そこにしかない幸せ
どうも、東方転妹録最新話更新です!
えー、まず更新が遅れてしまい申し訳ありません!
期末試験も終わって夏休み……しかし僕は何気に夏休みが一番忙しかったりしてますorz
さて、今回はレミリアのターンですよ!
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数日後、紅魔館の大図書館。
ーーーーside フラン
日が沈み、西の空が鮮やかな夕焼けから星達が散りばめられた美しい夜の空へと姿を変えた頃、私はそんな空の様子を横目で見つつ魔導書を読み耽っていた。
理由は単純なことで、自分自身を鍛えるため。
私や御姉様のような悪魔や妖怪は元々身体能力が圧倒的に高いが為に、一般的に人間がするような運動等では身体能力は上がらない。
それでも無理矢理身体能力を挙げるような運動をするとしたら、正に地獄のような運動をしなければならない。
しかし、そんな運動をしなくても基礎的な身体能力を底上げできるのが、悪魔や妖怪が存在するための源となる妖力や魔力を上手く操れるようになることなのだ。
「……むぅ、この本でも二つの属性の合成までしか載ってないのかぁ…………」
「妹様、紅茶が入りましたよ? 一度休憩して一息つきませんか?」
「私もクッキーを焼いてみましたよ! 是非食べてくださいな!!」
「あっ、ありがとうこあ、お燐! そうだね、ちょっと休憩しよっと」
紅魔館にある大きく広い図書館、その一角で椅子に腰掛け一心不乱に机へと向かっていた私に、優しげな笑みを浮かべたこあと、無邪気で元気一杯な笑顔を浮かべたお燐が声をかけてくる。
その声に気付いた私は、机の上にある幾つかの魔導書の内、まだ読んでいない一冊の本を片手にこあが用意したお茶用の机へと足を進めた。
休憩と言いながらも、片手に魔導書を持つ私に二人とも少し困ったような表情を向け、今度は苦笑いを浮かべている。
「さぁ妹様、こちらへどうぞ…………それにしても、そんなに何を調べてるんです? もっと強くなるんだーって言ってましたし、攻撃魔法とか調べているんですか?」
「ありがとうこあ! ……んー、まぁ攻撃魔法って言ったら攻撃魔法なんだけどね? 三属性以上の合成魔法に関する魔導書がないかなーって調べてたの」
「にゃん? 属性って、水とか火とか風とか、そんな感じのですか?」
「あー、そういえばお燐はほとんど魔法について知らなかったっけ? えっとね、魔法の世界だと大きく、水、火、土、木、金、日、月の七種類の属性があるの。 ただしこれは大きい分類だから、細かく言えば精霊の種類だけ魔法の属性はあるんだよ!」
「へー、属性っていうだけでも色々あるんですねぇ。 じゃあフラン様はどの属性が得意だったり好きだったりするんです?」
「んーと、好きなのは火と月と木と土で、得意なのは火と月かな。 水と金と日は嫌いじゃないけど、どうしても種族的に相性が良くないからね」
そう、吸血鬼としては水と金と日とは相性が悪い。
本来誕生時には弱点のない絶対強者だった吸血鬼も、時が過ぎていく中で数々の弱点を概念的に付けられてしまったんだけど、その吸血鬼の弱点には流水がダメだったり、銀の弾丸や十字架がダメだったり、皆が知っているように太陽がダメだったりするものがある。
魔法で水を操れば、魔法で水が動く時に流水となってしまうし、金は特に神や天使辺りに祝福された金属を操ろうとしてしまえば大きな反動を受けてしまうことになるし、日は万が一太陽光でも再現してしまえば、燃え尽きることは無いにしても自分がダメージを受けてしまったりするから、水と金と日は相性が悪いのだ。
……まぁ、吸血鬼としての弱点を破壊した私にはほとんど関係のない話ではあるんだけどね。
「確かに、種族的な相性は中々どうにもできませんね。 じゃあ妹様は火と月と土と木のいずれか三つ、或いは全部を合成させようと?」
「うん! そうしたら私の好きな魔法が最も素敵な魔法になるはずだもん! ……ただ、それ以前に三つ以上の属性の合成魔法について書かれた魔導書が無いんだよね……あっ、これ美味しい!」
こあとお燐と話しながらクッキーを一枚手に取り、口へと運ぶ。
すると一口噛んだ瞬間に程良い甘さが口の中に広がり、クッキーの欠片を舌の上を転がすと口の中全体が幸せな気分に包まれていく。
その幸せな気分に頬を緩ませつつこあの紅茶に口を付ければ、ほんの少しの渋味と優しく鼻と口の中を撫でる紅茶の香りが広がり、さっきのクッキーの甘味と交ざって私の心も体もゆっくりと蕩けていった。
「よかったぁ……! フラン様に喜んでもらえて!」
「私と一緒に練習しましたしね。 お空さんは美鈴さんに何か教えていただいているみたいでしたけど……まっ、これで私達が一歩リードってことですよお燐さん!」
「だね! やったねこあさん!」
「えっと……いつの間に、こあとお燐ペアと美鈴とお空ペアで競い始めてたの……?」
美味しい紅茶とクッキーの組み合わせに幸せな気分になっていても、流石にツッコミをせずにはいられなかった。
しかしそのツッコミも興奮する二人の前には露と消え、虚しく大きな迷路みたいに広く複雑な図書館の奥へと消えていく。
そんな状況に、今度は私が苦笑いしつつ、持ってきて膝の上に置いていた一冊の魔導書を広げる。
興奮する二人をよそに魔導書に目を通していると、ふとあるページで私の手が止まった。
「『複数の属性魔法による互いの干渉について』……? 合成じゃないけど、干渉か……それにしても、書いてる表現がややこしいなぁ……」
「あら、それはシンプルな話よ? 水は火を消し、火は金を溶かし、金は木を削り、木は土から栄養を吸い上げ、土は水を吸う。 月は日がなくば輝けず、日は月がなくば全てを照らせない。 まぁ、現実には例外もあるけれどね」
「ひゃっ!? お、御姉様!!!? いつから後ろにいたの!?」
魔導書に意識を集中させていた私の背後から、突然二本の手が延びてきて私の体を椅子の背もたれに縫い付ける。
そして首元には私の大好きな匂いと温もりが現れ、私の心に大きな驚きを生んだ。
「ついさっき、とても美味しそうな紅茶とクッキーの匂いがしたから来てみたの。 そうしたらもっと美味しそうな花がいたから、そっちを食べることにしただけよ?」
「ひゃう!? お、御姉様……ちょっと、恥ずかしいよぉ……!」
「ふふっ、少しくらい良いじゃない、美味しそうなお花さん? このお腹を空かせた哀れな蝶に花の蜜を恵んでくださいな」
「も、もう御姉様ったら! こ、これだけだからね!?」
ーーチュッ……。
私の首元から顔を上げ、からかうように覗き込んでくる御姉様に、少し恥ずかしがりながりもキスをする。
すると御姉様は満足そうな笑みを浮かべながら椅子の前に体を持ってくると、今度は椅子の背もたれ越しではなく直接私のことを抱き締めてくれた。
そうして私を包み込んでくれた安心できる温もりの存在に、思わず私は魔導書の存在を忘れ温もりを感じることに全身の神経を働かせる。
「……なんたること、この私が御嬢様に遅れをとってしまうとは…………!?」
「一瞬の隙にフラン様を陥落させた!? さ、流石レミリア様…………!」
どこからか声が聞こえてきた気がしたけど、御姉様の優しい温もりに心も体も委ねていた私にはどこか遠くから聞こえてきた音のような物にしか認識できず、気にすることなく御姉様の温もりを感じ続ける。
結局この後、パルスィが素晴らしい笑顔で図書館に駆け込んでくるまで私はこあとお燐の存在を忘れ、御姉様の腕の中で、御姉様と一緒にいる時でしか感じることのできない幸福を味わい続けたのだった……。
ーーーーー
以上、レミリアターン炸裂回でした!
うん、そろそろこあがフランを奪い返される場面があっても良いと思ったんです(レミフラが無性に書きたくなったなんてことはあ……な、なくもないです)。
それと因みに、暫くは単発話が続いていきます!
それではまた次回にてお会いしましょう!




