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東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第5章~黒歴史魔女、参上~
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剣舞、それは剣の語り

どうも、東方転妹録最新話更新です!



……本当に、遅くなって申し訳ありません。

完全にリアルによるものです。

大学生の春休みなんて休みという名の活動期間ですよ本当に。


さて、今回は演出回です!


それでは楽しんでいってください!

ゆっくりしていってね♪

ーーーーー数分後、永遠亭の門前。

ーーーーside フラン



病院施設の門前というあり得ない場所にある落とし穴に落ちてしまった依姫の興奮が冷めるのを待つこと数分、落とし穴の中でひたすらに永遠亭への恨み言を叫んだ依姫は、私を右脇に抱えたままやっと落とし穴から飛び出て、憤怒の表情のまま、門を壊さない程度に、且つ力強く門を叩く。



「頼もう!! 誰ぞいないのか!? 貴様らの人を嘗めた歓迎、しかと味わってやったぞ!! さぁ、誰か出てこい! この私がその腐った根性修正してやろうぞ!!!!」


「よ、依姫!? 気持ちは分かるけど、なにか口調がおかしなことになってるよ!?」


「止めるなフラン! 今の私には天手力男神の力が宿っている! この力をもってして私は彼奴等を正すのだ!!」


「天照大御神を天の岩戸から引き出した神様の力!? むしろよくそれで門が壊れない程度に力を加減できるね!?」



霧達が晴れながらも静寂に包まれた世界に怒り狂った声と宥める声、力強く門を叩く音だけが響き渡る。 加えて誰かが周りに潜んでいるような、張り詰めた緊張感等も永遠亭やその周りからは感じられず、ただただ私と依姫が奏でる騒音だけが響いているというこの状況は、永遠亭に誰もいないということを示していた。



「フラン、こうなれば徹底的にやってやるわ!! 私はこのまま天手力男神の役割を担うから、フランは天宇受賣命の様にそこで舞って頂戴! ただし、絶対に落とし穴には気を付けなさい!! 落ちそうになったらちゃんと声を張り上げるのよ!!!!」


「え、あっ、うん…………って、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」



最早怒りのあまり訳のわからない言動をしている依姫を止めること叶わず、思わず反射的に了承の意を示してしまった私は驚きの声をあげつつも渋々舞の準備をする。 とりあえず門に対峙する依姫の後ろ、落とし穴と依姫の間の位置に立ち、翼に妖力を流して翼の宝石部から様々な色の光を放つ妖力の粒子を宙に散らし、右手で刀を抜いて横凪ぎに一閃、妖力の粒子の光を次々に反射し幻想的な色合いを見せる刀身へと意識を集中させる。

……さて、なんとなく舞をするぞっていう雰囲気になりそうな感じにしてみたけど、この後どうしたらいいのかな? 御姉様から教わった舞踏会でのダンスは合わないだろうし、美鈴から教わった太極拳は今準備した意味がなくなるし……あっ、椛からちょっとだけ教わった剣舞でもやってみようかな? 上手く出来るかまでは分からないけど、今は刀を持ってるし丁度良いよね!



「こらぁ!! 早く誰か出てきなさい!!!? ほら、幼くも美しい一輪の花の様な娘が、正に華やかな舞を舞おうとしているわよ!? 今出てきたなら最初から全部見れるぞ!!!! 私の説教付きでな!!!!」


「ちょっ、依姫ったら変に緊張するようなこと言わないでよ!? というかさっきから口調が色々とおかしいんだってばぁぁ!! ……むぅ、とにかく依姫の気が収まるまで言うこと聞かないとどうしようもないかなぁ…………はぁ……」



一つ溜め息を吐きながら肩幅に足を開き、両目を閉じながら右手に握る刀を横に倒して胸の前に構え、顎を引きながら鍔のすぐ横の峰に左手を添える。 そこからゆっくりと刃の先まで左手で峰をなぞり、心を落ち着かせた。 心を落ち着かせてから数瞬、集中していた私からしてみれば数百年にも感じられた時が過ぎた瞬間に、私は目を見開き中段に刀を両手で構えて目を見開く。 滑るように右足を前に進ませながら突き。 下に向いていた刃を右に向くように回転させ体全体を右へと滑らせながら右手のみに握り直した刀を横へ薙ぐ。 薙いだ方へ体の正面を向け直しながら左足を滑らせずれた体の位置を戻し下段の構え。 そして背後に振り向きながら刀を滑らせ居合いの太刀筋を光らせ…………そうして、自身の想像する相手との立ち合いを頭に浮かべながら自分なりの剣舞を舞う。

きっと天宇受賣命が天照大御神を岩戸から引き出す為に踊った舞とは比べ物にならないほど不格好だろうし、まず剣舞の時点で武骨だと言われかねないけど、それでも自分なりに、舞うことを楽しんでいた。 依姫の声も、門を叩く大きな音も、最早何も私の耳には入らず、滑らせていても土を叩く足音や、剣舞の抑揚に合わせて乱れる自分の呼吸音、着ている服が靡く音、刀が鋭く、細く空気を裂き、そして止まる音だけが、舞を作り、舞に作られる音だけが私の耳に入る。

……どれほどの時が過ぎたのか、依姫によって散らされたとはいえど太陽の、或いは月と星の光は地上に届くことはなく、時間の感覚が軽く失われている私に時間を測る術はなかった。 しかし、何事も終わりは来る。 私の剣舞も、私の思う立ち合いのすべてが終わり、再び目を閉じ、乱れた息を整えながら刀を鞘に仕舞う。 そして周りの全てが静寂に包まれた時、目を開いた先にいたのは怒り狂う依姫ではなく、ただまっすぐに、じっと私のことだけを見ている依姫だった。



「……見事だ。 太刀筋も甘く、己の持つ力を振り回すだけの部分もあったが、それでも見事だった。 フランの思い描いた相手は、誰だったのかな?」


「……椛だよ。 犬走椛、依姫は会ったことないと思う。 昔、本当に吸血鬼の力でレーヴァテインをただ振り回していただけだった私に、剣を教えてくれた白狼天狗」


「そうか……では、先程のフランは、その椛という相手に勝てたのか?」


「いや、ただひたすらに剣だけで戦ったから、最後は負けたよ。 実際に戦ったとしたら、吸血鬼と白狼天狗の身体能力の差で勝つだろうけど、でも、剣だけならきっと負ける」


「成る程な……いや、本当に素晴らしいものを見せてもらった。 例え剣が未熟だとしても、剣舞自体は己の剣をもって想いを形に、剣と一体になって己を表現するもの。 フランは椛という相手を見、そしてその椛との立ち合いを通して剣と一体となり、己を表現していた。 私とフランはいずれ決着を着けなければならない身。 だからこそ、剣舞の中でフランの見ている相手が私なら、と思う程に……本当に見事だった」



それ以上話すことはない、というように依姫はそこで口を閉じ、門前を離れて私の傍に歩み寄る。 真剣な瞳をしつつも、顔に浮かべる柔らかな笑みはどこか寂しそうで、そして期待に溢れていた。 そして私の数歩先で立ち止まった依姫と見つめ合うこと数分、永遠にも近い時を過ごしたかのような感覚の中、空気が弾ける。



「……さっ、それでは幻想郷の探索に戻るとしようか。 どれだけ呼び掛けても出てこない以上、ここには本当に誰もいないのだろう。 それでフラン、永遠亭の門の向きから、これからどの方向へ進むか、次の目的地をどこにするか決めることは出来る?」


「んっ、そうだね。 えっと……門の正面から斜め右方向に行けば人里があると思う。 それにその人里とこの永遠亭の間には命蓮寺があるはず。 命蓮寺にも知り合いは沢山いるし、何より強い人達だから、もしかしたら色々手伝ってもらえるかもしれないよ」


「よし、それならそちらに向かおうか。 誰もいない以上ここにいても仕方がないし、家主が留守にしているのに勝手に上がるわけにもいかないからね。 じゃあフラン、手を出して? 急いだ方がいいだろうし、早く行こう」


「うん! 行こう行こう!!」



手を差し出してきた依姫の手を取り、目的地に向けて飛び立とうとする私。 依姫と笑い合いながら数歩駆け出し、大きく一つ跳ねてそのまま空に飛び上がろうと、地面を強く踏みしめた瞬間、私と依姫は足元にある地面の感触があまりにも弱すぎることに気付いた。

……しかし、悲しいかな。 二人とも気付くのは、あまりにも遅かったのだった。



「いっせーの、せっっえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」


「ま、また落とし穴かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」





ーーーーー

以上、フランの剣舞回でした!



今回はさりげない椛回でもありましたね!

本人出ていませんが(笑)

そして最後の落とし穴……落とし穴に始まり、落とし穴に終わる、それが悪戯兎詐欺の永遠道!



それではまた次回にてお会いしましょう!

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