※狩られたのは主要妖怪だけではありません
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、今回は第三者視点、巷では神の視点と呼ばれる視点でお送りします。
ついでに擬音を使わない描写をしてみたので、もしよければ、その点について感想をいただけるとありがたいです!
……いやまぁ、演出してみたかったのです、ハイ。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー『狩り』の日、現在。
ーーーーside noone
より紅く染まった紅魔館と夕日を背に、片手にダーインスレイブ、もう片方の手にはぐったりと項垂れた妖怪を掴んで不敵な笑みを浮かべて小傘と椛を見据えるルーミア。
小傘と椛には、正確にはフランも知らないその妖怪を宙に放り捨てると、椛が怪訝な表情でルーミアに問い掛ける。
「……先程の妖怪、私達の山の麓に住んでいた方のようでしたが、どうして彼まで狩られているのですか? フランは彼を知らないでしょう?」
「そう、フランは当然のことながら、あの妖怪もフランのことはよく知らなかったのだー。 ただあれは必要十分な実力を持っていたから……何か起こるより先に、潰しておいたのかー」
「も、もしかしてわちきや椛さんのようにフランの友達じゃなくても、式になることのできる程度の相手は全部狩ってるってこと?」
「そういうことなのだー。 今小傘達を追っているのは私と慧音、洩矢、風見幽香、さとりの五人…………それ以外の、御義姉様達は皆フランの式になりうる者達を狩りに出掛けてるのかー」
ルーミアの最後の一言に、小傘と椛は戦慄し目を見開く。
かつて、八雲紫が煽動した月面戦争とフランドール・スカーレットによる里の守護と家出のための狩りにより大きくその数を減らした妖怪達。
それでも、ようやっと訪れた強豪の妖怪の驚異に怯えることのない、平穏な日常の中で中堅と言える実力を持った妖怪達が最近増えてきていたというのに、今こうして起きている『狩り』のせいで再び数を減らそうとしているのだ。
恐らくフランの為、フランの知り合いである小傘達は息の根を止められることはなかったのだろうが、しかしフランの知り合いでない妖怪達はその限りではない。
……現に、先程ルーミアが放り捨てた妖怪は、小傘と椛からはどう見ても、生きてはいなかったのだ。
「しかし……それでは博麗の巫女が動いてしまうのでは? 幾ら妖怪の間での事とはいえ、幻想郷全体に至る規模の騒ぎになりますよ」
「そ、そうだよ! 博麗の巫女が動いたら、わちき達が伝えなくてもどこからか絶対フランにこの事が知れるよ? そしたらフランからお説教されるよ! わちき知ってるもん、フランのお説教は優しいけどとっても怖いんだから!!」
小傘と椛の言葉を聞き、ルーミアは表情を不敵なものから無表情なものへと変える。
彼女にとって博麗の巫女等取るに足らない相手であることには違いない。
しかしフランは既に当代の博麗の巫女と紫経由で面識があり、博麗の巫女が邪魔をしてくるとなれば勿論小傘の言うようにフランへとこのことが知れるだろう。
それなら博麗の巫女が動き出さないよう、博麗の巫女を惑わして博麗神社に留まるように仕向ければ一番だが……歴代の博麗の巫女、そして当代の博麗の巫女の全てが異様な勘の良さを持っている。
この騒ぎを悟られないように誤魔化すことは不可能に近いだろう。
それにルーミアも、この騒動はフランから本気で嫌われかねないモノであるとは理解しており、もしも本当にフランから嫌われることになれば…………彼女は、何をし始めるか、彼女自身にも分からない。
「……簡単な話なのだー。 確かに博麗の巫女の動きを封じることは出来ないし、動かれればフランにバレてしまうのは必死…………なら、動かれる前にこの『狩り』を終わらせればいいのかー!」
「っ!? 小傘さん、早く私の後ろに!」
「えっ!? う、うん!」
椛が掛け声と共に傍に浮いていた小傘の手を引き、ルーミアに向けて白狼天狗が一様に持つ盾を胴の前に構える。
刹那、ルーミアの黒い闇の翼から同じ闇の塊で構成された烏達が繰り出され、一匹一匹が意思を持つように構えられた盾を避けながら椛にぶつかっていった。
小傘もまた、椛に庇われ烏にぶつかられることがないとはいえ、椛にぶつかり霧散し始めた烏の内未だ動くことのできた一部の烏達につつかれ、傷を負う。
「うわ! うわわっ!?」
「くっ、小傘さん……! 四肢が……!!」
「胴が無事でも手足が動かなければ達磨も同然! このまま二人とも仕留めさせてもらうのだー!」
見た目は綺麗な装飾を施された大剣、しかしその能力は他のどの剣にも大差をつけ、他のどの魔剣にも勝るとも劣らないダーインスレイブの面を小傘と椛に向けるルーミア。
彼女の視線の先には無傷の盾を構えつつ四肢に力が入っていない椛と、その背後で丸くなりながら残った烏を振り払う小傘が映っており…………瞬間、ルーミアは飛び出してダーインスレイブの面を二人に叩きつける様にダーインスレイブを構えた両手を振り抜く。
そしてまともにその一撃を受けた椛の盾は一瞬で砕け散り、同時に貫通するように胴にも衝撃を受けた椛は宙を舞って、未だ妹紅が戦っている下の森へと落下していった…………庇っていた、小傘をそのままに。
「あっ……椛さん!」
「おっと、行かせはしないのかー! これで椛は脱落したのだ…………後は小傘、貴女だけなのだー」
「うっ!? ……あ、あ…………!」
小傘の視線の先に割り込み、ダーインスレイブの面を見せるように右手に構え小傘へとゆっくり近づくルーミア。
その姿はまるで脅える獲物を追い詰める獅子のような、獰猛かつ残忍な印象を小傘に与えた。
そして、ルーミアが遂に小傘をダーインスレイブの間合いに捉え…………。
「さぁ! これで一番の障害を排除す、るっ!?」
「きゃあぁぁぁ…………って、えっ?」
両手に握られ上段に振り上げられたダーインスレイブ。
その大剣は小傘に振り下ろされることなく上段に構え続けられる。
その、圧倒的暴力を象徴する大剣に目を奪われていた小傘は振り下ろされない大剣から視線を徐々に下にずらしていき…………驚愕に満ちたルーミアの表情と、そのルーミアの胸部を貫いて姿を見せている手を、視界に捉えることとなった。
「ば、馬鹿な…………この手、どうして……どうして、気付いたのだー……!?」
「き、気付く……?」
徐々にルーミアの背後の空間が歪んでいるのを小傘は気付き、その歪みに視線を向ける。
八雲紫のスキマとは違うその歪み、しかし歪みの位置とルーミアの胸部を貫いた腕の位置からして、ルーミアに不意打ちをした『誰か』が作った空間に違いない。
……そう小傘が考えている間に、ルーミアの胸部から肘まで姿を見せている『誰か』の左手が動き、ルーミアの顎を静かに指先でなぞりながら後ろに振り向くように誘導する。
そしてルーミアが後ろを向き、小傘もまたルーミアの視線の先を見つめ出した時、遂に『誰か』が顔を見せた。
「……ねぇ、私の騎士? どうして私の友達を襲ってるの? ねぇ、教えてよ…………」
「あ、そ……それ、は…………っ!!」
右手をルーミアの肩に新たに乗せつつ、顎に這わせていた左手を使って言い淀むルーミアの顎を持ち上げ、己の唇をルーミアの唇と重ねる。
その瞬間、重なった唇からルーミアの妖力が勢いよく奪われているのを、ただただ唖然としながら小傘は見ていた。
相手の力を奪うキス、例えばドレインキッスだったり、ヴァンパイアキッスとも呼ばれるそれを扱え、尚且つルーミアの背後を取れるものは数えるほどしかいない。
それは、紅魔館の主、レミリア・スカーレットと…………。
「フ、フラン……!!」
……その妹、フランドール・スカーレットのみだ。
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以上、フラン久々(二話ぶり)登場回でした!
……いやね? フランが出ない本作なんて本作じゃないですよね?
フランが出ないのはいけない、というわけで…………小傘ターン、強制終了しました。
……ハイ、単純にフラン出したかったという作者の欲望なだけです、ハイm(__)m
それでは又次回にてお会いしましょう!




