フランと星、そして世界
どうも、東方転妹録最新話です!
今回は、久々に狂ったフランが悩みます。
フランの悩みとは一体なんなのでしょうか?
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー翌日、廃寺。
ーーーーside フラン
「……ふぁぁ……おはよぅ星…………。
……って、あれっ?」
昨日は結局これといったことはなく夜を迎えた私と星。
その後は布団を並べて一緒に寝たはずなのに……。
その一緒に寝たはずの星が、いない……。
ふと寝過ごしてしまったのかと思って布団を出てから襖を開けて外を見てみると、ちょうど日が昇った頃だった。
……私が寝過ごしてしまったわけじゃない、というよりむしろ早起きしたよね?
こんな早くに星はどこに行ってるんだろう……?
「…………?
誰かが話してる……?」
星が何処に行ったのか考えていると、門の方から誰かの声が聞こえてきた。
何かあったのかなぁ、っと思いながら門に向かうと誰かの声は段々と大きくなってきて、遂には怒鳴り声になっていった……。
「……くそったれ妖怪が!
汚れた妖怪の癖に寺院の真似事してんじゃねえよ!!」
「親方の言う通りだ!
糞妖怪なんて地獄に落っちまえ!!」
……これは、かなり危険な状況みたい……!
急がなきゃ…………!
妖怪を罵る声が聞こえてから急いで門へと向かう。
門が視界に入った瞬間、私は思わず怒鳴りたくなる光景を目の当たりにした……。
「や、やめてください!
寺を壊さないで!!」
「るっせぇつってんだろ糞妖怪が!!」
「なっ、きゃあぁ!?」
……何故か手に持つ鎚で寺を壊そうとしている人間を止めようとした星が、その鎚で人間に殴られた……。
「……星を、星ヲイジメルナァァァァァァァ!!!!!!」
「なっ、なんだこいっ!?
ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
「えっ、フ、フラン!?」
弧を描きながら、宙に舞う親方と呼ばれていた男の上半身。
その上半身が地面に落ちる頃には、溢れ落ちてきた大量の血が、私の着ている白い寝間着を紅く染めていた。
「……フラ、ン…………?」
「ひっ、ひぃぃぃぃ!!!?
ば、化け物ぉ!!!?」
目の前で、腰を抜かして崩れ落ちながらも必死に逃げようとして後ずさるもう一人の男。
……こいつも、星を虐めた…………殺してやる!!
思いっきり切り裂いてやろうと思い、右腕を大きく振り上げた私。
そして私はその右腕を、私に背中を向けて這って逃げようとしている男の背中に、勢いよく振り下ろした…………。
ーーーーガシィッ!!
「えっ…………?」
……一体誰に止められたの……?
ふと右腕を見てみると、私の後ろから伸びてきた手が私の右腕を掴んでいる。
その手の根本を探すように段々と目で追っていくと…………。
「……いい加減にしなさいフラン!!
貴女は自分が何をしたのか分かっているのですか!?」
……私が助けようとした星が、何故か私に向かって怒鳴り付けていた。
「何をしたって、私は星を助けようとしただけだよ…………?」
「私を助けるだけなら親方と呼ばれた方を殺す必要も、今目の前で怯えている方を殺そうとする必要も無かったでしょう!!!?
フランが私を助けてくれようとした気持ちは素晴らしいものですし、私も嬉しいです!
ですが!! 助けようとしたからといって彼らを攻撃するというのは許されません!!」
星に対し横向きだった私の体を、私の肩を掴んで正面に向かい合わせながら説教をする星。
余程激昂しているのか、星が一言叫ぶ度に体ごと両肩を揺さぶられる。
……どうして、私が怒られるの?
こいつらは星の大切な寺を壊そうとした所か、星までも傷つけたんだよ?
どうして、星は私を怒るの……どうして…………?
「……良いですかフラン。
私達は確かに妖怪であり、人を害することが本来持っている習性です。
私はそれを否定したりはしませんし、出来もしません。
……ですが、自然の摂理の中で人や動物、植物が変わっていくように、私達妖怪も変わっていけます。
鋭い爪の代わりに優しい手を、丈夫な牙の代わりに優しい言葉を、荒ぶる心の代わりに優しい心を持つことは、私達妖怪にだって必ず出来るのです」
「変、わ……る……?」
妖怪は、気ままに生きるものじゃないの……?
前世は人だったけど、吸血鬼として生まれてからは吸血鬼としての習性に従って生きてきた……。
そこに人だった時の知性はあっても感性はほぼなく、今まで私は吸血鬼として気ままにしてきたの……。
……でも、星はそれだけではダメだと言う。
「……私は、妖怪として生きたらいけないの?
吸血鬼として、生きたらいけないの……?」
「そういう訳ではありませんよ、フラン。
妖怪として、吸血鬼として生きるのは大いに結構。
ですが、本能のままに生きるだけでは自分を腐らせることになります。
そうならないためにも、本能のままに生きる妖怪として誰かを傷つけるだけではなく、慈しむことも出来る一歩進んだ妖怪として誰かに優しくするということが必要であり、最も大切なことなのです」
誰かを、慈しむ……?
それなら今までだってしてきたよ?
御姉様やこいし達みたいに大切な人達は慈しんできたもん……!
「……慈しむことも出来る妖怪?
それなら、今までだってしてきたよ?
大切な人達を沢山慈しんできたもん!」
「それは素晴らしいことですね。
……ですが、それは自分の大切な人達だけでしょう?
次はそれ以外の方々にも慈しむべきです。
そうすれば、必ずフランのためにもなりますよ!」
大切な人達以外も慈しむ……。
でも、それがもし敵だったら?
慈しんだ相手が私を殺しに来たら?
私の……私の大切な人達を奪いに来た奴だったら?
……やっぱり、出来ないよ……。
私には、分からない……。
「分からない……私には分からないよ……。
どうして敵かもしれない赤の他人を慈しまないといけないの……?」
「それが平和を、人妖の真の平等を生むからですよ、フラン……」
平和と平等…………この美しいけれど、とても厳しい世界でそれを成す事は出来るのかな?
私には……まったく分かんないや…………。
……ふと気付けば、先程まで怯えていた人間は何処にもいなくなっていた。
ーーーーー元集合場所。
ーーーーside こいし
「……ふわぁぁ………。
うぅ、ね、眠い……!」
「……こいし、一旦休もうなのかー……。
私達が倒れてしまったら余計捜索に時間がかかってしまうのだー……」
ずっとフランを探し続けていたけど、結局時間的には丸二日寝ていないせいで眠気と体力に限界が来た私とルーミア。
ちょうど寄りかかりやすい木を見つけて、二人で一緒に寄りかかる……。
「……これでここを中心に、ここから二十分ぐらいまでの場所を探し終えたのかー……」
「とりあえず、ここから一時間ぐらいの範囲まで探そうよ……。
それでダメなら、世界一周だね…………!」
今まで探した範囲とこれから探す範囲を確認しあった私達。
私の言葉の最後に、ルーミアが思わずといった様子で小さく笑っていた……。
「……そうだね、これでフランが見つからなかったら世界一周するのだー……!」
「ふふっ…………二人で頑張ろうね、ルーミア……!」
二人で笑い合いながら、互いの手を握りあった私達。
そうすると、段々と意識が薄くなっていき、遂には目蓋が閉じてきた……。
「……ふふっ…………じゃあ、おやすみ……ルー、ミァ……」
「……あは、はっ……おやすみ……なのかー…………」
ーーーーー
とある場所の木陰にて、二つの静かな息づかいが、風に飲まれて消えていった…………。
ーーーーー
以上、フランと優しさ回でした!
フランが悩んだ後、本当に理解に苦しんでいましたね。
いつか答えが出せると良いのですが……。
こいしとルーミアは一旦休むようです。
二人が大分頑張ってくれましたし、もうすぐ出会えますよ!
それではまた次回にお会いしましょう!




