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反省会

すいません。久しぶりの投稿です。

 よお、お前ら。

 俺は異形ばかりが通う学園の高等部生徒会副会長にして怪談屋をやっている灯篭崎万夜って者だ。


「で、言い訳はあるか? 会長に副会長?」


 今、俺は幼なじみの悪友と一緒に、生徒会室の床に正座していた。足が冷たいし痛いし痺れてきたが、そう言おうものなら本物の電撃を浴びることになるので黙っておこう。


「俺と魔女と紅に、何か言うことはないか?」


 目の前には、物凄くにこにこしている生徒会書記、稲妻鉄人。笑顔だが、戦慄の笑顔だった。というか、目が全く笑っていない。怒りのあまり体から紫電が迸っている。


 何で怒られているのかって?


 生徒会長と一緒に入学式の舞台裏で暴れてしまったのです。そして、書記と会計と庶務と教員が命がけで止めてくれました。んで、書記にこってり絞られています。


 てへ。


「「いえ、何の申し開きもございません」」


 土下座をすると、深い溜め息が聞こえてきた。どうやら呆れ果てているようだ。


「アンタら、マジで勘弁してくれよ……。会長だけが暴走すれば怒られるのは副会長だけど、セットで暴れられたら俺に責任が来るんだからよ」


 心底腹立たしそうに独白する書記くん。ご苦労様だ。あーあ、さっさと終わらないかな。美空の想い人を探しに行きたいんだけどなー。なんだかんだで興味あるし。


「おい副会長」

「ん?」

「その顔は反省の色がねえだろうてめえ!」

「ごふ!」


 俺の心中の見抜いた俺の腹にキックをかます。


「ちょ、お、おま……いきなり女子の腹を蹴る奴がいるか?」

「アンタに女子を名乗る権利はねえ!」


 とても人間とは思えない台詞だな。こいつは半分くらい人間捨てているけど。それは俺もだけど。俺とこいつでは『人間を捨てる』の意味合いが違うけど。


 あ、俺、こんな言葉遣いで一人称に『俺』を使っているけど、花の高校三年生だ。こう見えて、学園の美女トップスリーの一人と言われているらしいよ。


 残る二人は雪女と吸血鬼。まあ、片方は学園上位の怪物な彼氏持ちで、もう片方には悪魔でシスコンな兄がいるから、学園内の男子は手を出せないが。


 ……そういえば、俺って美人美人ってよく言われるけど、告白された経験ってないんだけな。恋愛にはあんまり興味ないけど、全くないってのも変な感じだ。俺、美人って言われているはずなのに。世辞を言わない奴からの情報だから間違いない。


「アンタみたいな残念美人に美人を自称する権利はねえ!」

「誰が残念美人だ!」

「自覚がねえのか!?」


 本気で驚く稲妻。本当に失礼な奴だな。


 ガッシャン!


 陶器の割れた音がしたのでそちらを見ると、会計の古林時世の足元に粉々になったティーポットが転がっていた。

 どうやら彼女が落としたらしい。


「そ、そんな……副会長に、自分が残念だって自覚がないなんて……今世紀最大の衝撃的事実です……」

「失礼過ぎるぞお前!」


 震えながら驚愕している古林会計。なんて失礼なんだ。こういう時は庶務を見よう。あいつはいつだって無表情の無感情。

 俺が本当に残念美人だったとして、俺にその自覚がない程度であいつは顔色一つ変えやしないだろう……


「…………っ」


 む、無表情ながらも、目を大きく見開いているだと……? 何だ、それは。もしかして、お前まで驚いているのか?


「……予想外です」

「だあー! てめえまでそんなこと言うのかよ!」


 俺はそんなに残念美人かよ!


「いえ、そちらではなく、副会長が美人であることが」

「てめえ、ぶっ殺すぞ」

「残念なのは前々から知っていました」

「よし。一万回殺す。そこに直れ」

「嫌です」

「あ、こら待て! どこに行く狭間てめえ!」

「アンタこそどこに行く気だ、こら! 話はまだ終わってねえぞ! そして、紅は自分のクラスに戻ったんだよ! あいつ一年だから新しいクラスのメンバー大きく変わるから、自己紹介とかあんだよ!」


 あー、そっか。


 そういえば、狭間と美空って同じクラスなんだっけ? あいつ、上手い具合に美空から想い人の情報を取れないかな。


「俺達もそろそろ自分のクラスに行かないと教員に怒られてしまうぞ」

「心配ない。許可はもらってある。けど、……おい、魔女」

「何よ」


 わざとらしいくらいぶっきらぼうな態度の稲妻に、必要以上に素っ気なく答える古林。


「この二人への説教は俺がやるから、お前はクラスに戻ってろ。二人とも遅れると担任がうるせえ」

「そう? じゃあ、お言葉に甘えて。……言っておくけど、お礼は言わないからね!」

「てめえ如きから感謝なんて求めるか」

「……っ! あっそ!」


 激しく憤慨しながら生徒会室を後にする古林。


 お前ら、売り言葉に買い言葉過ぎるだろ。


「さて。時世も紅もいなくなったことだし……」

「お前、本人いないと普通に本名で呼ぶんだな。しかも下の」

「ひゅー」

「細かいことに食いついてんじゃねえよ! この悪趣味ども!」


 稲妻は俺と虚空の頭を叩いた。パコーンと小気味いい音がした。


「ちったあ反省しろ、このボケどもが! つうか、あれだ。一体全体、会長さんは何で暴れてんだよ。何がアンタをそんなに暴走させてんだよ」

「ん? 言ってなかったか?」

「聞いてねえ」


 そう言われてみれば言ってなかったな。紅は知っているはずだから、あいつに聞いたと思ったんだが。考えてみれば、あいつが何か言うはずないか。稲妻も知らないってことは古林も知らないか。


「今回の目的は、害虫退治だ」

「はあ? 害虫だ?」


 虚空の言葉に首を傾げる稲妻。まあ、それだけで分かるはずないよな。


「俺の妹のことは知っているな?」

「ええ。美空ちゃんでしょ? そりゃ知ってますよ。俺はあの子と古林の買い物に何度も付き合ったことがあるんですから。まあ、あの子何でかいつの間にか消えて、先に帰ってんですけど」


 うわあ、魂胆が見え見えだぞ、美空。きっと近くの物陰からデバガメしてんだろうな。


 だが、虚空はそのことには触れず、自分の話を進める。きっと興味の欠片もねえんだろうな。男子が美空と一緒に買い物しているって聞いても、稲妻は無害な部類だろう。どっかの魔女が大好きだから。


「俺の美空を誑かす不届き者が、今度の一年生にいるらしいんだよ。編入生の誰からしいんだが。よって、今回の全ての責任は本来、その害虫にあるんだ。分かってくれたか、稲妻書記」

「…………は?」


 稲妻の表情が変わった。いや、呆れるとか怒るとかじゃなくて、ただただ不思議そうにしていた。


「あー、もしかして会長、あいつのこと知らないの?」

「あいつ?」

「いや、俺も美空ちゃんから話を聞いただけなんだけど、気になる神器使いがいるんだと」


 神器。

 それは所謂、『最強に属する武器や防具』の総称だ。レア中のレア。探して見つけられる物ではない。


 伝説上の武器の分類だが、『神器』と『神器以外の武器』では性能に天地ほどの差がある。

 

 有名所で言えば、神の子を殺した『ロンギヌスの槍』や最強の雷神が愛用した鉄槌『ミョルニル』、かの大国の王が使用した『ソロモンの指輪』なんかがある。日本で言えば、『草薙の剣』を含む『三種の神器』があるな。


 ただ、伝説の聖剣『エクスカリバー』や最悪の龍殺剣『グラム』なんかは神器には含まれていない。基準は専門家にしか分からん。


 だが、大半の所有者はその絶大な能力に飲まれて、悲惨な最期を告げる。特に、悪神の部類が使っていた武器は『呪い』が込められている。反対に、善神の神器は所有者に不満を持つと、所有者の肉体を消し去るほど我が儘な武器が多い。


「……確か、編入生に神器使いが二人いたな」


 ケルト神話の光神ルーの『アンスウェラー』の使い手と、北欧神話の悪神ロキの『レーヴァティン』の使い手。


 片方は某妖怪の勢力を全滅させたと言うし、もう片方は龍神を力で屈服させたと聞いた。有り得ないだろう、どっちも。桁外れのイカれた野郎だ。


「だとすると、このどっちかだな……何でこれまで言わなかったんだよ」

「聞いてねえからだよ」

「そうだった」


 隣の虚空をちらりと見る。


「なるほど……その神器遣いのどちらかが俺を可愛い可愛い美空に毒牙を掛けようとしているのか……!」


 テンション上がっているようだ。


「先に言っておくが、程々にな」

「ああ……! 程々に殺してやる!」


 駄目だ。人の話を訊いてないぞ、こいつ。


「アンタら……いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおお!」


 激情して体中に紫電を走らせる稲妻。


「いや、俺関係ないぞ!?」


 だが、俺の制止虚しく、稲妻は特大の電撃を放った。


 本当、虚空と関わると碌なことがない。




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