表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の中の魔女  作者: あすぎめむい
はじまり。序章の一ページ。
1/8

1ページ目

 朝は、野鳥の囀りで目が覚めます。寝ぼけた私は、今日も目覚まし時計を探すため手を伸ばしますが、そんなものはどこにもありません。


「うぅ……、もうこんな時間……」


 とはいえ、さすがに太陽の高さで大体の時間は分かります。もう働く時間です。動かない体に活を入れ、いつもの服に着替えて、私は借家の自分の部屋を飛び出しました。


「あら、先生。もうお仕事? 朝ご飯はいるかしら」


 共有キッチンでは大家さん――私はおば様と呼んでいます――が朝ご飯の用意をしていました。


 食卓の上には、パンにゆで卵、バターのようなものにおば様特製のソース。いつもの朝ご飯ですが、私はとても楽しみにしています。


「でも、食べる時間がありません……!」


 慌てている私の姿を見て、おば様が一つの提案を出しました。


「それじゃあ、バスケットを作るから。ちょっと待っててね」


 おば様はそう言うと、バスケットを用意しました。中にアブラナ科の野菜にスライスしたゆで卵を、バターを塗ったパンで挟み、乾燥させた肉を添えて入れます。


 おば様の手際の良さは見ていて惚れ惚れとします。私は不器用なので、おば様みたいに何でもそつなくこなすことができません。


「ありがとうございます。それではおば様――、行ってきます」


 私はおば様にぺこりと頭を下げる。


 お辞儀をしてもおば様には意味が分からないのだけど。私の心は伝わるから。


「いってらっしゃい」


 おば様の見送りを背中に受け、私は仕事場に向かいます。






 ここは私の元々いた『日本』とは別の世界。16歳の私は『先生』として毎日を生きています。


 私の名前はアオイ。『日本』では普通の高校生でした。


 はずなのですが……。


 ある日。私が目を覚ますと目の前には一面の草原が、どこまでも広がっていました。この時点で私は現実についていけません。パジャマ姿で草原にいる私。なんとシュール。私は混乱していました。


 何とか勘を頼りに近くの町まで辿り着くことはできましたが、そのころにはパジャマはボロボロ、お腹はペコペコ、体はヘトヘトという状態で全く動けなかった私を助けたのが、おば様でした。


 おば様は、私の命の恩人なのです。


 心も体も限界を迎えていた私をおば様は自らの家へ連れ帰り、看病してくれました。そして、おば様とたくさんお話して分かったことは――ここが私のいた世界とは別の世界ということでした。


 うすうすは気が付いていたんですけどね? 小説などでよくある展開でしたから。あのときは余裕がなかったのですが……。


 そして次にわかったことは、私が今大変な状況に置かれているということでした。現在の一張羅であるパジャマは服という体裁は保っていましたが、至る所が破れていて、もう着ることが困難でした。おば様は直せるといっていましたが、その……。直すまでの服が問題だったのです。


 私ではおば様の服はサイズが合いません。そのため、急遽おば様が古着屋でめぼしいものを見繕うことになりました。本当に申し訳ないです……。ちなみに、お金のことを聞いたら「後で払ってくれればいいよ」と笑顔で言いました。とびっきりの笑顔で。


 さて、衣服の確保が出来た私が次に問題としたのが住居と食事です。帰る方法を渋々探したいところではありますが、もう日は暮れてそれどころではありません。ですが、この問題はすぐに解決しました。


 おば様は大家さんもやっていて、私にも部屋を貸してくれたのです。


 要するに、『帰る方法が見つかるまで、働いて家賃と借金を返しなさい』ということでした。


 それから3か月――。


 私は今日もこの世界で生きております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ