足りない妖力と身を削る姉
どうも、東方転妹録最新話です!!
これは内容とは関係ありませんが、また宮城福島辺りで大きな地震が起きましたね。
復興もままならない中、被災者の方々が何とか築き上げたなけなしの財産を壊されてはいないだろうかと、心配になってしまいます。
僕は九州にいるので被害はありませんが、やはり怖いですね。
それでは最新話を楽しんでいってください!!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー紅魔館書斎。
ーーーーside 美鈴
「……もう落ち着きましたか?
八雲藍さん…………」
「くっ……かはっ…………!?」
八雲藍さんの鳩尾にめり込む私の拳。
拳がめり込む寸前まで本当に妖獣上がりなのかと思うほどの妖気と殺気を放っていた八雲藍さん。
その凄さは妹様が妖力が枯渇するのも、うなずける程のものであった。
そしてどうやら八雲藍さんは怒りのあまり我を忘れて凶暴化していたようだ。
……だとしても、妹様を酷く傷つけたことは決して許されることではないが。
「あっ……ぐっ、こ、此処は…………?」
「紅魔館にある、妹様の書斎ですよ。
……どうやら先程までの記憶は無いみたいですね」
「き、記憶…………?」
腹を抱えて膝をつきながら疑問の声をあげる八雲藍さん。
正気に戻った目には、本当に疑問に思っている様子がうかがえた。
「正気を失った貴女が八雲紫さんをこらしめようと過剰な攻撃をしていたことですよ。
……本題は、それに巻き込まれた妹様が死にかけているということですが……!!」
「い、妹様が死にかけて……?
……ま、まさかフランさんのことなのか!!!?」
ようやく現状で最も大切なことに気付いた八雲藍さん。
それを肯定するように私がうなずくと、女性である私でも見惚れそうなその美しい顔を一斉に青くして、体が信じられないと訴えるようかのように震え出した。
「フ、フランさんは今どこに!?
は、早く謝って治療をしないと……!!!!」
「妹様ならこいしさんとルーミアさんが医務室に連れていきましたよ。
御二人が妹様の傍に着いていてくれるなら、私も少しは安心できます。
……ところで、貴女は主人の心配をしなくてもいいのですか?」
「えっ、紫様……?
妖気も感じられないし、紫様はここにはいないようだが……?」
まぁ実際は、確かに八雲紫さんはこの場に存在していない。
ルーミアさんから聞いた限り、多少は威力が落ちていたはずの攻撃で妹様が死にかけるほどの攻撃を正面から受けたなら死んでいてもおかしくはない。
……しかし、妖怪が死んだなら本来なら無いとおかしい妖気が籠った肉片などが一切無いのだ。
大半は消し飛んだとはいえ残った血からは妹様やこいしさん、ルーミアさんの妖力しか感じられず、私の気を使う程度の能力を持ってしてもやはり八雲紫さんの妖気は感知できなかった。
「……式であり従者である貴女が言うなら確実にいないんでしょうね。
とりあえず八雲紫さんのことは置いといて、今は妹様がいる医務室へ急ぎましょう!!」
「あぁ、案内を頼みます!!」
妹様……どうか、どうか御無事で…………!!!!
ーーーーside レミリア
「……見えたわ、紅魔館よ!!」
「急ぎましょうレミリア!!
フランとこいしとルーミアの妖力が小さく…………特にフランの妖力が消えかかっています!!」
全速力で飛ぶこと数分、遂に紅魔館が視界に入ってきた。
そして余裕すらなくして飛ぶ私に代わり、さとりがフラン達の妖力を探知してくれているけれど、状況は想像した以上に深刻ね……!!
「さとり、フラン達のいる部屋は分かるかしら!?」
「……この位置は、医務室です!!
能力でルーミアの意識も感じ取れましたから間違いありません!!」
どうやらフラン達の妖力の探知以外にも心を読む要領でルーミアの位置を特定したらしいさとり。
……医務室か…………玄関から遠すぎるから紅魔館を気にしてる余裕はないわ!
「さとり、しっかり捕まっていなさい!!
紅魔館の壁を破って医務室まで行くわよ!!」
「分かりました!!
ですが医務室にまで突っ込まないでください!!
フラン達を巻き込むかもしれません!!」
さとりの警告を心に留めながら、空いている右手にグングニルを喚び出す。
そして、全速力の勢いをそのままにグングニルを紅魔館へと突き出し…………。
「……邪魔だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ーーードガガガガガガァァァァァァァン!!!!!!
……一気に、医務室の手前まで突撃した…………。
ーーーーー紅魔館医務室。
ーーーーside こいし
ーーードガガガガガガァァァァァァァン!!!!!!
「っ!? な、何の音なのだー!?」
「わ、分からないけど今は気にしてる暇は無いよ!!
もっとフランに血をあげなくちゃ!!」
そう言いながら、私は手首につけた傷から溢れる血をフランの口に注ぐ。
隣ですぐにフランの治療に戻ったルーミアも、少しの間に治癒してしまった手首に再び傷をつけ、溢れる血をフランの口元に垂らしていた。
……今、この部屋は私とルーミアが放出した妖力で満ちており、妖怪ならば治癒能力が凄まじく上がる環境となっている。
しかし、その環境であってもフランは中々回復しなかった……。
「こんなに妖力を放出して血を飲ませてるのに……まだ、上半身しか治ってないよ……」
「吸血鬼という妖怪でも上位種となるのに加え、その吸血鬼の中でも最高級の実力を持つフランの妖力の絶対量はこの環境においても満たせないのだー……。
それに、私達が万全でないのも原因なのかー…………」
ルーミアは弾幕を防いだ時に凄まじく妖力を消耗し、私は元々妖力の絶対量がフランのそれよりも少ない上に同じく消耗してしまっていたせいで血に含まれている妖力は減ってしまっている。
それにより、只でさえフランの今の状態では他人の妖力を体の内に留めづらくなっているのも相まって、フランの体が自力で生命の維持をできるようになるために必要な量の妖力を供給しきれていないのだ。
……このままだと私達も消耗し続けるだけ、そして私達が消耗しきってしまえばフランの体は私達が供給した妖力を体の内に留めきれず、生命の維持をできずに…………フランは、死んでしまう。
「せめて、せめて万全の状態なら…………!!」
「くっ、誰でもいいから、大妖怪に来てほしいのだー…………!!」
激しく消耗した私達だけではどうにもならない状況に、思わず弱音を吐いてしまう私達。
……しかし次の瞬間、私達の願いは早くも突然叶った。
ーーーバンッ!!!!
「フラン、こいし、ルーミア!!!!」
「三人とも大丈夫ですか!?
一体何があったのです!?」
「「お、御義姉様!?
お姉ちゃん(さとり)!!!?」」
私とルーミアが絶望しかけた途端、扉を激しく開けながら医務室へ駆け込んできたお姉ちゃんと御義姉様。
二人ともどこにも怪我はないけれど、何故か服が汚れていた。
……ってそんなこと考えてる暇じゃないよ!
御義姉様とお姉ちゃんならフランに必要な量の妖力を供給できるはず!!
「お姉ちゃん、フランが……フランが!!」
「御義姉様、お願いだからフランを助けてなのだー!!
私達じゃあ、もう妖力が足りないのだー!!」
フランに血を与え続けながらお姉ちゃん達に助けを求める私とルーミア。
助けを求めている間に、私達はどちらともなく涙を流し始めてしまっていた……。
……すると、御義姉様が私とルーミアの手を取りに来て、フランのいるベッドの傍からお姉ちゃんの所へ一気に引っ張ってきた。
「……二人ともよくここまで頑張ったわ。
フランのことは私に任せて、貴女達はさとりから妖力を分けてもらいなさい」
「ほらっ、二人とももっとこちらに寄ってください。
レミリアの言う通りに妖力を分け与えてあげますから」
未だフランは回復していないというのに、それでも私達を安心させるために笑顔を見せてくれたお姉ちゃんと御義姉様。
私とルーミアをお姉ちゃんに預けた後、御義姉様はすぐにフランの元へと向かっていった。
「一体何をすればここまで妖力を失うのかしら……?
……今それはどうでもいいわね。
フラン!! 貴女をここで死なせたりしないわよ!!
私が来たのだから安心しなさい!!」
意識を失っているフランに呼び掛けながら、袖をまくり上げ始める御義姉様。
私とルーミアはお姉ちゃんに涙を拭いてもらいながらそれを見ていると、次の瞬間、御義姉様が信じられない行動に出た……。
「さぁフラン、存分に私の体を食らいなさい!!」
「「えっ……!!!?」」
そう言った途端、御義姉様の左腕が赤い霧状となってフランの口に吸い込まれるように入っていった。
すると、先ほどまで全く再生しなかったフランの体が再生を始め、あっという間に全身が再生された……。
「まだまだよフラン!!
次は妖力、これもまた存分に味わいなさい!!」
次の瞬間に凄まじい勢いで御義姉様から放出される妖力。
それは先ほどまで部屋を満たしていた以上の密度の妖力で、その妖力に晒されたフランの体は一気に血の気が戻っていった……。
「さて、いいことフラン?
フランがそんなになるくらい無茶なことを、どうしてやったのかは分からないけれど、私が傍にいないときは絶対にしてはダメよ?
本当に危険なのだから……。
……まぁ、まだ聞こえてはいないはずだけど」
そうした後、一度左腕を再生させた御義姉様はフランに呼び掛け続け、またお姉ちゃんも私とルーミアを抱き締めながらフランの方を心配そうに見つめていた。
そうして、私達は美鈴と藍さんが来るまで、ただひたすらに治療に専念していたのだった…………。
ーーーーー
以上、フラン治療回でした!!
正にレミリアが身を削りましたね。
これでフランの体の方は完治しました!
……未だ意識は戻らず、妖力も足りてはいませんがね。
それではまた次回にてお会いしましょう!!




