血の戦場と鼻血の戦場
どうも、東方転妹録最新話です!
えー、まずは大変更新が遅れてしまい、本当に申し訳ありません!
昨日納車したバイクをずっと乗り回していたら、どっと疲れて完璧に寝落ちしてしまいました!
……でも、本当に楽しかったなぁ。
さて、今回は久々にフランが登場しますよ!
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー同刻、紅魔館エントランス。
ーーーーside 警備メイド第八部隊隊長
「くっ!? しまっ……あっ、や、やめて! 来ないで!!!?」
「ふふふふふっ! 良い反応するわね? そのまま身を委ねーーーー」
ーーー……ザシュッ!!
鮮やかな紅を撒き散らしながら、エントランスの宙に舞う一つの塊。
それは先程私の部隊の隊員を襲っていた者であり、私の槍の一撃で今は言葉も喋られない骸と化した者の頭部だ。
相手も私達と同じ妖精である故に、流石に首を跳ねられては私達と同様に自然に還らざるを得ない。
そうなれば自分がかつて生まれた場所で記憶を保持したまま復活するまで、ただ眠るだけしかなくなる
…………それが、私達妖精のあり方。
そんなことを思い返しながら首を失った体を蹴飛ばし、未だ戦闘の続く周囲を警戒しながら部下へと手を伸ばす。
「……これでよし。 大丈夫? 一旦下がって体勢を立て直しなさい」
「は、はい、ありがとうございます隊長!」
どうにも軽い負傷を負っていたようで、部下は左腕を庇いながら後方へ下がっていった。
そのまま部下が下がっていった方向へ視線を飛ばすと、そこには第九と第十部隊と共に私達が必死になって確保した撤退スペースの様子が見える。
医務担当の妖精が流れ弾等に注意しつつ走り回りながら必死に負傷した隊員達の治療を行っている…………しかし、そんな医務担当の妖精の努力虚しく、撤退スペースには戦闘に復帰する隊員よりも多く次々と負傷した隊員が下がっていき、治療が追い付いていないようだった。
「……このままだとじり貧、いずれ敵に抜かれる…………御嬢様は総督自ら護衛なさってくださっているから問題ないとして、ここを突破されれば妹様が危険に晒されてしまうかもしれない……」
突然の襲撃、それは紅魔館の外と中の両方から行われた。
妖怪の山と呼ばれる御嬢様達の御友人が住まう山の穴から来た者と、かつての妹様の御部屋であったという地下室に開いている穴の両方から突如『あの妖精達』が湧いてきたのだ。
その為御嬢様と総督、妹様と憲兵の二組に分断され、今では妹様達の安否が不明になってしまっている。
「それでも何処かで専属メイドの方々が護衛をしてくださっているはずですが…………しかし、少しでも妹様に脅威を及ぼされない為にもここは……譲れませんっ!!!!」
ーーーズバッ!!!!
「ぎゃふっ!?」
一瞬ここを抜かれてしまう等と考えてしまったことを恥ながら、隙有りと見たのか背後から飛びかかってきた相手を目もくれず背後に振るった槍先で上半身と下半身の二つに割く。
そして、命に変えても守るべき妹様の笑顔を思い出しながら私は次の敵を切り裂くために戦場を闊歩し始めた。
「…………ふ、ふふ……まだ、まだ………………!!!!」
……こちらを睨み、不気味な笑顔を浮かべる先程切り捨てた首だけの敵に気付かないまま。
ーーーーー時は戻り、襲撃開始から十五分、フランの私室。
ーーーーside ぬえ
「D班並びにE班! 全てのカーテンを締めた後に幻覚結界を展開! フランの部屋を敵から隠せ!!」
「了解!!」
「……ゾンビじゃない…………? でも、出てきたのは外と地下室からだし…………どういうことだろう…………?」
左手と左側の触手全てを使ってフランを抱き抱え、槍と右側の触手で周囲からの攻撃を何時でも受け止める体勢を整える。
そしてフランの専属メイドのD班とE班に指示を出しフランの部屋を敵から見えないようにさせた。
……って言っても、これだけ迅速に紅魔館内に大量の部隊を展開出来る相手だし、幻覚で隠した所でバレるのも時間の問題だよね。
敵は外からも来てたけど、一部は地下室から来てたみたいだし…………相手は、地霊殿か。
それとフランの呟いてる『ゾンビじゃない?』って言葉が気になるけど……。
「A班、フランに暖かい紅茶を出してあげて。 B班は扉の警戒、C班は無防備になってるD班とE班の護衛に着いて」
「了解しました!」
D班とE班が結界を張り終わり、一先ずの安全領域の確保が出来たのを見計らってフランの警護を解く。
そしてそのままA班以外の専属メイド達はフランの部屋の警備に着かせ、私はA班を伴いながら未だ考え事を続けるフランをベッドまで運んだ。
フランを包む触手だけはそのままに、ベッドの淵にフランと並んで腰掛けると、A班がしずしずとテーブルと紅茶を用意し、フランの手の届きやすい位置に設置する。
……何時見破られるかは分からないとはいえ、話をするぐらいは出来るよね。
となると、まずは自分の世界で考え事をしてるお姫様をこっちの世界に呼び戻そっか。
「ほら、フラン? メイド達が紅茶を用意してくれたから、一旦紅茶を飲んでおきなよ。 ついでに紅茶を飲んだらその『ゾンビじゃない』ってのが何なのか教えてくれない?」
「……えっ!? あっ、う、うん! ありがとう!! それじゃあいただきます!」
「はい、どうぞ」
頭を撫でながらゆっくりと話し掛けると、フランが慌てながら現実に戻ってくる。
そして誰が注いだか分からなかったのか、A班の全員を見渡しながらお礼を言って紅茶を飲み始めようとするフランに、紅茶を注いだらしいメイドがそっと微笑みながら返事をしていた。
……全く、どうしてこう子供っぽい所が抜けないと言うか何と言うか。
それがまた良いんだけど……前世でもフランはこんな感じだったのかな?
いつかアイツらとっちめて聞き出そっと……!
「ふぅっ、御馳走様! 美味しかったよ、ありがとう!!」
「御粗末様でした、こちらこそありがとうございます!」
「…………?」
満足気な笑顔で、今度こそは紅茶を注いでくれたメイドに向けてお礼を言うフラン。
しかし逆にお礼を言われてしまったことにフランは疑問を感じたらしく、首を傾げてきょとんとしていた。
……まぁ、流石に美味しそうに紅茶を飲むフランに興奮しましたなんて言えないよね。
紅茶を注いだメイドだけじゃなくA班のメイドは全員後ろ手に鼻血にまみれたちり紙を持ってるし……フランは知らなくて良いことだね、知らぬが仏ってやつか。
でも…………B班もC班もD班もE班も皆必死に鼻血拭ってるし、ってか丁度フランの死角にいるE班に至っては今の首を傾げるフランを見て更に鼻血吹き出してるし…………気持ちは分かるけどしっかり警備しとけっての!!
「まぁ、良いのかな? あっ、ねぇねぇぬえ、今襲ってきてる相手って普通の妖精だよね?」
「えっ? まぁ……見た目は確実に普通の妖精だね。 行動もおおよその戦闘力も、多少訓練された程度の妖精ぐらいの強さだし」
「そっかぁ……んー、どうしてかなぁ?」
「どうしてって?」
再びフランが自分の世界に入ってしまう前に、続きを促すことで私との会話へと意識を向けさせる。
すると、まるで『よくぞ聞いてくれた!』とでも言いたいかのように唐突にこっちにフランが身を乗り出して来た。
……どうでもいいけどフラン! 顔が近いし私の左の太股に置かれた両手が柔らかくて超気持ち良いよ!!
幸せです! ありがとう!!!!
「あのねぬえ! 前世の知識の中での話なんだけど、地霊殿の妖精ってゾンビフェアリーっていう、一度死んで変な感じに死体の姿で甦った妖精のはずなの!!」
「変な感じに……? それって、さとりとかみたいに変態的な感じに復活するってこと?」
「そ、それは分かんないや…………あっ、でもね! まだ続きがあるんだよ!」
「続き?」
「うん! ゾンビフェアリーってね、さっき話した設定で楽しんでる普通の妖精なんだよ!! 気合い入れて死体に仮装してるの!」
「結局普通の妖精じゃん!?」
フランの思わせぶりな言葉の後のオチに、専属メイド全員がずっこける。
私はといえば、思わずフランにツッコミながら再びきょとんとするフランを抱き締めていた。
……うん、可愛いから仕方がない! 可愛いから許す!!
ついでに可愛いフランは抱き締めるのが普通! だから私はフランを抱き締める、何もおかしいことじゃない!!!!
「えっと、じゃあ普通に倒せば問題ないってことで良いのフラン?」
「んー、多分だけどね? ゾンビであることに楽しみを覚えてるだろうし、首を跳ねたりしただけだと死体の姿のままでまた動き出せるような術式を自分に組み込んでると思うよ?」
「それじゃあ、普通の妖精なら致命打になるような一撃を受けても、あの妖精達には意味がないってこと?」
「うん……きっと、頭を粉々に潰さないと止まらないと思うよ。 ゾンビって頭を破壊しないと死なないものだもん」
「……どうにかしてその情報を皆に伝えたいけど、水晶は壊れちゃったしなぁ」
懐から砕けてしまった連絡用の水晶の欠片を取り出す。
勿論もうその欠片は本来の用途には使えないし、相手にぶん投げて攻撃するぐらいしか使い道はない。
今頃対策に追われているであろうフランの姉さんとルーミアに、心の片隅でほんの少しだけ合掌したのだった…………。
ーーーーー
以上、飛び散る鮮血&飛び散る鼻血回でした!
うん、フランの周りは何時でも平和なんだ(笑)
だからレミリアとルーミアは大変だったり……(笑)
それではまた次回にてお会いしましょう!




