従者は無茶振りをする相手ではありません
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、いきなりですが、フランは暫く出ません。
フランは暫く出ません。
大事なことなので血涙と共に二回言いました。
小傘が仲間を集め、生き残りを掛けて逃げ惑うストーリーが暫く続きます。
……フランは、暫く、出ないのですorz
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー『狩り』の前日の昼、人里周辺。
ーーーーside 小傘
「じゃあねーおばあちゃーん! ……さーてさて、この挨拶回りが終わったらフランの式ってやつになるんだよね…………」
後ろから前へと振り向きつつ、なんとなく感傷に浸りながら首を傾け、雲一つ無い晴天の青空を大きく広げた傘の縁から覗き込む。
今は朝から挨拶回りを始めて、さっき団子屋のおばあちゃんにお礼の品として私が拵えた土鍋を渡し終えたところ。
早くも残すは慧音さん一人となるわけだけど、何か用事があるのか今日は朝から寺子屋も休みで、慧音さんも家を留守にしていた。
そろそろ昼時だし、もしかしたら戻ってきているのかもしれないと、再びゆっくりとした歩調で慧音さんの家に向かう。
太陽の日差しは、傘の縁から覗いても力強かった。
「……考えてみたら、フランに生活習慣を合わせるなら、こうして太陽の下を歩くことも少なくなるんだよね…………まぁわちきは晴れより雨の方が良いし、別に気にしなくてもいいかな」
「おっ? こんな晴れの日に日傘じゃなくて唐傘かよ……ってなんだ、小傘じゃないか」
「あっ、妹紅さん! こんにちは!」
「おう、こんにちは」
今日は寺子屋が休みだから人通りも少なくなっている慧音さんの家の周りの道で、フランと変態の神様の一件の時からたまに話している妹紅さんに声をかけられた。
確か元々慧音さんとは顔見知りだったらしく、わちきと同じ様にたまに慧音さんの家に遊びに来ている所に出くわすことがある。
だからちょっとした友人でもある妹紅さんの声に立ち止まったわちきは、頭だけでなくそのまま体を妹紅さんへと向けてなんとなく世間話へと洒落込む。
「どうしたんだこんなところで? 最近の人里はあまり妖怪に風当たり良くないだろうに」
「慧音さんに挨拶しに来たんだよ。 フランの式になることになったから、あまり人里にも来なくなるからね。 妹紅さんは今日も遊びに来たの?」
「あぁ、先日輝夜のやつに快勝したから、気分が良くてな。 まぁ代わりにせっかく採った野菜が全部燃えちまったんだが…………と、それはおいといて、式ってことはあれか、フランの式神になるのか」
「まーた喧嘩したんだ? フランが知ったら涙目で怒ってくるよ? それと式についてはそういうことだね。 わちきも元々九十九神みたいなもんでもあるし、式神っていうのも丁度良いかも」
フランにバレたら暫くあやし続けないといけないな……なんて苦笑しながらぼやく妹紅さんの姿に、なんだか可笑しくなったわちきも軽く笑う。
フランと妹紅さんが一緒にいる場面に時々居合わせたことがあるけど、毎回兄と妹か、或いは父と娘みたいなやり取りをしているのだから可笑しくて仕方がない。
無論可笑しいというのも、とっても平和で、とっても幸せな可笑しさだ。
……そんな風に妹紅さんと談笑していると、青空の中に一点の影が生まれ、その一点の影が段々と大きくなっていくことに気付く。
そしてその影の正体が分かるようになった時には、一陣の風がわちきと妹紅さんの頬を撫で、目の前で白い尾が風の中で揺れていた。
「……っと、こんにちは妹紅さん、小傘さん!」
「ん、あの新聞記者の所の白狼天狗か……確か名前は、犬走だったよな?」
「あっ、椛さん! こんにちは!」
一度空中で止まってから、ゆっくりと地に足を付けて笑顔で挨拶をする椛さん。
あの射命丸さんに何度も連れ回されている所を見かけることが多く、特にフランと一緒にいればかなりの確率で会うことができる相手だ。
ただ、確か普段は哨戒天狗として住みかである妖怪の山の警備をしていたはずだけど……今日はどうしたのだろうか?
「椛さん、今日はどうしたの? 哨戒天狗としての仕事は?」
「あぁ、その事なんですが……どうしてか、今日は上から非番にされてしまいまして。 その上文さんから今日は一人で人里の面白いネタを拾えるまで帰ってくるなと追い出されてしまいました…………」
「おいおい、今日は面白いネタどころか寺子屋も休みだし何も起きていないぞ、ここは……。 まぁあれだな、小間使いは大変だな」
「えぇ、本当に……って、寺子屋が休みなんですか?」
「うん、慧音さんが朝から用事があるらしくて留守なんだよね。 わちきもフランの式になることが決まったから挨拶しに行こうと思ったんだけど……」
「……ん? ちょ、ちょっと待ってください。 慧音さんの用事というのも気になりますが、それよりも今、フランの式になることが決まったと言いましたよね?」
「そうだよ! 昨日フランから紅魔館に招待されて、わちきぐらいの実力ならギリギリ式にすることが出来るって言われて、そのままお願いされたから引き受けたよ」
「まぁ複数の式を持つこともあるかもしれないし、小傘以外にも声が掛かるかもしれないけどな」
「な、なんと……納得いくような、羨ましいような…………いえ、ありがとうございます。 これは新聞のネタ候補になりますし、いきなり目的を達成できました!」
どことなく安堵した表情でお礼を言ってくる椛さんの様子に、さっきまでの上司から無茶振りされて落ち込んでいた雰囲気はどこにもなく、わちきもなんとなく感じていた肩の荷が降りる。
妹紅さんもどこか哀れむような、同情するような視線を椛さんに向けていたけど、喜ぶ椛さんを見てからは視線に安堵の気持ちが混じっていたような気がした。
そして暫くそのまま三人で談笑していると、人通りの少ないこの道に、大荷物を抱えてゆっくりと歩いてくる二つの人影が現れた。
「ん? ありゃあ輝夜とこの因幡と……誰だ?」
「もう一人は白玉楼の庭師見習いの妖夢さんですね。 フランの友人の一人ですから、怪しむことはありませんよ。 それにしても二人とも、何か大きな荷を背中に担いでますけど……」
「……あれ、すれ違った人が絶対吃驚するよね。 わちきも今度やってみよう!」
「悪いことは言わん、やめとけ。 お前じゃ、あの荷物を背負ったらそのまま押し潰されて終わるぞ……しっかし、あんなに何を持ってるんだ…………?」
段々と近付いてくる二人の姿を見つめつつ、わちき達は三人揃って呆気に取られてしまう。
あまりにも荷が大き過ぎる、二人の背丈の二倍はありそうなほどだ。
しかも妖夢さんに至っては両手に袋を四つか五つずつ位提げてるし……一体、何の修行をしてるんだろうか?
「……今日は従者というか、小間使いの大変さを垣間見たな…………」
妹紅さんの呟きが風と共に聞こえてきた時、目の前で限界を迎えた二人がそれぞれの荷物に押し潰されつつ倒れ込んでいったのだった……。
ーーーーー
以上、従者の苦労回でした!
……はい、うどみょんは不憫枠です!
椛は小傘と妹紅に救われたのでセーフです!
妹紅は頼れる存在です!
パニック映画なら真っ先に皆を庇ってやられるか最後に皆を庇ってやられる枠です!
小傘は主人公(仮)です!
それでは又次回にてお会いしましょう!




