振り回される唐傘、振り回す吸血鬼
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、今回はフランと小傘の今後の関係を示唆してみています。
……まぁ、示唆せずとも分かりきった話なのかもしれませんが(笑)
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数時間後、妖怪の山のふもと。
ーーーーside 小傘
夜、それは妖怪の天下たる時。 神は眠り、人々は妖魔の足音に怯え、妖怪が世界を闊歩する時間。
……でもそれは、博麗の巫女が動いていない時の話。 人の身といえど、その力は戦神すら凌駕し、その知恵は数多の術をねじ伏せる。
ここ幻想郷では例え夜であっても、巫女が動いているならばそれは妖怪の時間ではなく、巫女の時間なのだ。
「……ねぇフラン? 本当にわち、私とフランの二人だけで大丈夫なの?」
「うん、幾ら気の立ってる博麗の巫女といっても何もしてない、むしろ被害者の妖怪相手にはすぐには手を出してこないはずだもん。 もこたんの話通りなら美鈴はこの辺りに博麗の巫女を追ってきてるはずだし、美鈴と合流できれば三人だからね。 万が一があっても大丈夫だよ」
「うーん、それでもやっぱり不安だなぁ。 私はルーミアなら一緒に来ても大丈夫だったと思うけど……」
「まぁ、ルーミアはやろうと思えば封印できてしまうしね? 博麗の巫女は何をしてくるか分からないし、ルーミアだって絶対負けないなんて保証はできないから…………でも、大丈夫だよ小傘。 私達は何かしたわけでもないし、むしろ事態の鎮静化に動いてるんだもん。 幽香さんや幻月達も『狩り』をしている残りの面々を止めに行ってくれてるし、御姉様達は巫女から目立たないように紅魔館に籠ってもらったし、もこたん達には御姉様達の護衛を頼んだし、やれることは大体やった。 これなら巫女も話を聞いてくれるはずだよ!」
月明かりに紛れ、夜の妖怪の山のふもとをフランと並んで歩く。
私とフランの二人で博麗の巫女を止めにいくとフランが言い出した時に渋りに渋り続けたレミリアさん達を自業自得の一言で切り捨て紅魔館に押し込んだフランは、そこから意気揚々と妹紅さんや幽香さん達にレミリアさん達の護衛と『狩り』の鎮圧をお願いし、そのまま私の手を引いて笑顔のままここまで来たんだけど……正直、気が立っている博麗の巫女に会いに行くのに、どうしてフランが笑顔でいられるのかが分からない。
私は怖くて自分より小さなフランにしがみつかないと落ち着いていられないというのに…………。
「うぅ、やっぱり気が引けるなぁ…………唐傘として世を渡り歩いた中で色んな神社の色んな巫女を見たことがあるけど、あそこまで容赦なく祓ってくる巫女なんて博麗の巫女達以外見たことないよ」
「まぁ私も何人か関わったことはあるけど、歴代の博麗の巫女は大体紫さんを中心に一部の妖怪達が育ててきたからね。 勿論神とかも関わったけど、主に関わったのは諏訪子や神奈子さん、雛さんだから、祟り神に軍神、厄神と中々揃いそうにない神が関わったから余計に容赦なくなっちゃったみたい。 それ以外にも毘沙門天の弟子の星も指南したこともあったし…………って、噂をしたらなんとやらかな?」
頬を掻きながら困ったように微笑むフランの話を聞けば聞くほど、歴代の博麗の巫女が恐ろしく強くなったことに納得がいってしまった。
神様の中でも色物の神様に指南を受け、武術に秀でた毘沙門天の弟子の指南を受け、妖怪の賢者と呼ばれる八雲紫さんに指南を受け、その他大勢の妖怪に指南を受け…………挙げ句、歴代の博麗の巫女の内、何人かはフランの指南を受けているのだから、色々と何事にも容赦ないのは当然なのだろう。
そんな風に、色々な意味で博麗の巫女に同情していると、前方から聞き覚えのある声と、なんというかドスの効いた声が聞こえてくる。
聞き覚えのある声はきっと美鈴さんだろう。 この付近にも知り合いの妖怪はいるとはいえ、気の立ってる博麗の巫女が近くにいる時にわざわざ表に出たりする妖怪はいない。
そしてドスの効いた声の方は…………もう、語るまでもないだろう。
「ーーーですから! もう事態は収束に向かっているんですってば!! 妹様が既に騒ぎに荷担した方々の一部を制圧していますし、妹様以外も鎮圧に動き出しているんです! 身内の始末は身内でつけますから!! ほら、神社に戻ってお茶にしましょうよ!? 朝に私が持っていったお菓子がまだ残ってるでしょう!?」
「ーーーそれはもう既に食べ終わってます。 というか貴女が最後の一つを食べたでしょうが。 全く……最近は只でさえ一部の木っ端妖怪達が暴れまくるわ博麗の巫女の後継者を育てないといけないわ、色々やることが山積みですのにこんな騒動を起こしてくれやがるとは、一度お灸を据えて憂さ晴らし…………あー、更正させないと駄目ですよね」
「お灸は良いですから! というか憂さ晴らしとまではっきり言いましたよね!? 巫女さん? 巫女さーん!!!?」
成る程、恐らく美鈴さんはレミリアさん達が『狩り』を始める前に指示を受けて博麗の巫女を監視していた。
そして同時に、博麗の巫女に動きがあればそれを報告した上で博麗の巫女の動きを抑える……そんな役割を担っていたのだろうか。
夜の闇の中、草木の中に身を潜め博麗の巫女と美鈴さんのやり取りを眺めながらそんなことを思いつつ、博麗の巫女への恐怖を拭いきれない私はすがるようにフランの方へ視線を動かす。
目の前の光景を見ているであろうフランは美鈴さんと博麗の巫女の話を聞いて、博麗の巫女のドスの効いた声を聞いてどんな表情をしているのか。
呆れたような表情なのか、悩むような表情なのか、好戦的な表情なのか、至って普通の表情なのか…………一体、どんな表情がフランの横顔に見えるのか。
動かした視線の先、私の視界に映ったフランの表情は、笑顔。
フランは、満面の笑みを私へ向けていた。
「……えっと、フラン? こっち向いてどうしたのさ? あっち見なきゃ、あっち」
「ふふっ、ごめんね? なんていうか、これから小傘を式にしたらこんな風に二人で出歩くことが増えるのかなって、そんな風に考えたらちょっと嬉しくなっちゃって。 きっと今みたいにとっても楽しくなるんだろうなって思ったら、ね?」
「わちき、じゃなくて私としては博麗の巫女に消されかねない今の状況を楽しく感じるのは流石に無理だよ!?」
「むぅ、余裕がないなぁ小傘。 私は小傘が私の初めての式になってくれるっていうだけでこんなにワクワクしてるのに…………私の式になるからにはちゃんといつでも余裕を持てるようになっていかないと駄目だよ? ……さて、巫女さんを宥めにいこっか!」
「えっ、ちょっ、心の準備! わちきに博麗の巫女と対峙するための心の準備をさせてぇぇぇ!!!?」
フランに腕を引かれて影から飛び出した私の視界に写るのは、フランと私の突然の登場に変なポーズを取りながら驚く美鈴さんの姿と、目を丸くして固まった当代の博麗の巫女の姿、そして月明かりに照らされながらその綺麗な金髪と七色の翼を揺らしてこっちを見ているフランの笑顔だった。
ーーーーー
以上、子供二人の戯れ回でした!
うん、フランと小傘はあんな感じが書きやすい。
下手をすれば他の誰よりもフランと小傘はイチャイチャしやすい。
……小傘、将来大丈夫でしょうか?
因みに今回登場した博麗の巫女は、霊夢の三代前位に考えています!
それではまた次回にてお会いしましょう!




