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物語の中の魔女  作者: あすぎめむい
はじまり。序章の一ページ。
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3ページ目

 この世界に来たとき、どうしても納得のできないことがありました。


 それは、活版印刷が存在しないことでした。……読書が唯一の趣味である私には大問題です。


 本を作るときは写本が当たり前の上、紙そのものもかなり値段が張るので、この世界の読書は金持ちの道楽になっていました。


 おば様の家の一室には大量の本がありましたが、そのほとんどが古くなっていて、読むことはできるのですが……、骨身になるまで読めるほどの耐久力はありませんでした。


 悩んで悩んで……、そして私は気づきました。


 そうだ。


「本がなければ、いっそ作ってしまえばいいのです」


 という簡単なことに。


「センセー? なにをぶつぶつ言ってるの?」


 あ、思考が無意識に口に出ていました。


「いけない、いけない。ちょっと考え事をしていました」


「無理しないでねー?」


 そう言って一人、また一人と教室を出ていきます。皆さん、午後は家の仕事の手伝いがありますから。


 正直な話、働き手の不在は家計に負担をかけてしまいます。それでも、子供のために私の授業を受けさせてあげているのを見ると申し訳ない気持ちになっていきます。


 私に出来ることはないでしょうか……。


 いつしか私は、そんなことを思うようになっていきました。


 だからこそ、私は本を作ることに決めました。


 ですが、私が書いた本はいくらなんでも誰も読まないと思うので写本から始めました。写本をすることにしたのは、昔、歴史の本を読んでいた時のことを思い出したのがきっかけです。おば様に頼んで、紙を調達していただき、やっとこの前待望の一冊目が完成しました。


 写したのは、子供にでも分かるような簡単なお話ですが、生徒たちには大人気です。順番を争う事態にならないよう、一日おきに貸し借りさせることで何とか折り合いをつけました。


 彼らは初めて読んだお話に感動したようで、本を返す時に私に読んだ感想を話してくれました。みんなの言葉には、楽しさや嬉しさがたくさん詰まっていて、私まで楽しい気分にさせてくれたのです。


 いいですね。こんな気持ちになれるのならこの世界に来たのも悪くなかった、そう思えるのです。


 私の物語を書くのはまだまだ先、まずはみんなが楽しめる物語を提供したいです。


 思ったらまずは行動です。家に帰ったら、写す本の選定から始めましょう!


「せんせー。今日の授業写したもの、ツーレが忘れてったから、ルーテに届けてくれない?」


 ……って、別の用事が入ってしまいました。

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