて、俺の体が地面にた______________。


そこで意識が途切れた。体が地面にぶち当たる寸前に、体の筋肉が硬直したような感覚がまだ残っている。

僕は死ぬことができたのだろうか。



_____________________

_________________

____________

______

___

_



意識が途切れてどのぐらい経っただろか。

そもそも死んだらこんなにいろいろ頭の中で考えることが出来るのだろうか。

まだ体に力が入らない。瞼を開けることもできないようだ。

しばらくすると固まった体に嘔吐感が湧き出てきた。


「う...ゴホッ..ゴハッ...。」


盛大にむせてしまった。だがその代わり体が動くようになり、上半身を起こしてみる。


「ハー.....ハー.....ふぅ..。」


何とか呼吸が落ち着き、次は瞼を開けてみる。


「いッッ!?」


目に凄い量の光が差し込んでくる。眩しくて反射的に瞼を閉じてしまった。

瞬きをしているうちに光に慣れてきて景色が見えるようになってきた。

その時、目に写った景色はとても美しいものだった。

雲ひとつない青い空に、大きな鳥のようなものが群れをなして飛んでいる。眼下には、青々としげる森が広がっている。

周りを見渡してみると同じように森が広がっている。360度全体を見渡せることから、自分は小高い丘の上にいるようだ。

自分の近くにはカバンが転がっており、中の物が飛び出している。

カバンに駆け寄り、中の物を知らべてみる。


(中身は死ぬ前と変わっていない。そもそも此処は何処だ?俺は確かに死んだはずじゃ.....)


 自分の姿を確認してみるが怪我をしている訳でもなく。足もあるので、幽霊になったということでもないらしい。


「痛い。 」


頬をつねってみたが夢でもないようだ。痛い。


(どうやら、本当に此処がどこか分からないようだ。)


手に持ったカバンを肩に担ぐ。


「太陽はあるのか、あっちの法則がここで役に立つかわからないが...」


腕時計を腕から外し持ち変える。短針を太陽(?)に向ける。


「長針と短針の間が南の方角で、その反対側が北か。」


北と示された方向を向くが、その先には森が続くのみ。とてもこの先に何かがあるとは思えなかった。


「元々死ぬ予定だったんだ。歩き続けて力尽きたらそこまでだったってことでいいだろ。」


命なんて今さらあっても無いものなんだ。

そんなことを考えながら、ネクタイを緩め北と予測された方向へ歩きだす。




異世界転生ものはかなり存在しているのですが、結構最初の方が、

楽なものが多いと思いまして、主人公に森という大きな壁を用意しました。これは物語が進展するまで、かなりの時間が掛かりそうです(笑)

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