最速天狗、最速の星になる
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、なんだか最近二週間おきになってないかと不安を感じていますが、なんとか無事に日々を過ごしています。
いやね、忙しさがおかしいのです。
来週も土日に集中講義入ったし…………さぁ、本作の展望もリアルもどうしたものやらorz
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数分後、夢幻館の湖のほとり。
ーーーーside フラン
こんばんは! 只今空中でこいしに絡み付かれたから抱き着き返しているフランドール・スカーレットだよ!
まぁつまりは正面から抱き合ってるってことで、決してベアハッグをしてるわけじゃないからね!
……うん、冗談です。 こっそりベアハッグしてます。
因みにこいしと抱き合っていても空中にいるから、何の問題もなく次の目的地に進んでるんだけど…………その前に、あの二人と話をしないといけないよね。
「ね、ねぇフラン? ちょっとだけ愛が重いっていうか、キツいっていうか……いや! これも愛の試練なんだよね!? よーしフラン! バッチこーい!!!!」
「うん、とりあえずこいし、後で第三の目に目潰しを喰らうかほっぺにキスをしてもらうか選んでから静かにしててね?」
「やったー! 棚から牡丹餅だー!! もちろんフランからのキスを所望するよ! フランの愛が欲しいし、お姉ちゃんみたくなりたくないからね!」
「そしてキスされた後に私からぼこされると……いつもの流れなのだー」
悶絶した状態から復活してまもなく、またも悶絶したいとかと問いたくなるこいしを往なしていると、隣で並走していたルーミアが呆れたように声をあげた。
その流れに苦笑を漏らしながら、私はさっきから気にかけていた姉妹へと視線を動かす。
その視線の先に映るのは、元気なツッコミ体質の姉と、クールに見えて結構フリーダムな妹。
夢幻館からずっと着いてきていて、存在を忘れられそうになったことを根に持っているのか、姉の方が時折幽香さんに文句を言おうとしては傘で黙らされている。
……確か、夢幻空間の創造者の片割れだったはずだけど…………まぁ、幽香さんならしょうがないのかな?
「フラーン? さっきからどこ見てるのだー? ちゃんと『狩り』のことも反省してるし、そろそろ構って欲しいのだー……」
「あっ、ちょっとあの姉妹をね…………まぁ今はいいかな。 それにしても、次の目的地は……」
「この方向なら妖怪の山の方だよフラン! きっと文さんもいるだろうし、『狩り』を止めるついでに私達のラブラブな写真を一枚撮ってもらおうよ!」
「ラブラブというより仲の良い姿の写真ね。 とりあえずこいし、静かに出来なかったからさっきの約束は無しだよ」
「………………」
「やれやれ。 こいし、今さら静かにしても遅いのかー」
「違うよ!? ショックで言葉が出なかったんだよ!? えぇい、自分の無意識が煩わしい!」
「フランの前だと第三の目が開いてるくせに、何を言ってるのだー」
端から聞けばもう漫才にしか聞こえないような会話を平然とするルーミアとこいしに思わず笑ってしまいながら、元気な姉妹から視線を外す。
そのまま視線はこいしとルーミアを通り越した後、御姉様がいる方へ動いていた。
今、御姉様は目覚めたさとりに襲われつつもぬえの助けを得ながらくるみちゃんの様々な質問に答え、エリーとオレンジに更なる助けを求めるという器用なことをしている。
恐らく、今この瞬間、あの姉妹のように御姉様の傍にいることは私には出来ないだろう。
今も昔もそれだけ、御姉様の周りの空間というものは私から入りづらいほどに色んな人妖が集まるのだ。
それでも大抵御姉様は私に声を掛けてくれるから、私はその場に溶け込むことができる。
……そう思うと、いつでもどこでも自分の欲求そのままに御姉様に突撃できるさとりは本当に凄いと思うし、羨ましく感じる。
例えどれだけ悲しんでくれたとしても、最後にはきっと御姉様は、私がいなくとも生きていくことができるのだろう。
絶対に、いつもさとりが傍にいて、支えてくれるだろうから…………。
「……それに、なんだかんだでぬえもずっと支えてくれそうだしね」
「どうしたのフラン? ぬえもずっと支えてくれそうって……」
「もしかして、何か寂しいことがあったから小傘に式になってもらおうとしたのかー? それなら一つ言っておくけど、私だって小傘やぬえ以上にずっとフランを支え続けるのだー! なんたって私はフランのお嫁さんであり専属騎士なんだから! こいしは…………逆にフランに支えられてそうなのかー」
「このタイミングでばぁぁ!! どう? 驚いた? 驚けばきっと寂しくなくなるし、わちきのお腹も満たされるしで一石二鳥だよ! 因みにフランの式になるのは全然構わないからね?」
「いや、最初から一緒にいるのは分かってるし、いつかの守護の時みたいにそう簡単には驚かないよ、うん。 まぁ寂しくはならないけど…………それとルーミア? 所詮お嫁さんや専属騎士なんて肩書き、意味なんてないよ! 私はルーミアよりも、さ! き! に! フランの一生の相棒になったんだからね! 況してや巷でよく言われてる、夫婦にはほぼ必ずあるすれ違いの経験だってあるんだから! フランとの絆は私の方が堅いのさ!!………………って、あれ? あの時はルーミアともすれ違ったような……いやまぁうん、良いや!」
「ふふふ…………式を手に入れようとしたのは強くなろうと思ったからっていうのもあるんだけどね。 まぁこいしもルーミアも、それぞれ二人きりで旅をしたことがあるもんね。 ぬえは二人きりで過ごしたこともあったけど……まぁ旅とは言えなかったしなぁ。 あっ、勿論小傘はこのまま式になってもらうつもりだよ! その時は一人称は『私』になるようにするから、そのつもりでね」
「はーい! ……って、えっ?」
私の言葉を固まる小傘。 勿論文字通り空中で停止して固まった訳ではなく、表情が固まっただけの話ではあるけど。
結局いつものように張り合いながらも嬉しいことを言って私に触れてくれるこいしとルーミアも、流石に私が小傘に向けた言葉が気になったのか怪訝な表情をしていた。
特にこいしは思案顔になっていて、こっそりと頭の回転の早いこいしのことだから、きっとすぐに私の考えなど見抜かれてしまうのだろう。
私はこいしが気付くまで待ってみることにしたんだけど…………思ったよりも、あっさりと答えは出てしまった。
「えー、結局式にするのかー……それにしてもなんでまた一人称を『私』にするのだー?」
「わ、わちきって言うのは何か変だったりするのかな? それならそれで色々衝撃的というか……えっ、もしかしてわちきって、本当に変?」
「い、いや、別に変じゃないよ? ただまぁ…………」
「……あー、なんとなく察したよフラン。 いつか、小傘を連れて外の世界に行く気なんでしょ? それも、フランの前世の世界くらいの文明になった頃ぐらいに。 今までも外の世界だと色々言葉は変化してきてて、その中で『わちき』って一人称はまだ生き残ってるけど、これからもそうだとは限らないもんね」
「むぅ……まさかこんな早く分かるなんて。 その通り、前世の時の友達とかは連れずに、出来るだけ少人数で外の世界には行くつもりなんだけど、『わちき』って一人称はきっと古くなってるだろうからね。 それと外に行くのは、幻想郷みたいな隔離結界の中にいなくても、妖怪や神のような存在はそのままで世界の中に存在出来るって概念の種を蒔くことが出来たなら、少なくとも世界の理の中で幻想の存在が殺されることは無くなるからなの。 まぁいざとなれば…………紫さんの助けももらって、最終手段を使うけど」
「んー、一つ聞きたいんだけど、まさかとは思うけどそれは全ての幻想の存在のためなのかー?」
「まさか、そんなつもりはないよ? ただ、御姉様やこいし、ルーミア達が世界から理不尽に殺されたりするのは嫌だから……ただそれだけだよ。 まぁ妖怪によっては世界の理の中で消えていくのもまた宿命って思う妖怪もいるかもしれないけどね? 一度人間として生きたことのある身、況してや寿命を迎えることなく生を終えたことのある身としては、寿命で一生を終えられる大切さを少しは感じてるつもりだから……」
「そっか、フランの前世は、そうだったね…………うん、ちゃんとした理由があるなら私達は文句はないよ。 ねっ、ルーミア、小傘?」
「……ごめん、正直わち……こほんっ、私にはちんぷんかんぷんだった。 まぁとにかく、フランが何か大切なことをしようとしてることだけは分かったから、ちゃんと手伝うよ!」
「小傘……まぁ私も異存はないのだー。 ただ問題があるとするなら…………御義姉様は、どう説得するのだー?」
場の流れとしてはしょうがないけど、これで外の世界に行くときには小傘以外にこいしとルーミアを連れていくことが決まった。
本当のことを言うとこいしもルーミアも連れていきたくはなかったんだけど……式を手に入れたりいろいろして、ルーミアよりも強くなって皆を安心させられるようになってから外に出て、妖怪の存在を安定させる…………その中で、私はルーミアよりも強くなってなきゃいけないし、その時点でルーミアは私より弱いっていうことになる。
そうなるとルーミアを外に連れていくのは不安になるし…………まぁ、元より小傘を連れていこうとしてる時点で結構矛盾した問題なのかもしれない。
そんな問題よりも、今ルーミアに問い掛けられたことの方が大きな問題だ。
「えっと……こっそり、家出?」
「うん、フランの人脈の構成員を総動員して外の世界に繰り出すことになるだろうね」
「じ、じゃあ泣き落とし?」
「きっと御義姉様からもっと凄い泣き落としをし返されて攻略されるフランの姿が目に浮かぶのかー」
「なな、なら文お姉さんに御姉様とさとりのスキャンダル特集を組んでもらって、それで混乱してる間にこっそりと……」
「わち……えっと、わたしでも分かるよ! それはこっそり家出するのと変わらない!」
「全く、その通りですよ。 第一私としては、私とフランさんのスキャンダル特集を組んでみたいものですけどね? あっ、私も外に連れていってくれるというならレミリアさんのスキャンダル組むのも考えてあげますよ、フランさん?」
「うぅー……それなら連れていくしか…………って、え?」
こいしに掛けていたベアハッグを解き、急いで周囲を見渡す。
前、いない……左、いない……後ろ、いない……右、いない……下、いない…………なら、上?
そこで私は右手に妖力を溜めながら、体を捻って体の前面を上空に向ける。
そこにいるのは優しく微笑む文お姉さんで…………私もまた、にっこりと微笑み返しながら、一言呟いた。
「文お姉さん……まずは、『狩り』のお仕置きだよ?」
「…………はい?」
「せーの……それっ!!!!」
次の瞬間、文お姉さんは優しい笑顔のままひそかに星になったのだった…………。
ーーーーー
以上、こいしとルーミアの漫才&フランの更なる目的&文お姉さん、星になる回でした!
……うん、色々詰め込みすぎてる気もしなくもないですね。
とりあえず、さりげなく小傘の一人称を矯正していきます。
そして文お姉さんは笑顔のまま星になります。
それではまた次回にてお会いしましょう!




