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東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第2章 ~雨降って、地固まるか?~
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花見と月見酒と記憶

どうも、東方転妹録最新話です!




えっと、なんとかシリアス突入できました!


……なんというか、フランが成長できそうでこの後が少し楽しみな自分がいます。



それでは楽しんでいってください!

ゆっくりしていってね♪

ーーーーーその日の晩、白玉楼大部屋。

ーーーーside こいし



「アハハハハハハッ!!!!

一気にいっちゃうのだー!!」


「ほぉ、中々良い飲みっぷりではないか!!

幽々子様、私も一つよろしいですかな?」


「えぇ、いっちゃいなさい!!

紫が酔い潰れたからその分酒はまだまだあるわ!!」



ここ一週間、フランの様子がおかしかったことに悩んでいた私とルーミアは、鬱憤を晴らすかのごとく酒を浴びるように飲んでいた。

お姉ちゃんと美鈴と紫さん、さらにお姉ちゃんと美鈴から瓶から直接お酒を飲まされた御義姉様と藍さんは既に酔い潰れ、妖夢という少女も夢の国に旅立っている。



「ほら、フランももっと飲みなよ!!

このお酒、甘くて美味しいよ!!」


「……あっ、ありがとね、こいし」


「むぅぅ、フラン、元気が無いよー!?

もっと盛り上がっていこうよ!!」



私も含め、フラン以外の皆が完全に出来上がってる中、フランだけは元気が無い。

幽々子さんが大食いをしたり、藍さんの脱衣騒ぎになったり、美鈴の隠し芸披露をしたりと宴会騒ぎになっているというのに、フランはお酒を持って、ボーッ、としてることが多かった。

……昼間は戦いの中で軽く興奮していたみたいだから元気だったけど、興奮が切れた瞬間から再び様子がおかしくなってしまっているのだ。



「……ねぇこいし、ちょっと庭に行ってくるね。

眠くなってきたから、眠気覚まししてくるよ」


「うん、分かった!!

ちゃんとフランの分残しとくから早く戻ってきてね!!!!

じゃないと幽々子さんに全部食べられちゃうよ!?」


「そうだね、出来るだけ早く戻ってくるよ」



そう言うとフランは席を立ち、少しふらつきながら襖まで歩いていく。

そして襖まで辿り着くと、音も無く襖を開けて外に出ていった。

……後ろ手にキチンと襖を閉めていくのはフランらしいや!

それにしてもあの様子なのに、フランは大丈夫かなぁ?

五分経っても戻って来なかったら様子を見に行こっと!



「ぷはぁっ……っとっと、なんだか目が回ってきたのかー!!」


「あら、ルーミアちゃんは大分酔ってきたみたいね!!

妖忌はまだまだ……ってちょっとぉ?

妖忌、もう潰れちゃったの?」


「わしゃあもう十分です、幽々子様…………ふぁぁぁぁ…………グゥ……」



口から一升瓶を離したかと思うと、まるでコマの様にふらつきながら回り出すルーミア。

それを見た幽々子さんが従者を軽く自慢しようとするけど、その従者である妖忌さんはちょうど酔い潰れてしまっていた。

……あっ、ルーミアもそろそろ落ちるね。



「あれ、あれれ……?

あっ、視界が歪んで……」


「はい、ルーミアはもう寝なよ!

私の帽子枕代わりに使って良いからさ!!」


「ありがとうなのかー……!

……あ痛っ…………スゥ……」



倒れかかるルーミアを受け止めてゆっくりと畳の上に横にする。

一応枕代わりに私の帽子を頭の下にひいたけど、帽子は簡単に潰れルーミアは頭を打つ羽目になってしまった。

結局そのままあっさりと寝入ったけど……。

……さて、宴会もお開きだね。

そうだ! どうせだから外にいるフランと月見酒でもしよっと!!



「幽々子さん、私は外でフランと月見酒でもしてくるけど一緒に来る?」


「うーん、私は妖夢を見ておきたいから遠慮しておくわ。

冥界から見る月も中々綺麗だから、ゆっくり楽しんできてね」


「うん、ありがとう幽々子さん!!」


笑顔で見送ってくれる幽々子さんにお礼を言いながら、私はまだ空いていない一升瓶を一本手に持ち外に出る。

外に出た瞬間私を包む外の空気はとてもひんやりしていて、お酒で火照った体には気持ちよく感じられた。



「さて、フランはどこにいるかな……?」



フランがしたように後ろ手で襖を閉め、まずはその場で辺りを見渡す。

しかし、フランの姿はどこにも見当たらなかった……。

……本当にどこに行ったんだろう、フラン……?

んっ? これは…………。



「……誰かの、足跡?

一人分だけだから、フランのかな?」



白玉楼の庭に咲き乱れる沢山の桜の林。

その桜の林の奥へ、一人分の足跡が続いている……。……とりあえず行ってみれば分かるよね!

月の光に照らされる桜吹雪も綺麗だし、フランも美しい風景に惹かれたかもしれないもん!!



ーーースタッ、トットットッ……。



縁側から庭に降り、少し早足に足跡を辿っていく。

桜並木にさしかかると桜の花びらが次から次へと降り注いでくる……。

さながら、ゆっくりと降り積もる雪の様で、お酒で盛り上がっている私をそっと落ち着かせてくれていた……。


……そして、どれほど歩いただろうか。

舞い散る桜に冬の雪を重ねながら陶酔していると、目の前に立つ桜の木々の奥に、一際大きな桜が見えてきた……。



「…………その足音は、こいし?」


「えっ!? あっ、フラン!!

うん、私だよ、一緒に月見酒をしに来たの!!」



大きな桜に目を奪われ見入ってしまっていた私は、その大きな桜の根本にいたフランに気付いていなかった。

ただ、フランもまた大きな桜を見上げていたらしく、足音で私だと推測したようだったけど……。



「月見酒かぁ…………良いね。

こんなに桜も咲き誇ってるから、花見も兼ねて飲もっか!」


「よし来た! それじゃあその大きな桜を見上げながら一緒に飲もう!!」



私の方に振り返りながら、いつもの可愛い笑顔とは違う、どこか魅力的で憂いのある笑顔を見せてくれるフラン。

私はフランの了承を得ると同時に、フランの傍まで行ってその場に座り込んだ。

そしてフランも私に続くように座り込む。



「……あっ、いけない!

私一升瓶だけ持ってきちゃった!」


「別にそのままで良いよ。

二人で直接飲めば、それで良い……」


「そ、そう? それじゃあ蓋開けるね!」



一升瓶の蓋を開け、一口目を私が飲む。

そして私が口から瓶を離すと、フランが瓶を持つ私の手にフランの手を添えて自分の口に運ぶ……。

……そうやって花見をしながら月見酒を飲み続けていると、すぐにお酒は無くなってしまった。



「あー、お酒無くなっちゃったね。

ちょっと新しいの取って来るよ!」


「待ってよこいし、お酒はもういらない。

こんなに美しい風景に、宝石のような絹の糸が風に舞ってるんだもの。

これ以上のお酒は無粋だよ」


「えっ、あっ、うん……あ、ありがとう……!」



新しいお酒を取りに行こうとして立ち上がろうとすると、片手で私の肩を押さえるフラン。

そしてそのまま私の肩から髪に手を伸ばすと、ゆっくりと私の髪を撫でながら口説き文句を言ってきた……。

……あっちゃー、フランの様子が気になってばっかりで忘れてたけど、フランってお酒を飲み過ぎたら性格変わるんだった!!

せっかく教訓にしてたのに……バカだなぁ私。



「……ねぇこいし、今まで一緒にいて色々あったよね。

月面戦争に参加したり、人里の守護になってしばらくしてからやめたり……」


「あー、あの時の村長の言葉には腹がたったなぁ……!

完全に上から目線だもん、無意識じゃなくてもぶん殴りたくなったよ!」


「アハハッ、でも紫さんが説教してくれたからこいしも堪えきれたんだよね。

あれには感謝しとかないと……」



お酒も無くなり、手持ちぶさたになった私とフランは自然と思い出話を始める。

始めは約50年前くらいの話から始まり、それからどんどん時間をさかのぼっていった……。



「……朝起きたらさとりの家が半壊してて、思わず起き上がってきたさとりに泣きついちゃったんだよね」


「うっ!?……あ、あの後のフランとお姉ちゃんの怒りはトラウマ級だよ……!!

本当に鬼神かって思ったもん!」


「実際の鬼神は逆に優しいと思うけどなぁ……?

だって鬼子母神でしょ?

母親なんだし、きっと優しいよ!」


「フラン、母は強し、って言うじゃん……」



思い出話はどんどん進み、今は私とフランが出会った日の翌日の話になっていた。

……そしてとうとう、思い出話は私とフランの出会いの場面にさしかかる。



「ふふっ、母は強し、ね。

まぁそれは色んな意味だと思うけど……。

……ねぇこいし、私とこいしが出会った時のこと、覚えてる?」


「もちろんだよ! 忘れるわけないじゃん!!

フランが急に落ちてきて泣き出すし、本当に焦ったんだもん!

……それに、あの時に私の心をフランが開いてくれたしね!!」


「ちゃんと、覚えててくれたんだ……。

……それじゃあ、あの時の約束は覚えてる?」


「約束?……私達、何か約束したっけ?

私がフランに、『いつかフランの秘密を教えてほしい』ってお願いしたことなら覚えてるけど……」



今もそう、私はフランにだけは第三の目を開いているというのに、フランの心を見ることは出来ていない。

だからあの時に私から、いつかフランの秘密を教えてほしい、そうお願いしたのだ。

その場でフランの返事は無かったから約束とは思ってなかったけど……もしかしたら、フランは約束と思っていてくれたのかもしれない。



「あれ、私返事してなかったかな……?

……まぁどちらにせよ、私が聞いたのはその事であってるよ、こいし」


「ほっ、よかったぁ……!

違ってたら恥ずかしくなる所だったよ!

……それで、その事がどうかしたのフラン?

もしかして私に話してくれる気になった?」



少し茶化すようにフランに尋ねる私。

……あの時、フランが秘密を話すことは出来ないと言って泣いていた姿は、今でも鮮明に覚えている。

だから『いつか秘密を教えてほしい』とは言ったものの、フランが泣くくらいなら、その『いつか』は別に来なくても良いと思い続けてきたし、今も聞けるわけないと自分に言い聞かせるようにこうして冗談みたいに尋ねているのだ。

……しかし、フランの口から放たれる言葉に、そんな私の今の行為は無駄なことだと私は思い知らされることとなる。



「……その通りだよ、私の秘密、こいしに教えてあげる」


「おっ、遂に教えてもらえ、る…………ってえぇ!!!?

お、教えてくれるのフラン!?」


「うん、こいしに全部教えてあげる。

誰かにこの秘密を打ち明けるのは初めてだから上手く伝えきれないかもしれないけど…………聞いて、もらえるかな、こいし……?」


「あっ、う、うん……!」



思わぬ事態に酷く焦る私。

しかし、フランの『初めて』という言葉を聞いた途端、私は急速に落ち着いていた。

私が『初めて』ということは、フランが私をそれだけ信頼してくれているということ。

それを私の心は理解したのだ……。


……そして、遂にフランの口が動き出した。



「……私ね……その…………ぜ、前世の記憶があるの!」


「ぜ、前世の記憶……?

でも、この世界じゃ珍しいことでも無いよね……?」



学問を極めようとする学者が術で来世に記憶を引き継いだり、自然と前世の記憶を受け継いでいる者は普通にいる。

まぁそうは言っても、一万人に一人いるかいないかといった感じではあるけど、それでも記憶引き継いだ者はちゃんといるのだ。

だというのにフランが悩んでいる、それはつまり、前世で極悪人だったとかいうことなのだろうか……?

それなら私は別に気にしないけど……。


……しかし、続くフランの言葉は、再び私を酷く驚かせた。



「……ううん、違うのこいし……!

私が、私が持ってる記憶は……未来の、その上この世界ではないかもしれない世界での記憶なの!!」






ーーーーー

以上、秘密の打ち明け初回でした!



打ち明け相手の一人目はこいしでしたね。

……理由はまぁ、ちょっとしたこだわりです。



さて次回は続編ですよ!


それではまた次回にてお会いしましょう!

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