襲撃、紅い狂気の招待状
どうも、東方転妹録最新話です!!
さて、今回は前話から一ヶ月経った所で始まりますよ!
……そして遂に、フランことオーエンが動きます。
フランという名を捨て、ことごとくフランを示すモノを破壊したオーエン。
……ですが、まだまだフランを示すモノは存在します。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー1ヶ月後、紅魔館。
ーーーーside さとり
もうすぐ空が夜の闇に包まれだす時間になった。
それに気付いた私は書類整理をやめて、厨房で料理を作ってからこいしの部屋に行く。
……そしてこいしの部屋に着くと、私は静かに部屋に入っていった…………。
「……こいし、夕食を持ってきましたよ。
少しでも良いから食べませんか?」
「…………お腹すいてないから、いらない……」
私の期待とは違う返事に、私は静かに息を吐いた。
……あの日紅魔館に戻った時、一番衝撃を受けていたのはこいしだった。
八雲紫のスキマで帰り着くなり、私達の目を惹いた焼け落ちたフランの部屋。
さらには他の部屋も散々荒らされていて、フランと所縁のある物は全て焼かれるか壊されていた。
写真やフランがくれたプレゼント、厨房にあるフラン愛用のティーカップに至るまで、全て…………。
メイド達曰く、あの日の前の日の深夜に誰かが次々と火を放っていたらしい。
音がする方へ急いで向かったが辿り着く頃にはもぬけの殻で、また別の場所から聞こえる音に反応して現場に向かうというのを繰り返したようだ。
……その誰かは、確実にフランなのだろう。
「……ごめんねお姉ちゃん。
私、本当に我が儘で…………」
「……あの時のことを反省してるなら、今は少しでも元気になって一緒にフランを探しましょう?
ルーミアもきっと受け入れてくれるから……!」
「……それは、無理だよ。
ルーミアはもう私を許してはくれないし、それに、フランと合わせる顔も……ないもん…………」
……そしてこれが、フランがいなくなった紅魔館の現状だ。
こいしはあの時のことを反省はしたものの、自分のやってしまったことを嘆きながら完全に塞ぎこんでしまった。
ルーミアは一人でひたすらフランを探していて、今では数日に一回寝るために帰ってくる程度。
その上レミリアと私以外とは話さなくなってしまっている。
レミリアも日傘を片手にずっとフランに所縁のある所を訪ね続け、精神的な疲れからか口数がめっきり減ってしまった。
玉座に座って溜め息を吐く姿は、見ていてとても悲しい。
そして私はそんな紅魔館の面々を気がかりに思いつつも、レミリアの代わりに紅魔館を運営しているために皆と十分な話が出来ていない。
時折私達を心配する美鈴が栄養になるものを作ってくれてはいるが、まさに焼け石に水といったものだった…………。
「……分かりました、こいしに無理は言いません。
ですが夕食はここに置いておきますから、しっかり食べてくださいね?
……それと、一歩を踏み出さないと何も変わりませんよ、こいし…………」
「……………………」
悲観的になってしまっているこいしに、せめて夕食は食べるようにいってから部屋を出る。
……最後に一言を添えて。
部屋を出た私はそのまま書斎に戻った。
食事をしている暇はない。
私が整理している書類の中にはフラン捜索に関する情報もあるから、少しでも早く目を通したいからだ。
……しかしフランに関する情報と言っても、ここにはいない、あそこにもいないといったものでしかないが。
「……後、十三枚ですか。
縁起の悪い、不吉な数ですね……」
いつか紅魔館にある本の中に、十三という数字は『裏切り』を意味する数字だと書かれているのを見たことがある。
あの時はどうも思わなかったが、今の状況ではそれがまるで『フランが裏切る』と言われているようで、私には酷く不快に感じられた……。
「……はぁっ…………数を減らせば良いだけですね。
早く取り掛かってしまいましょう」
溜め息を吐きつつ、重ねられた書類の一番上から一枚だけ取る。
それに私は目を通すと、前にレミリアに取り寄せてもらった筆で改善点を書き込み、下に名前を書き記して次の書類に取り掛かる。
……そして残り十枚となり、早速四枚目に取り掛かろうとした時、私は四枚目の書類の隅に赤い文字を見つけた。
「……これは…………?
えっと……『U.N.オーエン』…………?」
「それは私の新しい名前。
そして一人目は貴女だよ、古明地さとり」
「っ!!!? あ、フラッ!!!!!?」
赤い文字で書かれた言葉を読み上げると、ひどく懐かしく感じる声が背後から聞こえてくる。
そして咄嗟に後ろに振り向いた時に私の目に写ったのは…………いつも着ていた物とは違う服装をしたフランが、私に掴み掛かりながら私の首筋に噛み付く姿だった……。
ーーーーー同刻、氷精の湖。
ーーーーside ルーミア
波の無い、静かな湖面に小石を投げる。
投げた小石は一回、二回、三回と水の上を跳ね、四回目で水の中に沈んでいった……。
「……フラン、今、どこにいるの……?」
あの日、フランがいなくなり私がこいしに怒りをぶつけたあの時から、私の口調は戻っていない。
……あの口調は私の素の口調だ。
今の口調の方がまともに聞こえるけど、これは私が誰かに自分の気持ちを知られたくない時に使う口調で、例えば、本気を出して戦う時にこの口調を使ったりしている。
そして、今私がこの口調を使っている理由は、『フランが目の前にいないから』だ。
……フランがいなくなったあの日、裏切られたと思ったのはなにもこいしだけではない。
私も、こいしに対して裏切られたと思ったのだ。
共にフランを支えていける存在…………そう信じていたこいしが、フランを拒絶したことを私は受け入れきれなかった……。
……そして、だからこそ私はフラン以外を信じることを恐れた。
御義姉様とさとりは最初からフランを信じ続けているけど、それでも今の私はフラン以外の誰かを受け入れるのが恐怖にしか感じなかったのだ……。
「…………帰ろう、このままだと気持ちが暗くなるだけだ…………」
後ろ向きに考えてしまうのは疲れと寝不足のせいだとし、私は闇の翼を広げ紅魔館へ飛ぶ。
するとすぐに、窓から一室一室の様子が見えるくらい紅魔館に近づいた。
どの窓からも明かりが漏れていて、紅魔館からは美味しそうな匂いが漂っている……。
「そっか、もう夕食の時間か……。
……んっ? あそこは、書斎の窓……何か、窓に付いてる?」
飛び続けながら目を凝らし、書斎の窓に付いてる物を確かめる。
……そしてようやく窓に付いてる物がはっきり見えるようになった時、私は思わず目を疑った。
「……あれは、血!!!?
最近書斎を使ってるのは……さとり!!!!」
書斎の窓に付いていた物、それは飛び散った血だった。
それを認めた私は一気に加速し、書斎の窓の側に近寄る。
運が良かったのか、窓の鍵が空いているのは硝子越しに確認できた。
更に、窓の奥には…………。
「さ、さとりぃぃ!!!!」
ーーーガタンッ!!!!!!
「さとりっ、さとりっ!!!?」
「…………う、うぁ……」
……血溜まりに倒れ込んでいるさとり。
慌てて窓を開けて中に飛び込みさとりの傍に寄ると、さとりの首筋と両肩から血が流れ出ていた。
「咬み傷と、引っ掻き傷?
それにしても深すぎる……それに、妖力まで少ない……!!
待っててさとり、今妖力を分けるから!!!!」
怪我の状態から見て、恐らく正面から両肩を強く掴まれて首におもいっきり噛み付かれたようだ。
首には鋭い歯の跡、両肩にはそれぞれ五ヶ所ずつ細長い傷がある。
ただ、妖力まで減っているのが少し気掛かりだが……。
「……る…………み、あ…………ん……」
「えっ、何て言っているのさとり?
……妖力を分けて、怪我も治っているのに喋れないってことは…………。
……っ、さとり、ごめん!!」
怪我は跡形も無くなったのに喋れないさとり。
その状態を見ていてふと閃いた私は、さとりを俯けにしておもいっきり背中を叩いた。
ーーーバンッ!!!!!!
「ッ、ガハッ!!!! ゴブ、カハァ!!!!!!」
ーーービチャッ、ビシャア!!!!
背中をおもいっきり叩くと、血の塊を吐き出すさとり。
……どうやら私が思った通り咽に血が詰まっていたようだ。
大量の血が床に広がる血溜まりに追加される。
「ヒュー……ヒュー…………ミア……ン、が…………」
「さとり、落ち着くのだー!!
一度息を整えて!!!!」
「……ヒュー……そ、こ…………ラン……ヒュー…………しょ、る……い…………」
息も絶え絶えに、必死に何かを伝えようとするさとり。
私が素の口調に一瞬戻りながら落ち着かせようとするも、さとりは床に落ちている一枚の書類を指差しながら意識を失ってしまった……。
「良かった、脈はある……!!
……よいしょ、っと」
意識を失ったさとりの脈を確かめた後、横抱きに抱えあげて近くのソファーにさとりを寝かせる。
……そして、私はさとりが指差していた書類に向き直った。
「……確か、あれだったな。
一体、あの書類に何が……?」
さとりが必死に私に見せようとした書類。
それが一体何なのかを疑問に思いながら、私は書類を拾い上げた。
……一見普通の書類だけど、どこかに変な所でも…………ん、これは?
「……『U.N.オーエン』?
これは、一体……?」
赤い文字で書かれた『U.N.オーエン』という言葉。
それが何を意味するか分からなかったが、この言葉が何かのメッセージであり、匂いからどうやら血で書かれたというのは分かった。
……これは、何かの名前だろうか?
聞いたこともない名前だけど…………しょうがない、さとりが目覚めてから聞くとしよう。
「さて、流石に血を片付けたいけどさとりを一人には出来ないし……。
……こいしに、さとりを頼むべき、か…………」
正直、こいしと話すのは怖い。
さとりや御義姉様からこいしが反省しているとは度々聞いていたから怒りはもうないけど、どうしてもまた裏切るのではないかと疑いを持ってしまうのだ。
……だが、この状況ではそうはいかない。
私の我が儘よりさとりを優先しなくてはいけないからだ。
もちろん、それは義務ではなく、私の意思である。
「とりあえずこの書類も一緒に持って行こう……。
こいしなら、何か分かるかもしれないし。
……掃除は、メイドに任せるか」
さとりの妹であるこいしなら、さとりが伝えようとしたことも分かるかもしれない。
そんな願望を持ちながら私はさとりを抱えあげ、書斎を出たのだった……。
ーーーーー
以上、紅魔館の窮地とオーエンの襲撃回でした!
……1人目はさとりでしたね。
次は誰が狙われるのか?
そしてこいしとルーミアはどうなるのか?
それではまた次回にてお会いしましょう!




