姉達が見た悪夢と正夢
どうも、東方転妹録最新話です!!
今回は姉二人がメインとなります。
台風の目みたいな回ですね。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー翌朝、白玉楼大部屋。
ーーーーside レミリア
……酷く、悪い夢を見た。
涙を流すフランが、炎の中に消えていく、悪い夢。
私の伸ばす手は届かず、その小さな体は炎に飲まれるのだ。
……しかしそれが、現実に起こるとは…………。
ーーーーー起床。
目が覚めた途端勢いよく飛び起きる私。
冷や汗をかいていることが、どれ程悪い夢だったかを物語っている。
「………………夢、か。
全く、恐ろしい夢を見てしまったわね…………」
呟いた後、ふと周りを見渡してみると他の皆は雑魚寝をしていた。
唯一妖夢という少女だけは布団で寝かされていて、その横に寄り添うように西行寺幽々子が寝ていたが……。
そしてそこまで確認した時、視界の端で突然起き上がった影を見つけた。
「あら、おはようさとり。
……随分息が荒いみたいだけれど、どうしたのかしら?」
「……あっ、おはようございます、レミリア。
少々、夢見が悪かっただけです…………」
「……貴女も夢見が悪かったの?」
「……貴女、『も』、ですか…………?」
私と同じように冷や汗をかいているさとり。
そこから悪夢を見たことは容易に想像できたが、私にはそれ以上に気になることがあった。
「えぇ、私も悪夢を見たわ。
フランが消えるのに手が届かない、酷い夢…………」
「……私も似たようなものですね。
ただ、私の場合は何かを悲しむこいしを心配して駆け寄ろうとしても、辿り着くことが出来ないという夢でしたが…………」
どうやら私とさとりはお互いに妹に関する悪夢を見たようだ。
それを理解した時、私の心はほっとしていた。
酷い悪夢を見たのは、私だけじゃないという事実に……。
……しかし、その安堵はすぐに焦りへと変わることとなる。
「……レミリア、こいしとフランはどこにいるのですか?」
「えっ、フランとこいしならどこかに………………っ!?」
さとりにフランとこいしの所在を聞かれ、どこかに寝ていると言おうとしながら周りを見渡す。
……しかし、フランもこいしも、二人ともどこにも寝ていなかった。
「なっ、二人はどこに……!?」
「落ち着いてくださいレミリア。
悪夢を見たことを引きずっているのは分かりますが、焦っても意味はありませんよ……」
焦る私が文字通り飛び上がりかけると、自分の胸に右手を添えながら私を制止するさとり。
その言葉に反応して飛び上がるのを止めた私に、さとりは右手を胸に添えながら近づいてくる。
……さとりが、ただ右手を胸に添えているだけの動作が、私を落ち着かせてくれている。
これは、一体…………?
「……ありがとうさとり、みっともない姿を晒す所だったわ」
「……ふふっ、見ているのは私だけですから、晒すのも別に良いと思いますが」
さとりが普段通りの調子で放つ一言が、先ほどの悪夢は単なる夢でしかないと思わせてくれる。
……いつも通りの日常は今ここにある、何も、焦らなくて良い…………。
「……ようやく、完全に落ち着いたようですね」
「私の心はお見通し、ってことね。
……まぁそれは置いといて、一応フランとこいしを探しに行きましょうか。
とんでもない所で寝てるかもしれないもの」
少なくとも白玉楼の敷地内にいることは確実なのだから、この程度のことで能力を使う必要もないだろう。
……そして、私は大部屋から廊下に出る。
さとりも私に寄り添う様に着いてきた。
「まずは、どこを探しましょうか?」
「……あの二人だから、早起きをして台所で何か作ってるかもしれませんよ?
匂いはありませんから、生野菜を使った簡単な料理とか……」
まぁ一番最初に考えるのはそれが妥当だろう。
フランもこいしも料理は出来る。
宴会のあった次の日で、まだ全員が起きたわけではないから小腹を満たす程度の軽い食事を作っているかもしれない。
……どうせなら一口ぐらいいただいてしまいましょう。
そうすれば、フランと間接キスが……!
「……レミリア、一口食べた後すぐに私に振り返ってください。
私がレミリアの唇をいただきますから!」
「振り向く瞬間にグングニルをかますわよ?」
朝からいきなりさとりに食われかけそうになる私。
それをいなそうと声をあげるけれど、さとりはさらりと私の文句を流す……。
……そんなやり取りをしていると、私達は台所に着いた。
しかし、台所の中を覗いても誰もいない。
「あら、台所は違ったわね。
となると、次は縁側かしら?」
「……そうですね。
きっと何かの拍子に、外で飲んだくれてしまったのでしょう。
ところで、キスはどうなりますか?」
「……分かったから、後でしてあげるから今は我慢しなさい…………」
「よしっ、約束ですよレミリア!」
軽く脱力しながらも次は縁側に行くことにした私は、さとりと共に来た道を戻っていく。
そして大部屋まで戻ると、今度は日傘を取り出してから大部屋を通り抜けて縁側に出た。
「…………いないわね」
「……いえ、レミリア、あそこに足跡がありますよ」
「足跡…………?
あっ、これのことね。
……数は二人分みたいだから、フランとこいしで間違いないわ!」
縁側から降りた位置から桜並木の方へと続いている二人分の足跡。
それを見つけた途端に言葉に力が入るのは、やはり心のどこかで先ほどの事が気になってしまっているのだろう。
……そうやって自己分析をしながら、私は日傘をさして庭に降り立つ。
そしてすぐに後ろを振り向き、忘れることなくさとりをエスコートする。
「……ありがとうございます。
でも、レミリアは淑女なのでは……?」
「私は淑女であると同時に紅魔館の絶対的な当主よ?
淑女としてはあれだけど、当主としては当然だわ」
……まぁ、今までフランをリードするかったのが多かったっていうのもあるけれど。
それにさとりって普段は控え目なんだもの、リードしたくなる時だってあるわ。
「……普段は、という部分が非常に気になるんですが?」
「そういうことを気にしてたら立派な淑女になれないわよ?
何時でもおおらかでいなさいな」
「……上手く流されましたか」
そうして再びさとりと戯れながら、私は足跡を追って歩く。
……そうしてどれほど歩いただろうか、段々と私とさとりの話の種が尽き始めた頃、前方に並みの桜より遥かに大きい桜が見え始めた。
「……なんて立派な桜なのかしら。
よくここまで大きく育ったわね」
「……大きいだけじゃありません。
あの桜には、何か意思のようなものがあります……」
さとりはあの大きな桜に意思があるという。
確かに『生きている』ならあそこまで育つのも納得できる。
生きる意思というのは時に想像の範疇を越えることがあるからだ。
……私は大きな桜を見上げていた視線を、ゆっくりと根本に下げていく。
そして根本まで視線が下がった時、私は桜の花びらに埋もれる見慣れた姿を見つけた…………。
「あら、あれは……こいし?」
「寝ているのでしょうか……?」
桜の花びらより美しい輝きを放つ銀髪が地面に広がり、独特な緑色の服が花びらの隙間から姿を覗かせている。
どこか幻想的な雰囲気を漂わせるその光景に、どこか気後れしながらこいしに近付いていくと…………泣いているような、しゃくりあげる声が聞こえてきた……。
「……ヒクッ…………グス…………」
「こいし?……こいし!?」
「あっ、待ちなさいさとり!!」
……どこからか聞こえてくる泣き声は、こいしが泣く声だった。
そしてそれを認めたさとりはこいしの名を呼びながら全力で駆け出す。
私もさとりに続いて駆け出したが…………この時私は、なんだか嫌な予感がしていた。
「こいし、どうしたのこいし!!!?」
「落ち着きなさいさとり!!
……こいし、ゆっくりで良いから、何があったのか話してもらえるかしら……?」
驚きと心配のあまり取り乱すさとりを諌め、出来るだけ優しく、静かにこいしに何をあったのか尋ねる。
……しかし、次にこいしが発した言葉は、私を酷く動揺させる言葉だった…………。
「……うぅ……ヒクッ…………らぎ……た……」
「えっ? 今何と言ったの?」
「…………裏切られた!
フランに、フランドールに裏切られた!!!!」
「「………………えっ?」」
ーーーーー
以上、姉達の悪夢回でした!
さて、こいしと合流した二人ですが、次回はルーミアも合流します!
……ただ、大荒れになるでしょうが。
それではまた次回にてお会いしましょう!




