我が儘二人と優しい妹
どうも東方転妹録最新話です!
更新が遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
今回は新キャララッシュ第三弾、月の姫様が登場しますよ!
……まぁ、少々あれですがね。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー永遠亭。
ーーーーside フラン
竹林が拓くと目の前に現れた屋敷……永遠亭。
今は永琳から案内された永遠亭の一室で、永琳と話しながら私と御姉様はくつろいでいた。
「失礼します、お茶菓子を持ってきましたよ」
「わぁ……! ありがとう鈴仙さん!!」
「もう持ってきてくれたのね。
ありがとう、私からもお礼を言わさせてもらうわ!
……あら、これはゼリー……?」
永遠亭にお邪魔した時、てゐを追いかけていた鈴仙を呼び止め永琳が頼んでいたお茶菓子が運ばれてきた。
小さなお茶菓子用の皿に乗せられた一見茶色のゼリーにも見える和菓子……羊羹を見た御姉様は不思議そうにしている。
……まぁ、御姉様が今まで見た和菓子はさとりや椛が作ってくれた饅頭ぐらいだもんね。
「レミリアちゃん、これは羊羹という和菓子よ。
こうやって専用の楊枝で程よい大きさで切り分けて食べるの」
「……貴女といいさとりといい、どうしてそう私の意見を無視するのよ……?」
どうやら永琳の中では御姉様は『レミリアちゃん』ということに決まったらしい。
項垂れる御姉様の側に座って羊羹の食べ方を教えている永琳の姿は、まるで母と娘のようだった……。
……御姉様もせめて『レミリア』って呼んでって言ったら、ちゃん付けされないで済むのにね。
「……どうやら師匠はフランさんのお姉さんを気に入られたみたいですね。
てゐのこともありますし、案外師匠は少し生意気な子が好きなのかも…………」
「鈴仙さん、それはくれぐれも御姉様が聞こえるように言わないでね?
御姉様が怒っちゃうから……」
端から見たら我が儘な娘を持った母が仲睦まじくしているようにしか見えない光景を、鈴仙は優しい微笑みを浮かべながら眺めている。
……ただ、少し羨ましいのか私の側に来て私の頭を撫でていた。
「あら、ちゃんと食事の作法も心得ているのね?
レミリアちゃんもフランも何処でそんなことを学んだのかしら?」
「はぁっ……よく聞きなさい?
フランは名前しか紹介しなかったけれど、私は誇り高き吸血鬼であり紅魔館現当主、レミリア・スカーレットよ!!
誇りや紅魔館の名を汚さないためにも作法や知識はしっかり身に付けてきたわ!!
無論、私の妹であるフランもね!!」
もう我慢できないといった様子で立ち上がり、改めて永琳に自己紹介をする御姉様。
しかし、鈴仙はともかくとして永琳はそれでも平然としていた。
「紅魔館の当主、っていうことは最低でもそれなりの環境で育ったということね。
……レミリアちゃんといい姫様といい、良い環境で育った人ほど我が儘になりやすいのかしら……?」
「姫様…………?」
「ちょっと、私は我が儘なんかじゃないわ!?」
我が儘という言葉に反応した御姉様は置いといて、永琳の言う姫様って一体…………あっ、もしかしてあの人……?
永琳の言葉に疑問を持った私がそこまで考えついた時、呼び掛けもなく突然私達がいる部屋の襖が開かれた。
「ちょっと永琳、ここにいるの?
……あっ、鈴仙も一緒にいたのね!」
「姫様!? いかがなされたのですか!?」
「あれがここの姫様?
あまりパッとしない奴ね」
部屋に入って、永琳と鈴仙を見つけるや否や嬉しそうに顔を綻ばせる姫様ーーー蓬莱山輝夜。輝夜が突然入ってきたことに鈴仙が驚きながらも対応し、永琳は輝夜の返事を待つ。
そして御姉様は品定めをするように輝夜を見回した後、あまりよろしくない評価を下していた。
「書き物をしてたら、お腹が空いてきちゃったから何か軽い物を作ってもらおうと思ったのよ!
ちょうど手も軽く汚れちゃったから台所には立てないしね」
書き物が何なのかが気になるけれど、どうやらその書き物をしたせいで手が汚れて台所に立てないらしい。
……汚れたなら洗えば良いと思うんだけど、まさか料理が出来ないことを隠してる訳じゃないよね?
「……分かりました、すぐに何か作りますので少し待っていてください」
「えぇ、よろしくね永琳!
……あら? なんだ、こんな所にちょうど良いのがあるじゃない」
「「「えっ?」」」
突然ちょうど良いのがあると言い出した輝夜に私と御姉様と鈴仙が疑問に思っていると、輝夜は皆が囲んでいた机に近づき…………。
「作らなくてもこれでいいわ、いただきまーす!」
「えっ、あっ……!?」
……話していてまだ全く手を付けていなかった私の羊羹を、切り分けもせず一口で輝夜は口の中に入れた…………。
「ちょっと!? それはフランの分よ!?
なんで貴女が食べるのよ!?」
「ひ、姫様!? それはフランさんのために用意したものですよ!?」
「へっ? ほへはほほひはほ?」
両側の頬を目一杯膨らませながら疑問を浮かべる輝夜。
御姉様と鈴仙がそれに抗議し、御姉様の隣で立ち上がりかけていた永琳は思わず頭を抱えてしまっている……。
「……んくっ、そんなに騒がなくても良いじゃない。
羊羹ぐらいまだあったはずでしょ?」
「姫様、そういう問題ではありません。
フランは私達のお客さんなんですよ?」
「それに羊羹はもうありませんよ!
先日姫様がてゐと一緒にほとんど食べたじゃありませんか!」
輝夜の行為をたしなめようとする永琳と羊羹がもう無いことを主張する鈴仙。
……その間私は、何をするまでもなくじっとして黙っていた。
「……全く、話にならないわね。フラン? 既に手をつけてしまったけれど、私の分を食べても良いのよ?
味は確かだったもの、一口でも食べておかないと損だわ」
「ううん、気にしなくても良いよ御姉様!
美味しかったなら私はいつも頑張ってる御姉様に食べてもらいたいもん!」
……本音を言うと御姉様の申し出を断りたくはない。
しかし、先ほどの道中で御姉様が見せた苛つきを考えるとやはり当主としての日々の中で少しずつ疲れが溜まっていたのだと思う。
だから私は、少しでも御姉様の負担を軽くするか、御姉様が少しでも何かに満足できるようにしてあげたかった……。
「フラン……貴女は本当に優しい子ね!
本当、私にはもったいないくらい素晴らしい妹だわ……!」
「……あれ? な、何だか罪悪感が出てきたんだけど…………?」
「あれだけ素直で優しいフランから何かを取って罪悪感を感じなければ、私は姫様を再教育していた所です……!」
私の言葉に感動したらしい御姉様と、何かを反省し始めた輝夜。
その輝夜に対し永琳は苦言を申し付けていた……。
「……師匠!! 私、近くの里まで羊羹を買いに行ってきます!!」
「待ちなさい鈴仙。
お金も渡すから団子の材料も買ってきてちょうだい。
どうせだから羊羹だけじゃなく特製の団子を作ってあげましょう」
「…………えっ?」
思わず唖然とする私を差し置き、永琳からお金を受け取って部屋から飛び出していく鈴仙。
それを見送った輝夜は、少し複雑そうにしながらも団子作りの準備をすると言って永琳と部屋を出ていく……。
……結局部屋には、私と、いつの間にか私を抱き締めていた御姉様が残されたのだった…………。
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以上、我が儘姫回でした!
……一応言っておきますが、家の輝夜は料理は作れます。
ただ変に偏ったポリシーがあるだけです。
さて、また次回にてお会いしましょう!




