死体で彩る門構え
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、今回はさりげなくサリフラ回です!
それ以外は…………実は(ry
それでは楽しんでいって下さい!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー十数分後、魔界、とある集落。
ーーーーside オーエン(フラン)
辺りに漂う血生臭い匂い。 吹き出したばかりの新鮮な血の匂いではなく、零れ落ちて幾ばくの時間が過ぎた腐った血の匂いが集落全体に広がっている。 血を主食とする吸血鬼ではあるけど、流石にこんな血の匂いには喜べない。 吸血鬼とて飲む血は選ぶ、というかまともな吸血鬼程まともな鮮血を飲みたがるものだ。
しかし、こうして血に関して語ることよりも、もっと私の、いや私達の気を引く光景が目の前にあった。
「……死体を門に吊り下げるとは、魔界には一体どんな宗教があるんだ?」
「依姫さん、誤解を招く発言はしないでくれる? 流石にここまでエグい宗教は魔界には無いわよ」
「吊り下げるというよりか、隙間無く元の門に張り付けまくった状態といった方が正しいですね。 丁寧に全身の皮まで剥いで…………話に聞く串刺し公よりも、遥かに悪趣味な牽制の仕方と言いますか、何と言いますか……」
「しっかし一つの集落を丸々潰した上に、門にだけこんなおぞましい芸術品を作るとは…………サリエルさんが言う通りなら、多分これは発狂した誰かがやったんだよね……心当たりはあるかな、オーエン?」
「…………うん、きっと主犯はこいしかな。 今までこいしが死体で飾り付けて遊ぶなんて見たこと無かったけど、私の知識から語るならこいしの可能性が高いよ。 ただ、全身の皮を剥ぐなんてことはしてなかったはずだけど」
私達が立つ集落の入り口には、アーチ型の門があり、奥に結構な大きさの家々が見える。 恐らく数百人規模の集落であっただろう此処には、既に生きている者の気配は無く、全身の皮を剥がれた死体で隙間無く彩られたアーチ型の門が私達を出迎えるばかりだった。 その門を見た依姫は不快そうに鼻を鳴らし、サリエルは静かに死体の門を見据え、夢月は気持ちを表す言葉を決めかね、ヤマメは犯人探しをし始める。
私の前世の記憶からすれば、犯人はこいしで間違いはない。 エントランスを門と置き換えれば、死体を飾るという行為であることに違いは無いからだ。 その上エントランスも門も、どちらも誰かを出迎え、送り出す場所であるし、その違いは少ない。そうなれば、現状警戒すべきは発狂したこいしの襲撃となる。
「知識……前世の記憶だったか。 こいしとは確か気配を消して相手に認識されなくする奴だったな? ならば話は早い、さっさとこの場を離れるぞ」
「ちょっ!? こいしを炙り出して捕まえて正気に戻すんじゃないの? 炙り出すことはしないにしても、出てくるのを待つとかさ?」
「そうだな、ヤマメは土蜘蛛だから、待つことは得意だろうし、炙り出すように罠を張るのも得意だろう。 だが問題がある。 一つはまだこの辺りにこいしとやらがいるかもしれないということだ。 罠を張るにも時間が掛かる。 オーエンの様に他者の能力への耐性があるわけでもない私達が作業中に襲われれば、下手すれば無事では済まない」
「それならばオーエンさんに分身してもらえばいいのでは? オーエンさんは丁度四人に分身出来ますから、私達一人一人に付いてもらえればこいしさんの能力に対する目が出来ます。 それに確かこいしさんはオーエンさんを視界に納めて認識している間は気配を消せないはずです。 発狂していても、流石にオーエンさんの中身であるフランさんの雰囲気や気配には気付くでしょうから」
「確かにそうだ。 しかし、まだ問題は残る。 これらは可能性としての問題だがーーー」
この後をどうするかを話し合い始めた依姫と夢月とヤマメ。 その間、私はなんとなく嫌な予感がして辺りを警戒していた。 死体を飾り付けるというだけなら、こいし一人が及んだ行為であるだろう。しかし、死体の皮を剥ぐ…………原作のこいしと私の知るこいしは違うとはいえ、原作のこいしはお気に入りの死体を飾ることに価値を見い出していたのに、私の知るこいしがこんな気持ち悪い飾り方に価値を見い出すとは思えない。 まるで、原作のこいしの知識を持った者が模範しつつアレンジを加えた様な…………。
「…………あっ!! ね、ねぇねぇサリエルさん! 魔界に連れ込んだのは本当に9人だった? 10人だったりしてない?」
「えっ? えぇ……少なくとも9人であったことは確かよ」
「それなら……サリエルさんが介入する前にこいしは、黒い帽子を被った妖怪はどんな戦い方をしてた?」
「そうね……確か、鉄の輪を2つ持ちながら白い翼の悪魔に斬りかかってたわよ」
2つの鉄の輪……間違いない、サリエルさんが魔界に連れ込んだのはこいしではなく諏訪子だ。 姿が変わっていたのは……多分、ぬえ辺りの仕業ではないだろうか? 発狂しつつも一致団結して幻月に襲いかかっていたのなら、少し位は連携も取るはず。 札等で戦うこいしの姿になることで幻月の目を欺き、虚を突いて近接戦に持ち込む魂胆だったのだろう。 それに、ぬえの正体不明の種を付けられていたなら諏訪子の全身は妖力に覆われていただろうし、サリエルさんが妖怪と見間違えてもおかしい話ではない。
まぁ、今はそれよりも諏訪子への対策を練り直さなくてはならない。 内包する凄まじいまでの神力や様々な戦術の数々を駆使した戦い方は、こいしのそれよりも遥かに脅威だ。 かつてぬえとこいしとさとりを相手取って余裕を持って勝ったこともあったのだから。
「ありがとうサリエルさん。 きっと、これをしたのはこいしじゃなくて諏訪子だね。 土着神の長の、諏訪子。 神と妖怪を見間違えたのは、多分ぬえが一枚噛んでいたんだと思うよ」
「神? それなら、流石にこれはおかしいんじゃないかしら? 神ともあろう者がこんな気味の悪い芸術品を作るなんて……」
「堕天使のサリエルさんがそれを言うとちょっと変な気がするや……」
「それは言わない約束よ? まぁ、敵の膝枕で安眠できる子に言っても仕方ないわよね。 あれは驚天動地だったというか、貴女を気に入るには十分すぎる面白さだったわ」
「むぅぅ!! サリエルさんの意地悪……!」
「ふふふっ、ごめんなさいね? お気に入りの子を可愛がる時は素直になれずに、どうしてもからかいたくなっちゃうのよ。 私、堕天使だから」
「素直にしないと後でサリエルさんを私の抱き枕にするもんねーっだ!! 8時間位全く動けなくしてあげるもん!!」
「はいはい、幾らでも抱き枕になってあげるから機嫌を直しなさいな? それで、諏訪子って神にはどう対策するの?」
「約束! 約束だからね!! ……で、えっと、諏訪子は…………空を飛んでたら大丈夫だと思うよ! 後は正攻法でどうにかなる!」
そういうと、私はサリエルさんの左手を握り翼を広げて宙に浮く。 同じく白い翼を広げてサリエルも宙に浮き、空から集落を見渡し始めていた。 そういえば依姫達に声をかけ忘れていたけど…………どうやらまだ、下で話し合っているらしい。
諏訪子の一番警戒すべき点は大地をある程度操れること。 それ以外は、私の火力なら正攻法で打ち破れるけど、地面から不意打ちをされては堪らない。 だからこそ私はサリエルさんと共に宙に浮いたのだ。依姫達は……まぁどうにかなるだろう、皆強いし。 ヤマメは土蜘蛛だから、土には強いだろうしね!
「……ものの見事に此処は全滅したようね。 あの魔界神がめんどくさいことを言い出さないといいけど」
「魔界神? 魔界神って、もしかして神綺さーーー」
刹那、下から小さな悲鳴が聞こえてくる。 驚いてサリエルさんと共に下を向けば、依姫達が足元から現れた三匹の白い大蛇ーーーミシャクジ達に襲われ、戦闘体勢を整えながら散開していた所だった。 サリエルさんがすぐに杖を構えて飛び出し、私も魔力と妖力を展開して弾幕を放つ構えをする。
しかし、この時の私の行動はまずかった。 なにせ、前衛四人に後衛一人の布陣を取りながら、後衛である私が直衛も付けずに無防備に構えているのだから。 そのことに私が気付いた時には、既に私の体は二人にーーー諏訪子とぬえに捕らえられてしまっていたのだった…………。
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以上、サリフラ&何気に古明地姉妹脱落してた回でした!
うん、スペルカードルールでもないのだからしょうがない。
そしてサリエルのキャラはあれでいいものか……orz
それではまた次回にてお会いしましょう!




