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東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第2章 ~雨降って、地固まるか?~
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闇の怒りと、散りゆくモノ

どうも、東方転妹録最新話です!




……えー、とりあえず一言。

紅魔館組、崩壊。




それでは楽しんでいってください!

ゆっくりしていってね♪


ーーーーー同刻、大部屋。

ーーーーside ルーミア



……冷たい空気を肌に感じて、私は目を覚ました。

何故か鼓動が早い。

能力が、本能が疼く…………誰かが闇に呑まれた、そんな気がした。



「…………朝、なのかー……」



朝、私の苦手な日の光が最も闇を貫く時間。

そして、私の一番大好きなフランと出会える時間。

……縁側と面する襖の隙間から射し込む光を重く感じながら、それでも私は今日もフランに会うために起き上がった。



「フランー……こいしー……?

……あれっ、御義姉様と、さとりもいないのだー…………?」



辺りを見渡しても、一番見慣れた顔触れは美鈴しかいない。

一瞬、皆はもう起きて軽い朝食でも食べているのかと思ったけど、匂いもなければ音もしない。

一抹の不安を感じた私は、立ち上がろうとして畳に手を着く。

……すると、畳ではない何かに手が触れた。



「んっ?……これは、こいしの帽子なのだー?」



昨日の夜の記憶はないけど、私の下敷きになっていたということは私がこいしに何かをしたのだろう。

普段、フランやこいしは何故か帽子を外すことが少ないからだ。



「……なんだろう、帽子から変な感じがするのかー…………」



持ち物は離れていても持ち主の気を受けやすい。

これはいつか美鈴が言っていたことだ。

そして、私は今、帽子から変な感じがしている。

……まるで闇に包まれかけているような、本能的な高揚感。

でも私の理性はその感覚を嫌なものとして捉えている。

普段は同じ状況なら理性も高揚するのに、今はしないという変な感じがするのだ。



「……こいしに、何かあったのかー…………?」



こういったのは初めてだけど、私にはこれが何を意味するのか直感で分かった。

私は闇なら基本的に全て高揚感を得られるけど、理性が否定するということはそれは私が望まない闇だということ。

……つまりそれがこいしの帽子から感じられたということは、こいしが闇に呑まれるほどの何かがあったということだ。



「……急がないといけないのだー!

こいしを、助けなきゃ……!!」



そう口にすると、私は背中に一対の闇の翼を作り出す。

そして襖を開け縁側に出ると、私はこいしの帽子から発せられる闇の気配と同じ気配を辿りながら空へ飛び出した。



「あれは、足跡なのかー……。

……闇のある方向と、同じ方に進んでるのだー…………」



空からふと地面に目をやると、一直線に進んでいる沢山の足跡を見つけた。

これ幸いにと私は闇の気配を追うのをやめて、足跡に沿って加速する。

……単なる気配を辿るより確かな道しるべを頼りに進んだ方が良い。

それが私の考えだ。



「あれは、桜…………いや、妖怪なのだー……!」



足跡の先に現れた大きな桜。

それを見た時、初めは単なる桜かと思ったけど、私はすぐにその考えを改めた。

……妖力こそ出してはいないが、普通の桜なら出すはずのない闇がにじみ出ているからだ。

しかも、尋常じゃない濃度の闇だ。

あれを少しでも受ければ良くて落ち込む、悪くて精神的に死ぬだろう。

もちろん、宵闇の妖怪である私には無意味だが。


そうして妖怪桜を見て飛んでいると、その妖怪桜の足元に見慣れた三人の姿が見えた。

……だが、しかし…………。



「えっ…………っ!?

な、何なのこの闇は!!!?」



三人の内の一人、こいしを見た途端、私に流れ込んでくるこいしの闇。

先ほどまで帽子から伝わるこいしの闇に深く触れていたせいだろうか、こいし本人から伝わってくる闇は簡単に私に流れ込み、止まることを知らなかった……。



『……フラン、その前世の記憶が未来の物でこの世界の物ではないって、どうして分かるの?

どうして、そう思うの……?』


『その、フランが前にいた世界がこの世界とは違うっていうのは分かったけど、未来っていうのは?

今の話なら、今私達がこうしている瞬間を遊びにしてるっていう風に思えるんだけど……』



私の意識に流れ込むこいしの闇。

その闇からこいしの昨晩の記憶が伝わってくる。

……正直に言えば、フランが転生者だということには驚いた。

しかも、異世界の未来から来たというのだから……。


……そして、こいしの闇の原因となった記憶は更に私に流れ込む。



『……フランドール、貴女は全て分かって私に、私達に近付いたの?

私達を、騙し続けていたの?』


『……返して、私の時間と心を返してよ!!』


『私の名前を呼ぶな!!!!』



……フランの秘密に耐えられなかったこいしの心。

その重圧に負けたこいしの心は疑心暗鬼となり、フランを責め立てていた。



『私は、私は心を見て貰えたって思ってたのに……!!

誰も私の心を見てない中で、ようやく救いの光が見えたと思ってたのに!!!!』


『……返して…………私の『フラン』を返してよ。

私が求めた、私が愛したあの『フラン』を返してよ!!!!』



……なんと、なんと馬鹿馬鹿しい話だろうか?

全てを知っていて近付いてきたフランは、自分の求めたフランとは違う?

こいしは何を言っている、『全てを知っていて近付いてきたフラン』こそ、私達が求めたフランそのものではないか!

私の能力が効かないフランの闇を知ることは出来ない、しかしフランが抱えていた『全てを知っている転生者』という秘密がフランを確実に苦しめていたことは、秘密の内容は分からなかったけどなんとなく感じていた。

ここ最近の様子を見れば良く分かるし、何よりフランは闇を恐れていたから……。


……あの日、口では光も闇も受け入れると言ってはいたが、フランはあの時はまだ闇を受け入れてなかった。

自分の秘密という闇から逃げ続けていたからだ。

……しかし一週間悩み抜き、昨晩こいしと対面したフランはようやく秘密という闇と向き合い、潔く受け入れた。

……だというのに…………!!



『…………裏切られた!

フランに、フランドールに裏切られた!!!!』








瞬間、私はダーインスレイヴを喚び出しながらこいし目掛けて飛び掛かった。





「こいしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!」


「「っ!!!!!?」」


「なっ、『スピア・ザ・グングニル』!!!!!!

……くっ、何をしているのルーミア!!!!!!」



私の叫び声にいち早く反応した御義姉様が、日傘を持つ手と反対の手で持つグングニルでダーインスレイヴを受け止める。

だが、私は止まらなかった。

……グングニルの持ち手でダーインスレイヴの切っ先を受け止める御義姉様に、零距離で弾幕を放つ。

そして零距離からの弾幕をくらい一瞬のけ反る御義姉様を、今度は押しきるようにダーインスレイヴに力を込め体勢を崩した瞬間に足払いをして、ダーインスレイヴごと御義姉様を地面に押し倒した。



「くっ、あああっ!!!?」


「レミリア!!!?

『想起、スピア・ザ・グングニル』!!!!!!」



押し倒した御義姉様をダーインスレイヴの上から踏み越え、私はこいしに迫ろうとする。

しかし、今度は同じようにグングニルを喚び出したさとりが間に飛び込んできた。

……私の胴体目掛けて突きを放ってくるさとり。

御義姉様より遅いそれを、私は左手で弾きながら右手でさとりを横に凪ぎ払う。

それをもろにくらったさとりは声も無く横に吹き飛び、遂に私とこいしの間に立つものはいなくなった……。



「こいし、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


「ル、ルーミ……うぁぁ!!!?」



私に何かを言おうとするのを遮りながら、私はこいしの首に両手をかけて押し倒し、倒れたこいしの上に馬乗りになった。

そして、私の感情が訴えるままに両手に力を込める……。



「誰が、誰が裏切ったって!!!?

……フランは、誰も裏切ってなんかない!!!!!!

裏切ったのは貴様だ、こいし!!!!!!!!」


「かひゅっ……か、はっ…………!!!?」



私の思いを言葉と暴力にしてこいしに叩き付ける。

……だが次の瞬間、私の両手は切り飛ばされ、私自身も前に吹き飛ばされた。



「大丈夫こいし!!!?

息は出来ますか!!!!!?」


「無理をしないでそのまま横になっていなさい!!!!

ルーミアとは私が話をするわ!!!!!!」



必死に呼吸をしていて声を出せないこいしにさとりが寄り添い、その二人と私の間に御義姉様がこちらを見ながら立つ。

しかし、その一瞬の間に私は両手を再生し御義姉様に向き直っていた……。



「……ルーミア、いきなりこれはないんじゃない?」


「そんなこと知るか!!!!!!

フランの苦しみを考えずに自分の我が儘だけを通したこいしを、私は許せない!!!!!!」



最早普段の口調すら消え去り、怒りのままに叫ぶ私。

……そうだ、こいしは何故フランの苦しみを考えなかったのか。

フランが裏切ったと言うなら、こいしはフランが全てを知っていると分かっていても始めから受け入れられたとでも言うのか?


……いや、絶対に無理だ。

こいしは自分から求めることはしても他人を受け入れられないのは昨晩の記憶が証明している。



「……なるほど、ルーミアはこいしの心の闇から昨晩何があったのかを知ったのですね」


「それを読み取れたということは、さとりも昨晩の事を見ることが出来たということね……。

……フランのことなのに、私だけ見れていないのは悔しいわ…………!」



一人だけ情報が足らな過ぎることを悔しがる御義姉様。

しかし、御義姉様はこいしから話だけは聞けているようだ。

フランを失うことを恐れる心の闇から、それを読み取ることは出来た。



「まぁ、今はそれは置いておきましょう。

それとルーミアも今は落ち着きなさい、フランを探すのが優先よ。

……こいし、今の貴女には厳しいことを聞くかもしれないけれど…………貴女、フランを追うことが出来るのかしら?」


「……………………」


「……こいし…………」


「……………ちっ!」



御義姉様の質問に、黙ったまま俯き続けるこいし。

それをさとりは心配そうに見つめ、私は答えられないこいしに苛立って舌打ちをした。

……そして、しばらくして御義姉様が再び口を開く。



「…………そう、分かったわ。

それじゃあさとり、私とルーミアがフランを探している間、こいしと共に紅魔館で留守を頼めるかしら?

ルーミアは今言ったように私とフランを探すわよ」


「……はい、分かりました。

留守はしっかりと守りますね」


「言われなくても全力で探すさ!!」


「……………………」



こいしの沈黙から心中を悟り、すぐに頭の中を切り替えて私とさとりに指示を出す御義姉様。

さとりは御義姉様の目を見てしっかりと頷き、私も苛立ったまま返事をした。

……ただ、こいしだけは黙ったままだったが…………。



「さて、役割も決まったし一度白玉楼に戻りましょうか。

詳しい話はそれからよ」



そう言って一人、日傘を翻しながら白玉楼に歩き出す御義姉様。

私も同時に歩き出し、倒れたままのこいしとすれ違う瞬間に、持っていたこいしの帽子を頭の横に落とす。

そしてさとりが甲斐甲斐しくこいしを気遣う声を背中で聞きながら、私は御義姉様の後を着いていったのだった…………。






ーーーーー

以上、散りゆく絆回でした!




……姉二人はまだ大丈夫なんですけどね。

一つきっかけがあれば、皆堕ちる所まで堕ちそうな状況です。



さて、次回は襲撃回です!


それではまた次回にてお会いしましょう!

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