男性にとっても女性にとっても弱点です by諏訪子
どうも、東方転妹録最新話です!
まず始めに、更新が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
義理のためというか、2月中頃から3月一杯までボランティアに精を出しているので、遂には今回のようなことになってしまったことに謝罪申し上げます。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数十分後、地霊殿、客間前。
ーーーーside フラン
私の目の前にそびえ立つ普通の扉。
その扉には客間と書かれたプレートが提げられているけど、漂う雰囲気は普通の客間のそれとは違う不気味な瘴気だった。
私やパルスィの腕に抱かれた猫と烏だけではなく、御姉様やルーミア、パルスィ自身もまた漂う瘴気に怯えている。
「……1つだけ、言っていいのかー」
「ええ、どうぞ……」
私とパルスィを庇うように扉と対峙する御姉様とルーミアが深刻そうに声を潜め、お互いを伺い合う。
その手にはグングニルとダーインスレイブの代わりに私の作った二つのハリセンが握られていて、とてもおかしな光景を造り出していた。
「私……この戦いが終わったら、フランに告白するのだー!」
「残念、告白するのは私よ!!」
ーーガチャッ、バタンッ!!!!
勢いよく扉を開き御姉様とルーミアが客間へと突撃する。
小さな背中が扉の中へと吸い込まれていき、扉を三歩越えた頃には扉が閉まって見えなくなってしまった。
私とパルスィはただただ静かにその背中を見送り、武運を祈りながらそっと呟く。
「その言葉、本人の前で言うことじゃないでしょうに……」
「御姉様、ルーミア…………それはおもいっきり死亡フラグだよ……」
先程の光景を端から見れば真面目な場面なのに、それでもどこか締まらない二人に呆れと不安を混ぜた言葉を送ったのだった。
ーーーーー数分後。
「……まだ、出てこないね」
「そうね、音もしてこないし……フラン、そろそろ私達も構えておいた方が良いかもしれないわ」
「うん。 よろしくね、グングニル、ダーインスレイブ……」
数分が経っても客間から出てこない御姉様とルーミア。
閉じた扉越しに聞こえてくる音もなく、客間の外は沈黙が広がっていた。
……始まりは、御姉様とルーミアが私の誤解を解いた時に私がぬえを元に戻したいと言ったことだった。
何せ私が起きてからの時間だけではなく寝ている間もあのままだったのだから、流石にそろそろ心配になってきたのだ。
舞い続ける妖精メイド達に、優しく微笑みながら無限に涙を流し続けるぬえ…………いい加減正気に戻さないと、怖い。
そしてそのことを聞いた御姉様とルーミアは私に大きな音が出て叩ける物を作るように頼み、私の身を案じてグングニルとダーインスレイブを預けてくれた。
そこで私も念の為、レーヴァテインを片手が塞がってるパルスィに自衛の為に預け、ハリセンを二つ作って御姉様とルーミアに渡し、今に至るんだけど…………。
「それじゃあフラン、開けるわよ? 準備は良い?」
「うん! いつでも行けるよ!」
パルスィが左腕で猫と烏を抱えつつレーヴァテインを掴み、右手で扉の取っ手を握る。
私もまたグングニルを右手で腰に添えて構えながら左手でダーインスレイブを背中まで振りかぶり、静かに腰を落としていつでも飛び込める体勢を整えた。
それを確認したパルスィが、1つ息を吐いて取っ手を握る手に力を入れる……。
ーーガチャッ!
「御姉様! ルーミア!…………って、あれ?」
構えはそのままに客間に飛び込んだ私が目にした光景……それは遅れて飛び込んできたパルスィが静かに溜め息を吐くような光景だった。
「私は思うんだ、フランは紳士的な対応に弱いってね。 だからこそ一気にそこを攻めて落とすのが一番さ」
「何を言っているのかしら? フラン自身はゆっくりと相手との思い出を育む中で相手に愛情を覚えていくタイプよ。 例えある程度流されやすいとはいえ、最後の一線を踏み越えて落ちるということはまずないわ」
「……レミリアは私のモノです! いい加減諦めなさい泥棒蜘蛛!!!!」
「そんな束縛をするような奴にレミリアさんは預けられないよ! 蜘蛛の糸に絡まって道端に寝転んでてよ!!!!」
「ぬえ! それはダメだよ!!!! それはフランじゃなくてルーミアだってばぁぁぁ!!!!!?」
「うぅぅぅぅぅぅ!!!? ぬえのくせにこの馬鹿力はなんなのだー!? ぬえの胸を吸う気なんて一片もないのかー!!!!」
「ふふふ……フラン…………私の可愛いフラン……」
中央にあるぬえが座っている椅子の横で真剣な表情で私のことを話す御姉様と諏訪子、その更に横で互いの手を掴み合って力比べをしているさとりとヤマメ…………そして最も目につくのが、ルーミアを私と勘違いしているのか、優しい笑顔で焦点のあってない瞳のぬえがルーミアを抱き抱えて乳を吸わせようとしている光景だった。
こいしが背後からぬえを羽交い締めにし、ルーミアが両手を突っ張ってぬえから逃げようとしているけど、何故か力が強くなっているぬえの方が若干優勢のようだ。
周りで舞っている妖精メイドの踊りに何か効果があるのか…………それは本人達にしか分からない。
「……パルスィ、これ、どうしよう?」
「えっ? ちょっ、私に聞かれても……」
最初に扉から漂っていた瘴気はどこへ消えたのか、というかこの状況をどうすればいいのか…………そんなことを考えていた矢先のことだった。
「……あ、れ…………あぁ、フランじゃん……!」
ーー……ガバッ!
「うわっ!? あっ、フ、フラン!?」
「こいし!? くっ、フラン! 逃げるのだぁぁぁぁぁ!!!!」
「えっ!? あ、ぬえ……こ、こっちに……!!!!」
私の姿を認識したのか、私だと勘違いしていたルーミアと羽交い締めにしていたこいし一気に振り払い、ぬえが私の方へ飛び出してくる。
体勢を崩されたこいしとルーミアが声をあげたけど、その時には私の目の前にぬえが到達していた。
ーーガシッ、シュルルッ!
「うっ……触手が……!?」
「あぁもう、フランから離れなさい!」
両手で肩を掴まれ、ぬえの翼である触手が私の両手と翼を絡めとる。
動揺していた私は呆気なく絡めとられてしまい、体の自由を奪われてしまった。
そこですかさずパルスィがレーヴァテインを振りかぶってぬえを叩こうとしたけど……。
ーーヒュッ! ビシッ!!
「痛っ!? 地味に痛い!!!?」
一本の触手に弾かれて、パルスィが前世で見たリアクション芸人並みに大きく吹き飛ばされる。
それを唖然と眺めていた間にもぬえは私との体の間の距離を詰め、ほぼ密着状態に持ち込んできていた。
このままではルーミアのように乳を吸わされる羽目になる…………それは、それだけは嫌だよ!!!! 主にプライド的に!
「うぅ……吸血鬼の力、バカにしたらダメだよ!」
ーー……ドゴォッ!!!!!!!!
「っぁ!!!!!!!!!?」
両手と翼を封じられた私に出来る反撃……それは頭突きと、足を使った金的への攻撃だけ。
そして特に有効なのは金的……そこまで考えた時、私はすぐさま脚を振り上げていた。
体が密着しているために当たる部分は太股になるとはいえ、そこは吸血鬼、嘗めてはいけない。
膝蹴りの要領で振り上げた脚は見事にぬえの股関節をぶち抜き、金的へ命中する。
その衝撃はダイナマイトもかくやという程の音をたて、ぬえの体が大きく跳ね上がった。
そしてぬえの体から力が抜け、するりと仰向けに倒れ込んでいく。
ーー…………バタッ。
「えへへ、いっちょあがりだよ!!」
「……やっぱり、一気に攻めるのはやめとくよ」
「……えぇ、それが懸命だわ」
白目で倒れ込んだぬえに向かって、ピースをしながらふと思い付いた決め台詞を投げ掛けてみた。
勿論ぬえから反応は来なかったし、何故かさとりとヤマメは取っ組み合ったまま唖然とこちらを見ていて、ルーミアとこいしは顔を青くしながら股間を隠し、パルスィはいい笑顔になっている。
そして何より、御姉様と諏訪子が恐ろしい物を見たとでもいうかのような表情でぬえに合掌していた姿が印象的だったのだった…………。
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以上、フランの一撃回でした!
……金的は、痛い、ただそれだけですね。
それではまた次回にてお会いしましょう!




