お先真っ暗? それとも真っ赤?
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、時間か体がもう一つ欲しい今日この頃です。
本当に、切実に。
さて、今回は何気にどでかいフラグが立ちます!
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数分後、月面医療施設。
ーーーーside フラン
格子窓から射し込む小さな光の中に煌めく刀身を写し、一つ息をして一振りしてから鈍く黒光りする鞘へと刀身を収める。 その一連の所作を横で真似する私を見て、依姫は不意を突かれたかの様な表情をしたかと思うと吹き出して笑い始めた。
「あははははっ! フ、フラン、それは少しぐらい手に馴染んだか?」
「うん、馴染んだけど……どうして笑うの?」
「あはは……ま、まぁそんな怖い顔をしないでくれ? あまりにも可愛らしくてな……!」
緊急時に何を暢気なことを……いや、とにかく準備が終わったなら早く依姫と一緒に幻想郷に戻らないと! 半壊したレーヴァテインの代わりの武器の刀も借りたし、依姫と協力すれば今度こそ幻月とも渡り合えるはずだもん!!
……そんなことを考えつつ、後ろへ振り返りヒヒイロカネを背にレーヴァテインを大事そうに抱えて立っている豊姫と視線を合わせる。 優しげな表情で私を見つめる豊姫は、一歩ずつゆっくりと私に近付いてきて、私の頭へと手を伸ばし静かに撫でてくれた。
「……フランちゃん、頑張ってきてね? 月の使者の長が緊急時に二人もいなくなるのは駄目だから、私はここに残らなければならないけれど、その代わり依姫が絶対にフランちゃんを守ってくれるから」
「うん! どうせなら私が依姫を守ってあげるよ!」
「あら、フランちゃんはやっぱり優しくて強いのね!」
「ほう? 私を守るとは大きく出たな……まぁいい、可愛らしい子供の言葉だ。 素直に受け取っておくとしよう」
「むっ! 子供じゃないもん! もう400年くらい生きてるもん!!」
「400年程度、私に比べれば赤子にも至らないわ。 それにしても吸血鬼は不死者だったはずだけど……うん、不死者が生きてるっていうのも何か違和感を感じるわね」
豊姫は撫でる手を止めずに、じゃれあう依姫と私を笑顔のまま眺める。 そして数秒後、豊姫が手を離し一つ瞬きをしたかと思うと、依姫と私の周りの空間が豊姫ごと歪み始めた。
「さぁ、そろそろ行ってきなさい? 幻想郷(|あの地)の異常が収まったことが確認できたらまた二人をここへ連れ戻すから、帰りのことは心配せずにしっかり頑張ってくるのよ」
「うん! それじゃあ行ってくるね、豊姫!」
「行ってきます、姉上」
依姫の言葉の終わりと同時に周りが一瞬白に包まれ、その次の瞬間には豊姫といた部屋ではなく、紅い霧と黒い雲、そして闇に覆い尽くされた空間に私はいた。 視界の晴れない環境の中で一人になっては堪らないと依姫のいた方向に右手を伸ばすと、大丈夫という一言と共に依姫が手を握り返してくれる。 あまりにも濃い霧と雲と闇の中でも、私の目は依姫の姿をぼんやりと映していて、それだけで私は心が落ち着いていた。
「さて、無事に着いた訳だけど……静かだな」
「うん、多分力の弱い妖怪や妖精、動物達は皆隠れてるのかも。 この霧や雲、闇はかなりの妖力が含まれてるみたいだし、中には体調を崩して動けないのもいるかもしれないかな」
「だとすると、やはりこの霧達が邪魔だな。 元が妖力で出来ているなら風よりも……やはり、光か」
依姫が刀を抜き、天へと高く掲げるといつか見た時の様に依姫から光が溢れ始める。 以前と所作は違うとはいえ、目の前で御姉様を焼いたあの光が辺りに広がり、周囲の紅い霧と黒い雲、そして闇を祓い、同時に過剰な妖力に覆われていた草木を清めていった。 妖怪や悪魔を祓い、神や人間に道を示す天照大御神の光が、嘗ては人の身だったといっても今は悪魔である私の進むべき道を示してくれていることに微妙な気持ちになりつつも、私は静かに辺りが清められていくのを眺めていた。
「……ん、とりあえずはこれくらいで良いかな。 さてフラン、行こうか。 恐らくは事情を知ったフランの仲間が幻月とやらと戦っているのだろうけど、こうも静かなのを見るとこの辺りでは戦っていないのだろう。 しかし、ここは一体幻想郷の中の何処なのだろうか……」
「うーん、周りには木しかないし、森の中って位しか分からないや……とりあえず空を飛んでいってみる?」
「ふむ……まぁこの状況では森の中を行こうが空を行こうが大差ないか。 回避行動もしやすいし、フランの言う通り空を行こう」
手を繋いだまま二人で空に飛び上がり、霧達を祓いながら森の上空をゆっくりと進む。 暫く森以外何も現れなかったけど、二十分位進んだところで漸く森以外の物が見えてきた。
「あっ、あれは……」
「ふむ、竹林か。 かなり広いけど……フラン、大きい竹林は幻想郷にどれくらいある? 次の目的地を決める目印にはなりそうか?」
「えっ!? えっと……!」
そういえば、原作通りなら依姫は永琳と会いたがっていたはずだし、確か月の民は輝夜を捕まえようとしてなかったっけ? 大きな竹林と言えば迷いの竹林位だろうし…………そうなると、色々大変なことになるよね。 でも、目印になるにしてもならないにしてもある程度竹林を探索するだろうから、ここで悩んでても仕方ないのかな? いざとなれば私が輝夜と鈴仙を隠しつつ永琳に依姫と話してもらってればいいし、ここは素直に永遠亭のことを伝えておこうかな。
「……えっとね? ここの竹林は多分迷いの竹林。 普段は霧に包まれてるんだけど、多分さっきの紅い霧や黒い雲を祓った時に一緒に祓っちゃったのかな? とにかく、迷いの竹林はある程度目印にはなるけど、方角が分からないから…………うん、永遠亭を探そう!」
「成る程、永遠亭、か。 そこはどんな場所なの?」
「お医者さんだよ! おっきなお屋敷で、いつも兎さんが働いてるの!」
「兎が働いている病院、ね。 なんだか親近感が湧くような湧かないような……まぁ、とりあえず、そこに行ってみましょうか」
「うん! 上空からならすぐに見つかると思うよ!」
会話を終えると二人とも高度を上げ、更に高いところから広範囲の霧達を祓う。 一度目では永遠亭は見つからなかったけど、二度三度と繰り返していると、竹林の中に大きな屋敷の姿が見えてきた。 依姫と一つ視線を交わし、すぐに屋敷へと飛び門の前に降り立つ。 そして先に依姫が地面に足を下ろした時、私は足元の地面の変化に気付いていなかった。
「さて、到ちゃ……くぅぅぅ!!!?」
「えっ!? 依ひ……めぇぇぇぇぇ!?」
浮遊するための霊力を消していた依姫が足元にあった落とし穴に落ちていき、手を繋いで着陸体勢だった私も巻き込まれて穴の中へ落ちていく。 激しくぶつかる音と落下の衝撃が収まった時、私を胸の中に抱き締めて落下の衝撃から守ってくれていた依姫が辛抱たまらないといった様子で叫んでいた。
「……患者が通るであろう門の前に落とし穴とは…………なんなんだこの病院はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!?」
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以上、フランと依姫の二人旅~旅立ち編~回でした!
……落とし穴のある病院、依姫の叫びはとても共感できるかと思います(笑)
落とし穴の作者は……まぁ、一人しかいませんね(笑)
それではまた次回にてお会いしましょう!




