絡み付く者達
どうも、東方転妹録最新話更新です!
……更新がとてつもなく遅れてしまい本当に申し訳ありません。
夜、執筆していたら……いつの間にか朝でしたorz
もう本気で寝落ちしてましたm(__)m
たまたま午前は空いていて良かった……!
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー魔界、とある集落。
ーーーーside フラン
弾幕を放とうとして展開しかけた妖力と魔力を乱され、一瞬気を取られた瞬間に体に四本の腕と多数の触手が絡み付く。 特に四本の腕の内の一本は、スカーフの上から私の口を押さえていて、突然のことに声をあげることすら私は出来なかった。
「アハハハハッ…………次ノ、次ノ獲物ォォ……!」
「極上ノ魂……アレハ私ニ捧ゲラレルベキハズダッタモノ…………モハヤ手ニ入ラヌノナラバ、代ワリノ贄ヲ、多クノ贄ヲ……」
「んんっ!? んぅぅ!!」
囁くように吐き出される言葉は、すぐそばにある私の耳には届くものの、ミシャクジ達を相手に戦う依姫達には届かない。 狂気と虚無を体現したかのような声色は、質こそ違えど私が聞きなれた声…………ぬえと諏訪子のものだった。 ぬえの纏う幻に紛れながら、ぬえと諏訪子はこの辺りに隠れていたのだろうか。
そして悲しいかな、普段ならば今の私の変装程度ならば見抜けるであろうぬえと諏訪子は、その狂気と虚無に呑まれてしまっているが故に仮面の下に隠れた私のことには気付いていない。 もがく私の体は両手ごとぬえの三対の触手に絡め取られていて、このままでは集落の魔界人同様に血に染め上げられることは明白だった。
「んぅぅ…………っ!!」
「蝙蝠…………アァ、コノ獲物、フランミタイジャナイカ……ソレナラ、食ベタラキット私モフランニナレルヨネェェ!!!?」
「アノ子ト同ジ、吸血鬼? …………成程、コレハコレハ……コレ程マデニ私ノ贄トナルニ相応シイ種族は他ニ無イナ!」
全身を多数の蝙蝠に分裂させ、聞くに耐えない言葉を連ねるぬえと諏訪子から距離を取る。 しかし、私の正体を吸血鬼と睨んだ二人は、二人の中のそれぞれの私の姿を現実の私に重ね、それぞれの欲望をぶちまけながら私の蝙蝠達を追い掛けてきた。 恐るべきはその執念なのだろう。 二人はまとめて捕まらないように広く広がって宙を逃げ惑う私の蝙蝠達を、少しずつ捕まえながら口に入れて咀嚼し、飲み込んでいく。
依姫達が頭上の異変に気付き、私が何とか二人を振り切って再度体を構築した時には、既に私の体の三分の一ほどの蝙蝠がぬえと諏訪子に喰われていた。 蝙蝠が足らぬまま構築した体は、服は無事だったものの、服の下で左腕を肩からと、左膝から下をごっそりと失っていた。
「ぐぅっ……!? 再生は、少し掛かるかな……」
「オーエン!? 待っていろ! すぐにそっちに行く!! サリエル!!」
「分かってるわ! オーエン! 下手に動かないでよ!!」
緊急時でも忘れずに私のことをオーエンと呼んだ依姫は、ミシャクジの一匹の首を跳ねながら依姫達の中で一番私に近いサリエルの名を呼ぶ。 依姫と同じように私の危機に気付いていたサリエルは、杖を掲げて浄化の光を辺りにばらまく。 しかし…………。
「諏訪子! アレ、邪魔ダヨ!!」
「分カッテイル。 私ノ後ロカラ援護シテイテクレ。 贄ヲ喰ラウ邪魔ヲスル者ハ許シハシナイ!」
「っ!? ……そう、あの方がオーエンが話していた諏訪子という神ね。 あの方が一人なら正攻法で打ち破れるらしいけれど、後ろの妖怪は……」
元より、土着神である諏訪子とミシャクジ達には浄化の光は意味を成さず、それぞれの纏う神力の前に霧散していく。 そして浄化の光を防ぐ諏訪子の後ろにぬえが隠れ、諏訪子の背後から弾幕を放ちサリエルを牽制していた。 利害の一致か、はたまた腐っても大神と大妖怪というべきか、諏訪子とぬえはしっかりと連携を取りながらサリエルを迎撃する。
相手が諏訪子一人なら、不意を突かれたとはいえここまで体を削られなかっただろうし、腕を一本無くしていても真っ正面から突き崩せば打ち勝てただろう。 しかし、実際にはぬえがおり、諏訪子とぬえはある程度の連携はしっかりと取っている。 狂っていてもある程度の理性は残っているとの証明なのかもしれないけど、同時に面倒くさい戦況であることには違いない。
……しかし、私に似ているから、吸血鬼っぽいから今の変装した私を喰らおうとしてくるとは、私がいなくなったことにどれだけの衝撃を受けていたのだろうか。嬉しく思う反面、申し訳なく思う気持ちと少しの恐怖を感じる。 夢月やヤマメが言っていた通り、今のぬえと諏訪子の前にフランとして立つのは確かに危険過ぎただろう。 似ているというだけでこれなのに、死んだと思っていた本人が目の前に現れたなら、二人がどんな行動に出ていたか分からない。
「サリエル! 私の援護をしてもらっていい!?」
「別に構わないけれど、オーエンはどうする気?」
「接近戦に持ち込むつもり! 剣が無くとも、私にはこれがあるからね!」
再生し終えた左手をサリエルに見せつけ、そのまま諏訪子とぬえに向かって飛び出す。 少し遅れてサリエルの弾幕と浄化の光を放つ音が聞こえ、迫る私を迎撃しようとしていた諏訪子の動きを封じていた。 避ければ浄化の光がぬえに当たる、故に諏訪子はサリエルの弾幕だけを迎撃しつつ、二輪の鉄の輪を構えて私の一撃を耐える姿勢に入ろうとしている。
しかし、ここで問題があった。 一つは、私も悪魔、妖怪であるということ。 浄化の光はぬえにだけでなく、私にも有効なのだ。 勿論サリエルは私に当たらないようにしてくれているけど、私の動ける範囲は限られてしまう。 そして諏訪子の背後からぬえは弾幕を放ってきている訳で…………私はほぼ真っ直ぐ、諏訪子に突っ込むしかなかった。
「せーのっ…………それっ!!」
「洩矢ノ鉄ノ輪ハ、ソウ簡単ニハ壊レナイサ!!」
「飛ンデ火ニ入ル夏ノ虫ダネ!!」
「っ!? な、なんかヌメヌメする!?」
魔力と妖力を身に纏いながら突き出した拳は、諏訪子が斜めに構えた二輪の鉄の輪の表面を滑り、その軌道を逸らされる。 普段ならば例え斜めに構えていようが、少なくとも表面を滑るなんてことはなかった。 しかし今回、何かヌメヌメした物で覆われた鉄の輪は、その身に宿る神力で魔力と妖力を緩和し、鬼にも匹敵する吸血鬼たる私の拳をそのヌメヌメしたものによって流してきた。
その上、よくよく見ればそのヌメヌメした物は鉄の輪のみならず諏訪子の全身を覆っている。 まるで爬虫類が粘膜を纏う時の様。 こんなものを纏う諏訪子を見るのは初めてだ。
勢いを乗せた一撃を思いもよらぬ形で防がれ動きが止まった私を、鉄の輪を放り出した諏訪子が抱き着くように捕まえ、私の視界の先、諏訪子の背後でぬえが何もない宙に向かって合図をするかのように妖力の籠った札を一枚投げる。 宙に浮かんだ札は発光し、次の瞬間には空高く舞い上がって爆発。 空に大きな火の花を咲かせていた。
「獲物ヲ喰ラウニハ邪魔者ガ多過ギルシ、コウイウ時ハ仲間ヲ呼バナイトネ」
「仲間!? えっと、今残ってるのは……あっ、いけない!!」
「オット、何ヲスル気カ知ラナイケド、逃ガシハシナイヨ」
全身を私に擦り付け、粘膜を私に掛け続ける諏訪子。 恐らくただの粘膜ではないはずだし、そのことを考えても早く諏訪子の抱擁から抜け出さないといけない。 ぬえもサリエルの放つ浄化の光に当たらないように触手と体を絡ませようとしてきているから、尚更抜け出す必要がある。
しかし、抜け出す必要がある一番の理由は、もっと違うところにあった。
…………このままでは、望まぬ形で永琳と依姫が再会してしまうのだ。
ーーーーー
以上、ヌメヌメ回でした!
……粘膜に服を溶かす性質を持たせようとか、ビリビリして体が動きにくくなるのに火照るとか、そんな邪な考えが浮かんでいたことを正直に白状します。
というわけで……煩悩退散煩悩退散煩悩退散んんんんん!!!!!!
それでは又次回にてお会いしましょう!




