そして誰もいなくなった
どうも、東方転妹録最新話です!!
……えー、活動報告を見てくれた方は既に御存知かと思いますが、本作は大型シリアスコーナーに突入しました。
とにかくダークです、狂います。
苦手な方は、申し訳ありませんがお控えください。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーーside こいし
「……ううん、違うのこいし……!
私が、私が持ってる記憶は……未来の、その上この世界ではないかもしれない世界での記憶なの!!」
「…………えっ……?」
……今、フランは何て言ったの?
未来の、この世界ではない世界の記憶?
それは、どうしてこの世界ではないって分かるの?
どうして、未来って分かるの……?
「……フラン、その前世の記憶が未来の物でこの世界の物ではないって、どうして分かるの?
どうして、そう思うの……?」
前世の記憶があることは別に気にしない……でも、その記憶が異世界の物だとしたらどうして未来等と比べられるのだろう?
世界が違うなら、未来が同じわけじゃないのに……。
「……なんて言えば良いかな…………。
その、ね……前世の私のいた世界には、今いるこの世界の事を遊びにした道具があったの。
その道具を作った時の時間と同じ時間の流れで物語を作った、ね……」
つまり、今私達がこうしている風景を遊びにした道具が前の世界にはあったから、この世界が異世界だって分かったってことかな?
でも、それじゃあ未来っていうのは分からないよね……?
「その、フランが前にいた世界がこの世界とは違うっていうのは分かったけど、未来っていうのは?
今の話なら、今私達がこうしている瞬間を遊びにしてるっていう風に思えるんだけど……」
「……そのおもちゃの中の物語はね、この世界で言うなら今から約四百年後の話なの。
だから、その道具を作った時間は未来の時間だって思うんだ……」
約、四百年後…………?
どうしてそんな時間まで…………そっか、そういうことだったんだね……。
一つの確信に至った時、先ほどまで心地よく感じていた酔いが一気に覚めていく。
……そして、それと同時に想いが砕けた気もした。
「……ねぇフラン、今のでフランが言ってることは正しいって分かったよ。
でも、一つだけ聞いてもいいかな?」
「う、うん……良いよ」
自分でも自分の顔が怖い表情になっているのが分かる。
でも、私にはどうにもできなかった。
私の心を満たしていた思いは一つ…………『裏切られた』、ただそれだけで満たされてしまっていたから……。
……そして、私は踏み越えてはならない一線を越えてしまった。
「……フランドール、貴女は全て分かって私に、私達に近付いたの?
私達を、騙し続けていたの?」
「………………っ!!」
私のした質問に、フランドールは表情を固まらせる。
それを見た私は落胆しながら俯いてしまった……。
……固まってしまったということは結局、それを否定できないということだ。
私の心を見てくれたと思っていたのも、本当は、打算的だったということなのだ。
それが本当に悔しくて、私は両手の拳を血がにじむほど強く握りしめた……。
「……返して、私の時間と心を返してよ!!」
「こ、こい「私の名前を呼ぶな!!!!」……」
頭に血が上り、視界がぼんやりとにじみ始める。
その歪んだ視線の先で、私の第三の目が完全に閉じているのが見えた……。
……心が、一気に凍りついていく。
硬く、冷たく、暗闇の中に……。
「私は、私は心を見て貰えたって思ってたのに……!!
誰も私の心を見てない中で、ようやく救いの光が見えたと思ってたのに!!!!」
「……………………」
込み上げる言葉を矢継ぎ早にフランドールにぶつける。
それを、フランドールは黙って聞いていた……。
しかし、今の私にはその行為すら先ほどのことへの肯定に思えてしまい、怒りをひたすらに加速していく。
……そして怒りが頂点に達した時、私は止めの言葉を言い放った…………。
「…………消えて、消えてよ!
早く私の前から消えろ!!!!!!」
「………………っ!!!?」
勢いよく顔を上げ、フランドールの顔を睨み付けながら消えろと言う私。
それを聞いたフランドールは始め驚愕し、段々と泣きそうな表情になりながら俯いていく。
……その姿を見て、一瞬先ほどまでの『フラン』の姿を重ねてしまう。
私が信じ、愛してやまなかった『フラン』の姿を……。
しかし、すぐにその重ねた姿は掻き消え、憎むべき『フランドール』の姿だけが残る。
すると、私の怒りは再び加速を始めた……。
「……返して…………私の『フラン』を返してよ。
私が求めた、私が愛したあの『フラン』を返してよ!!!!」
最早止まることを知らない私の言葉。
やるせない思いや嘆く思いを全てこめて、私の怒りは言葉となってフランドールを穿つ。
……そして遂に、私はその場に泣き崩れてしまった…………。
「……返して……返してよぉ……!!
私の『フラン』を、返してぇ!!!!!!」
「……ごめんね、『フラン』を壊してしまって…………。
……私、消えるね。
そうすれば、もう誰も傷付かないから。
誰も、悲しむことはないから……。
…………さようなら、それと、ありがとう…………」
涙で塞がれた視界の先から、翼が羽ばたく音と共にフランドールの気配が消える。
それを感じた私は、もう何がなんだかわけも分からないまま、ただひたすらに泣き続けていた…………。
ーーーーーside フラン
月が寂しく照らす空を飛び、私は白玉楼の敷地内から出ていく。
目的地も何も無い、ただひたすらに空を飛び続ける。
途中、結界のようなものもあった気がしたけど、力ずくで通り抜けて空を飛び続けた。
「……どこに、行こうかな……」
今の私は、ただ遠くに行くことしか考えていない。
こいしに拒絶された時に私が思ったこと、それは諦めと絶望、そして生きたいという願望だった。
『消えろ』、その言葉に応えるにはどこか遠くに行くか、死ぬしかない。
だけど私の願望が選択を決定付け、私は飛び続けているのだ。
……私の願望が未来への微かな希望か、それとも前世の人間だった頃の名残なのか……それが一体何なのかは私にも分からない。
ただ、今はその願望だけが私の原動力だということは間違いなかった。
「……とりあえず、一度紅魔館に戻って荷物を整理しようかな……。
それじゃあ、久々にあれを使おっと……」
こいしの前から、皆の前から消えるなら、後処理はしっかりとしておかなければならない。
そう考えた私は、能力で空間を破壊して目の前に空間の歪みを作り出す。
そしてその歪みに飛び込むと、私は夜に包まれている紅魔館の門に着いた……。
「明かりはついていない…………ってことはメイド達は寝てるんだね」
誰もいない門を開け玄関まで歩き、私は紅魔館の中へと入る。
静寂に包まれた紅魔館の床は、一歩踏み出すだけで辺りに音を響かせていた。
……そして、私は遂に自分の部屋に辿り着く。
ーーーガチャッ…………。
「……ここともお別れか。
結局、五十年くらいしか使わなかったなぁ……」
まるで初めて入った部屋を品定めするように、私はレーヴァテインを右手に喚び出しながらゆっくりと部屋を見渡す。
そして、最後に机にある一枚の写真へと目を向ける……。
「……御姉様、ルーミア、さとり、こいし…………皆、こんなに笑顔だったのにね……。
……フフッ、いつか紫さんに言ったっけ、『私は壊すことしか出来ないけど、壊さないでいることも出来る』って…………」
だけど、結局はこうなった。
私は壊してしまったのだ。
自らの手で、私の一番大切な物を…………。
そこまで思い至ると、私は思考を振り払うように頭を横に振る。
そしてすぐにレーヴァテインに火を灯し十分に燃え上がり始めた所で、私は燃え上がるレーヴァテインを持って寝台の所まで行く。
……そして私は、躊躇することなく寝台に火を放った…………。
「……これで私は、『フランドール・スカーレット』は消えてなくなる。
今日から私は、『U.N.オーエン』…………」
部屋に燃え広がる炎を見ながら新たな名前を欲した時、私はフランの原曲を思い出した。
狂った旋律だというのに、まとまった音楽。
思い出した途端にそれに憧れを抱いた私は、なんとなく新たな名前を『U.N.オーエン』とすることにしたのだ。
……しかし、この時私は知らなかった。
『U.N.オーエン』という名が、狂気の殺人鬼を意味していたことを……。
「……さぁ、燃えてなくなってしまえ!
全て壊れろ、『フランドール・スカーレット』!!!!
……アハッ、アハハッ、アハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
新たな名前を決めた途端、心の底から湧き上がってきたドロドロした感情。
その感情を吐き出すかのように、私は狂った笑い声をあげる。
『フランドール・スカーレット』の思い出に満ちた部屋が炎に包まれる中で、私は、ひたすら笑い続けた…………。
ーーーーー
ある日の夜、紅き悪魔の館の一室が紅く灯った。それに気付いた侍女が慌てて向かった時、既にその部屋は炎だけで包まれており、それから、その部屋の主を見ることは無かったという…………。
ーーーーー
以上、フラン崩壊&オーエン誕生回でした!
……さぁ、大型シリアスコーナーがスタートしました。
初めにこいしを持ってきた理由、他のヒロインと決定的に違う点、それは約束だけではありませんでしたが…………まさか、ここまでなるとは。
因みに筆者である私は執筆中、キャラになりきったつもりで書き進めています。
それ故に暴走してしまったりするわけですが……。
さて、それではまた次回にてお会いしましょう!




