第四魔王おじいさん
むかしむかし、ある小さな農村におじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。
山へ向かったおじいさんは、そこで真昼の太陽のごとき輝きを放つ一本の竹を見つけました。
おじいさんは、思い切ってその竹を第四魔王奥義一ノ型『魔剣デスサイス』で粉みじんにしました。
その衝撃波は山の周囲にまで及び、おじいさんの住んでいた農村は木っ端微塵に切り刻まれていました。そこで唯一たっていることができたのはおばあさんだけでした。
切り刻まれたたけの中からは、それはそれは禍々しい一人の魔王が、姿を現しました。
「年老いても変わらぬその魔力。感服いたします。第四魔王┃悪爺様」
その竹から現れたのは第十六魔界の王である、第十六魔王ギルギス・シューベルバッハであった。彼とおじいさんは昔、魔王政権の乱にて、唯一おじいさんの第四魔王奥義六ノ型『ジ・エンド』を食らって、その地に足をつけていた魔王である。しかし、いわゆる防御特化である彼は、おじいさんの度重なる連続攻撃で消耗していたこともあり、決定打に欠けると言う理由でやむを得ずその地をあとにしたとされている。
「久しいなギルギスよ。魔王政権以来か? 最近の十六魔界はどうだ? 俺が昔足を踏み入れたときは吐き気を催すような殺気が飛び交っていたが......いまのお前からはそんな殺気は感じられないな」
「さすが、第四魔界を統べるおじい様。そうです。今期の魔界は、例年の魔界よりも質が大幅に減少しております。今日ここに参ったのも、そのことを伝えるためにございます」
聞くところによると、今の第一新羅第二世界の魔界は衰退の一途をたどっているようだ。送られてくる人間の魂の質が毎年低下しているようで、そこから生成される魔族はやる気は見られない上に、根性もない。文句を言うだけ言って働こうとしない。
五千年前までは、滅多に発現しなかった《存在が罪》の称号が、生成される魔族の約三割に発現していることから、魔界の落ちぶれ様は目に見えて明らかである。
「アルトはどうした。奴の『クリエイティクス』の力があれば、人間の魂なぞなくとも有力な兵の千や万は創れるだろう。これまでもそうだったはずだ」
「第七魔王様......彼女は先日お亡くなりになりました」
「なんだと!? アルトが死んだだと? やつの寿命はまだ尽きるような時期ではないはずだぞ?」
第七魔王アルト。彼女の能力はゴーレムクリエイト。これまでの【魔リンピック】でもその力を存分に発揮し、我々第一新羅を勝利に導いてくれた。
「彼女は別新羅の魔王により、暗殺されました......未だ、犯人の足取りはつかめておりません」
「そうか。まぁ奴は対人戦を得意としない戦闘タイプだったからな。仕方ないだろう。で? 現在の第七魔界の王座は一体誰のものになったのだ?」
「アルト様の一人娘のソフィア様にございます」
「ソフィア......か。あまり、いい思い出はないな」
昔、冗談半分でアルトにちょっかいを出していたところを目撃され本気で殺されかけた。という思い出があることから、おじさんはあまりソフィアに好感を抱いていないのである。
「まぁあいつが味方についてくれるとなると、すごく心強いな」
「おじいさま。そろそろ、魔界の扉が閉じてしまいます故」
「わかった。次の魔リンピックは、二万四千年後か......それまでに、最強の戦力を確保しておかねばな。......まずは第一世界から協力を依頼するか」
そういっておじいさんと、ギルギスは、魔界の扉をくぐる。
「今回の魔リンピックも我々第一新羅の勝利に収めるぞ!」
こうして、第八十三回魔リンピックの勝利を誓う魔王がここに誕生したのである。お終い。




