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巨女、異世界に立つ。

一つの村が壊滅の危機に瀕していた・・・・

男達は粗末な武器を片手に村の門の前にバリケードを作る。

女子供は村の中心にある教会で一心不乱に神に助けをもとめる・・・

住処を奪われたオークの群れが偏狭の地にあるこの村を襲ってきたのだ。


ところ変わって日本。

ミーンミンミンミーン・・・・

真夏日の昼下がり、設定温度20度に冷やされた部屋の中で一心不乱にパソコンのキーを叩く少女。

目の下にクマ。ぼさぼさの腰まで届く黒いロングヘアー。

徹夜で乙女AVGのゲームをしているようだ


「んふ♪ンフフ・・・」

不気味な笑いを浮かべる少女。

その少女の見つめるモニターの中には、漆黒の鎧に身を包んだイケメン(二次)と純銀の鎧に身を包んだ

これもまたイケメン(二次)がいた。


戦いのさなか、純銀を庇い深手を負った漆黒のイケメン。

「死ぬな!!貴様が死んだら・・・ボクは・・・ボクは・・・」

「バカ野郎・・・オレが・・・このぐらいで・・・く、くだばるわけ・・・ねーだろ・・・けど・・・

ちょっとばかり・・・疲れちまった・・・・す、少し・・・ね、眠るぜ・・・」


純白のイケメンの腕に抱かれた漆黒のイケメン・・・

「し、しっかりしてよぉ!!い、いやだ・・・ひ、一人にしないでくれ!!お、お願いだ!!」

「さ・・・いつもの・・ように・・・おやすみの・・・口づけを・・・」

「いやだよ!!死なないでおくれ!!」


チュッ

純銀の唇に漆黒の唇が重なる

「!!」

「ふふ・・・じゃぁな・・・おやす・・・・み・・・・」

「いやだぁぁぁぁあぁ!!死なないでぇぇぇ!!」


「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

感動のあまり意味不明な絶叫をあげる少女。

そのままベットに飛び込み、両足をバタバタさせる


ひとしきり、ベットの上で悶えると

おもむろに立ち上がり、クローゼットの中から一振りの剣を取り出す。

先ほどのゲームの中で漆黒のイケメンが使っていた剣のレプリカだ。

だが・・・それは剣と言うには大きすぎた・・・・全長210cm全幅35cm 重量25kg

公式設定どおりに、アメリカの刀剣オタクの友人に作って貰った本物の剣(銃刀法違反)である


「んふふふ」

背中に付けた専用のハーネスに大剣をぶら下げる少女。だが・・・

大人の男性より高いはずの2メートル超の剣が、何故か小さく見える


スチャッ

大剣を背中から抜き、中段に構える少女。

25kgを超える重量物を軽々と扱う剛腕の持ち主。

その少女の名は汐崎恵美菜しおざきえみなと言った。


恵美菜は身長220cm体重110kgの巨女だった。

彼女は、その恵まれすぎた体格ゆえ、からかいの対象になった

小学生の頃は「八尺様」「のっぽ」etcからかわれ続け、

中学生の頃は「顔は可愛いのに残念」「スタイルだけはイイ」「でかすぎ対象外」

高校生でニートになり一年たったいまでもニートだ。


「はぁ・・・ファンタジーの世界に生まれ変わりたい・・・・」

ひとしきり大剣を振りまわし(家具を傷つけないように注意しながら)ベットに倒れ込む


ギシッ!!

恵美菜の体重+大剣の重さにベットが大きくゆがむ。

バキッ!!

「あ!」

と思った瞬間ベットが折れ、恵美菜は草原の大地の上に投げ出された・・・・

大地!?


アスファルトでもない、固められた草原の大地。

綺麗な青空・・・・まわりを見渡すとまるでファンタジーの世界の村のような村があった。

「ゆめ?・・・それとも異世界にきちゃった?」

呆然とする恵美菜。


とりあえず、起き上がり、自分の意思で思い通りに身体が動く事を確認する。

怪我はない。夢だとしても身体がここまで自由に動かせるのは珍しい。


仮に夢でも現実だとしても、生きていくためには現状を知る必要がある。

まず装備品のチェック。


メインウエェッポン:無名の大剣(フレンドお手製)

上半身装備    :茶色のタンクトップ

下半身装備    :白と水色のストライプパンツ

・・・・ストライプパンツ!?

パンツ丸出しのままの恰好に赤面する恵美菜。

「ちょ、ちょぉぉおぉ!!!」

青空の下で座り込む恵美菜


と、その時。

「た、たすけてくれぇぇぇ!!」

男の絶叫に我に返る恵美菜。


見ると棍棒をもったオークに追いかけられている男性がいた。

そのオークと目が合う・・・

「ぐげげ・・・メスがいたメスメスメスゥゥゥ!!」

「ヒッ!」


オークが恵美菜めがけて襲ってくる。

どうみても自分の身体が目当てだ。

「ゆ、ゆめなら死んでも大丈夫・・目が覚めるハズだし・・・」

「ぐへへへへ!!」

「本当に異世界なら、セオリー通りにチート能力があるはず・・・」


恵美菜は意を決して、傍にある大剣を握りしめ立ち上がる!!

「デカッ!!」

恵美菜を見たオークの一言。※オークの身長は約130cm

その一言にキレる恵美菜。

「デカッって言うなっ!!」


恵美菜の身長+振り上げられた大剣の高さ=4メートル超の高さから25kgの鋼鉄の塊りが

振り落される。


バコッ!!!

剣の刃ではなく、腹の部分がオークの頭部に落ちる

「ゲブッ!!」

そのまま地面にめり込むオークの顔。

「・・・弱い」

異世界戦、初勝利の恵美菜の感想はラクショーだった。


「だれかぁぁ!!た、たすけてぇぇぇ!!」

少女の悲鳴が聞こえる。

恵美菜は声のする方に向って駆け出した


そこで恵美菜が見たものは・・・

教会の中から引きずり出される女と子供たち。

子供たちはオークが用意した移動式牢屋に入れられ、老女たちは占領した家の中に閉じ込められ、若い女たちは縛り上げられオークの前に連れ出されていた。


「ぐへへへ、大漁大漁www」

若い女たちを囲み、涎を垂らす10数匹のオークの群れ。

そのオークの群れの数に一瞬、ひるむ恵美菜。


「あそこにもメスがいたぞーーー!!」

オークの群れに見つかってしまった恵美菜。

「パンツ丸出しだww」

「俺たちにピーーされたくて仕方ないんだろ?w」

「ピーーーしちまえぇwww」


恵美菜に突撃する13匹のオーク。

・・・・が

「デカッ」×13

13匹のオークがハモる。


「うぅぅぅ!!」

羞恥心と怒りで顔を真っ赤にした恵美菜。

ブンッ!!

野球のバットのように大剣を右から左にフルスイングする。

「ガ!」

「ゲ!」

「グ!」

大剣の腹で薙ぎ払われたオークは6匹。

戦意喪失2匹

逃走5匹


深追いはせず、恵美菜は囚われた村人の元に駆け寄る。


「ぐははははっ」

とそこへ、不気味な笑い声と共に教会の中から巨大なオークが姿を現す。

恵美菜より大きい・・・3メートルを超える巨躯だ。

「その身長・・・わしの嫁に丁度いいぞ」

舐めまわすように恵美菜を見るオーク。


たしかに一見、身長のつり合いは取れているが・・・オークに言われても恵美菜は嬉しくはない。

「わしの嫁になるか・・・それとも」

ブンッ

巨大な棍棒で教会の壁を砕くオーク。

「ここで砕かれるか?どっちがイイか選んでいいぞ」


ここで諦めたら、恵美菜はエロゲーのヒロインのようになってしまうだろう。

恵美菜は覚悟を決めて、大剣を構える。


「いいぞ、気に入った!!死ね!!」

大上段から振り落される棍棒。

恵美菜は大剣でそれを真正面から受け止める。


バコッ

その衝撃で恵美菜の足元が地面に沈む。


「ヒッ!!」

その一撃を見ていた村人から悲鳴があがる。


しかし・・・

軽い!?

棍棒を受け止めた衝撃が、恵美菜の想像よりはるかに軽かったのだ。


恵美菜は、そのまま棍棒を弾き返す。

「ぶもっ!?」

よろける巨躯のオーク。

岩をも砕く自慢の一撃が簡単に受け止められた事にショックを受けるオーク。


ゆっくり上段の構えをとる恵美菜。

「ま、まっでくれ!!お、オデが悪かった・・・まっ」

バコッ

巨躯のオークは、恵美菜の大剣の腹で頭を殴られ昏倒した。


「うぉぉぉぉぉ!!」

「勇者さま!!」

「わぁぁ、ありがとぉぉぉ!!」

村人たちから歓声があがる。


こうして、恵美菜の異世界生活1日目は終わった・・・




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