二日酔いと繋ぐ手
どうも、東方転妹録最新話です!!
今回は看病回になっています!
……吸血鬼だと並大抵の病気にはならなそうだったので、以前から書きたいと思っていた看病回まで持っていくのはかなり苦心しました。
まぁなんとか書けましたけどね。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー翌日、紅魔館。
ーーーーside フラン
「……あー……うー……。
……頭が……頭が痛いよぉ……!」
「あっちゃー……。
えぇと、大丈夫フラン?
熱は……無いみたいだね」
「水を持ってきたからゆっくり飲んで横になっておくのかー」
ベッドの脇に腰掛けながら私のおでこに手を置き、熱がないか確かめたこいし。
痛みでぼんやりとする頭に、こいしの手の感触はとても気持ち良く感じる……。
「……うぅ……でも、仕事はしとかないと……」
「そんな状態で仕事をしてもまともに出来ないのだー。
フランの仕事は私達で捌いておくから、お願いだから今はゆっくり休むのだー」
そう言いながら優しく私の頭を撫でてくれるルーミア。
その手から感じる温もりが頭の痛みを和らげてくれた……。
「今日は私とルーミアと美鈴の仕事を交互にいれて、常に誰かがフランの傍にいるようにするから安心してね」
「まずはこいしが付いていてくれるのかー。
……それじゃあ、とっても心配だけど、私はもういくのだー……」
そうしてルーミアは仕事をしに部屋から出ていき、看病をしてくれるこいしと二日酔いとなった私が部屋に残された……。
……昨日の宴会で、初めてなのに後半の記憶がなくなるほど飲んでしまった私は、今日、同じく初めての二日酔いというものを経験することになったの。
こいし達から聞く限りでは紫さんがスキマで送ってくれたらしく、気が付いたら私は紅魔館にいて既に二日酔いにやられてたんだよね……。
「はぁ……ごめんねこいし。
皆に色々迷惑かけちゃって……」
「気にしない気にしない!
フランにとって初めてのお酒だったんだからそうなるのも仕方ないよ。
それに少なくとも私は迷惑だなんて思ってないもん。
むしろフランのお世話が出来て嬉しいんだからね!」
そう言って私の隣に腰掛けていた状態から倒れこみ、私に添い寝をしてくれるこいし。
かけ布団の上から横になってるから手とかは繋げないことが、今はなんとなくもどかしかった……。
「ほらっ、ルーミアが水を持ってきてくれてるから飲んで寝ちゃいなよ」
「あっ、うん……」
そうしてごろんと転がりながら枕元に置いてあった水の入ったグラスをとってくれたこいし。
……普通ならこぼしてしまいそうな動きなのに全然こぼすことなくグラスをとるこいしは凄いね。
そんなことを思いながらグラスを受けとるために体を起こそうとするが……。
「…………あぅっ……!?」
「あっ、大丈夫フラン!?」
少し動いただけで酷く痛む頭のせいで、体を起こすことができなかった……。
「フラン……体、少しも起こせない?」
「……ぅ……ん…………」
グラスを持ったまま体を起こして顔を覗きこむように聞いてくるこいしに、未だに酷く痛む頭を手で押さえながら返事になっていない返事を返した私。
その様子を見ていたこいしは少しの間じっと私を見た後、グラスの中身を口に含み始め…………。
「…………んっ……」
「……んぅ…………!?」
……ゆっくりと、口移しで水を飲ませてくれた。
私達の声以外静寂が保たれていた部屋に、少しのリップ音と口移しをされた水が喉を通る音が繰り返し響く。
その音の響く回数が増えるにつれて私の頭の痛みも和らいでいき、代わりに心地よい眠気が私の頭を占めていった……。
「……んん…………ぷはぁっ……!
……ふふっ、フランったらどうやら眠くなったみたいだね」
「……ふぁ…………」
最早こいしの声すら子守唄のように聞こえるほどに眠りかけている私。
それでもこの微睡みが何故か孤独に感じた私は、他人を求めるようにこいしに手を伸ばしていた……。
「……もう寝て良いよ。
私はずっとフランの傍にいるから……。
だから今はゆっくり休んで早く元気になってね、フラン……」
「……あっ…………」
私の伸ばした手をこいしがゆっくりと握り、その手の温もりが私の中にあった孤独を溶かしていってくれる……。
……そして私の中の孤独が完全に溶けてなくなった頃、私の意識は闇へと沈んでいった……。
ーーーーside こいし
「……寝ちゃったね」
口移しで水を飲ませ、ようやく眠りについたフラン。
気持ち良さげに眠るフランの可愛い寝顔を堪能しながらも、そろそろ交代の時間だと思って握る手を離そうとすると…………。
ーーーーギュッ…………!
「…………あららっ?」
……眠っているはずのフランの手が、まるで離れるのは許さないとでも言うように私の手を力強く握りしめてきた。
「ね、寝てるよ……ね?」
もしかして起きているのだろうかと思ってフランの顔を覗きこんでみても、全く起きている様子はなかった。
……何だか私が離れるのをフランがいやがってるみたい。
……つまり、私はフランが手を離さない限り合理的にフランの傍にいれるってことだよね……!
「……こりゃ、しばらくは離れられないね……!」
覗きこんだままの状態でフランの可愛らしい寝顔を堪能し続ける私。
無論その間も私とフランの手はしっかりと繋がれていた。
「フランに口移しでキスもできて、合理的に仕事を休んでフランの傍にいられるだなんて……今日はなんて良い日なんだろう!」
昨日は酔ったフランに服を剥がされて『奉仕』をさせられそうになったけど、毎回こうなるならまたフランにお酒を飲ませても良いかもね!
「……まぁ、その度にフランが二日酔いで苦しむのは嫌だから実行はしないけど……」
昨日はあまりのプレッシャーに体も思考も固まってしまっていたけど、別にフランに『奉仕』をするのは構わない……むしろ進んでするくらいだから、他に心配をするとしたらフランが二日酔いで苦しむことくらいだよ!
……今度、素の状態のフランに『奉仕』してみようかなぁ……?
「まぁ、それで前に失敗したことがあるからしないんだけどね」
あのフランに怯えられた時の絶望感と、その後私とルーミアに抱き着いてきたフランの可愛さは本当に凄いものだったよ。
……同じ失敗は繰り返さないようにしないとね!
……そうやってフランの手を握りながら一人で回想に浸っていると、看病の交代をしにルーミアがやって来た。
「……こいし、名残惜しいのは分かるけどもう交代の時間なのかー」
「あっ、ごめんねルーミア。
今フランが離してくれないから交代出来ないや!」
「…………はっ?」
そういって空いてる手でフランと繋いでいる手を指し示す私。
……それを見たルーミアは疑わしい目で私を見てきた。
「……それはこいしが握ってるだけじゃないのかー?」
「なっ、違うもん!
ほらっ、離してくれないでしょ!?」
私がフランの手を握ってるだけじゃないのかと疑うルーミアに、手を離そうとしてもフランが離さない様子を見せる私。
……流石にそれを見せるとルーミアも納得したらしく、どこか悔しげな顔をしていた。
「むぅぅ、確かにフランが握ってるのかー……」
「ふふん、これはきっとフランの『一番のパートナー』である私だからだよ!」
そう言ってルーミアに向けて自慢げに胸を張った私。
それを見たルーミアはさらに悔しそうな表情をして唸っていた……。
……まぁ悔しそうなのがフランのことだけじゃなくて、胸の大きさで私に負けてるのも理由なのかは分からないけどね!
「……な、なら『フランのお嫁さん』の私でも握ってもらえるはずなのだー!!」
そう言ってフランのベッドの、私の反対側に行ってフランのもう片方の手に触れるルーミア。
……まぁこれは私だからこそ握ってーーーーー
ーーーーギュッ…………!
「あっ、に、握ってくれたのだー!!」
「なっ…………!?」
そ、そんな馬鹿な……!?
わ、私だけじゃなかったのフラン!?
……落ち着くのよ古明地こいし。
フランは二日酔いの痛みで誰かが傍にいないと不安なだけで、ルーミアの手を握ったことに他意があったわけじゃないはずだよ……!
……あれっ、そうなると私の手を握ったのも不安だっただけに……?
「……まぁ、フランは寂しかっただけでこいしを選んだ訳じゃなかったのかー!」
「なっ、ち、違うもん!!
フランは私を選んだんだもん!!」
「「…………ガルルルルルルルッ!!」」
互いの敵を睨み唸り合う私達。
そんな中でもフランは、私達二人に手を繋いでもらって安心しているのかぐっすりと眠っていた……。
……因みに私達二人が戻ってこないのを心配した美鈴が来るまで、私達は睨み合いを続けることとなった。
ーーーーー
以上、看病回でした!
今回はこいしが目立ちました!
……さりげなく本作品でのこいしとルーミアの大きさの違いも分かりましたしね。
それではまた次回にてお会いしましょう!




