突然の邂逅、理想を許さぬ今の現実
どうも、東方転妹録最新話です!
えー、今回はフラン視点なのにほぼ諏訪子&??の会話に……まぁ、真面目な回だししょうがない、よね?
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー法界の結界内部。
ーーーーside オーエン(フラン)
諏訪子に手を引かれ、結界にぽっかりと空いた穴に飛び込んだ私の視界に飛び込んだモノ…………それは、柔らかな白いクッションのようなものだった。
……あれ? 原作の法界にこんなのあったっけ?
っていうかこのままじゃ突っ込んじゃう!?
ーーーポスンッ!
「わっ!?」
「きゃっ!?」
「あら、元気の良い子達ですね?」
いきなり目の前に何かがあるなんて思っていなかったであろう諏訪子も目の前のクッションみたいなモノに飛び込んでいき、引かれていた私も当然一緒に飛び込んでしまう。
そして諏訪子と一緒に驚きの声を上げてクッションみたいなモノに飛び込むと、頭の上からまるで母親が子供に語りかける時のように穏やかな音色の声が聞こえてきた。
「二人とも大丈夫ですか? どこか強く打ってしまってはいませんか?」
「えっ、あっ、私は大丈夫だよ! 諏訪子は大丈夫?」
「……うわぁーお、いきなりターゲットと遭遇したよ…………」
私達を気遣う声に頭をあげる前に反射的に返事をしながら諏訪子に声を掛けると、諏訪子からは返事ではなく何かに呆れるような、驚きの音色を含んだ声が聞こえた。
……ターゲット? ターゲットっていうことは私達の目的の相手である白蓮だよね…………あっ、もしかして上から聞こえてくるこの声って……!
「……あっ……えっと、その……あ、ありがとう!」
「いえいえ、怪我も無さそうで良かったです。 ただ、飛び込んだりすると危険ですからこれからは気を付けましょうね?」
「うん! ……ってそうじゃなくて!! 諏訪子、台詞台詞!!!!」
「せ、台詞!? いや、教えてもらってない……っていうかもしかしてアドリブでするの!!!?」
「お願い諏訪子! 後で紅茶いれてあげるから!!」
思考が結果に結び付いた途端、弾けるように頭を上げた先の視界に映り込んだ紫と金色のグラデーションの綺麗な髪をした優しそうな女性の顔。
その女性の口から紡がれるこちらを気遣う音色に素直に返事をして、直後にここに来た目的を思い出した私はすぐさま諏訪子の方に顔を向けて『諏訪子(ごめんね諏訪子)に責任丸投げ! それで皆ハッピーなはず作戦!』を始めるように声を掛ける。
……名前なんてさっきつけたし、台詞も考え終わって無かったけど…………これは、きっと……その、しょうがないよね。
うぅ……ごめんなさい諏訪子……!
「台詞? ふふっ、どうやら元気なお客さんみたいですね。 さぁ、どんな台詞を聞かせてもらえるのでしょうか?」
「ちょっ!? 台詞を言う前にハードル上げるのやめてよ!!!? 只でさえフランにアドリブさせられるんだから!!!!」
「アドリブ? 先程も仰っていましたが、一体何のことなのでしょうか?」
「あぅ……諏訪子、ごめんなさい……台詞を考えられなくて……!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!? フランごめん責めてないし怒ってないからお願いだから泣かないで!!!? そしてガンガン行く僧侶はそこ無視してて! フラン以外に通じない言葉だったの忘れてた私が悪かったから!!」
私と諏訪子を胸元に受け止めてくれている女性の一言で、女性の胸元から飛び出し指を指しながら全力でツッコミを入れる諏訪子。
その内容に思わず私が落ち込んでしまうと、諏訪子は女性にも一声掛けつつ私にも声をかけてくれる。
そして、一通り言い切ってから少し落ち着きを取り戻した諏訪子は、再び女性に向けて指を指すと赤面したままの顔でアドリブであろう言葉を発し始めた。
「こほんっ! ……我は祟り神の頂点に立ち、諏訪大社の主神の一柱である洩矢諏訪子だ。 そしてそこにいるのは大陸の大妖、吸血鬼の最上位に君臨し紅魔館という一勢力を指揮するレミリア・スカーレットの肉親、フランドール・スカーレット。 人と妖怪、そして神の平等と平和を謳い人に封印されし僧侶、聖白蓮よ。 我らはお前を解放しに来た!」
「諏訪大社の主神!? それに大陸の大妖とは…………大神ともあろう御方が、何故、大陸の大妖と共に私などを解放しに? それに私は仏の道を歩む者、確かに人と妖怪、そして神、生きとし生ける全ての者の平等と平和を謳ってはいますが、貴女からすれば異なる道を歩む者ですよ?」
「それはそこにいるフランが我にそなたの解放を望んだからだ。 フランは妖怪でありながらこの世で最も澄んだ心を持つ愛しき者よ。 我はその心に惹かれたからこそ、フランの願いを叶えようとしている……ただそれだけ、理由などそれだけで十分だ」
どんなに動揺してても流石は主神、そう評すべきなのかな?
恐らくは神として誰かに接する時の口調なんだろうけど、赤面したままであることには変わりないのに全く違和感を感じさせない雰囲気と威厳を身に纏っている。
ただ……私が今はオーエンと名乗っているのを忘れてしまっているのだけはいただけないよ!
後できっちりと説教するんだから!
「この子が私の解放を望んでくれたのですか……? しかし、面識もないはずなのに、何故……」
「雲居一輪、雲山、村紗水蜜、ナズーリン、寅丸星……フランの友の名だ」
「なっ!!!? あの子達の!?」
「特に星とは親友って言えるぐらい長くて親しい付き合いなんだよ!」
諏訪子の一言、そして私の補足で今度は女性ーーー聖白蓮が驚く番となった。
驚きに満ちた瞳が一気に私に向けられ、私はその視線を喜びに満ちた笑みと共に受け止める。
さっきはナズーリン達の今後のために厳しく酷いことをしてしまったけど、それでもナズーリン達とは仲良くしたいと思ってるし、それに星とは百年の付き合いだもん!
……後は、白蓮も分かってくれるよね?
「あの子達の、星の友だったのですね……一つだけ、一つだけ先に聞かせてください。 あの子達は元気にしていますか?」
「うん! 船は地底にあるままだけど、今も元気に白蓮のことを探してるよ! ……ただ、さっきはナズーリン達に酷いことをしちゃったんだけど…………」
「酷いこと……?」
今後のことを考えて泣きすがるナズーリンを振り払い、一言で切り捨てた光景は記憶に新しい。
白蓮を想い、あそこまで感情的になっているナズーリン達に、例え今後のためだとしても白蓮を解放出来ないかもしれない可能性を受け入れることはできなかっただろう。
だからこそ、行動を起こすためにナズーリン達の心を折って、ここまで着いてこられないように咄嗟にああした訳だけど…………もっとやり方はあったんじゃないかと、今も思う。
正しいと信じてるから後悔はしてないけど、罪悪感が私の心に渦巻いていた……。
「ここに来たがってたナズーリン達に酷いことを言って、冷たく切り捨てたの……だから、その…………」
「それは、どうしてそのようなことを……?」
「聖白蓮、あの者達がここに来る資格がないためにフランが泣く泣く心を鬼にしただけのことだ。 これから話すが……聖白蓮、場合によっては我らは我らの意思でここからお前を解放しない可能性がある。 それを受け入れられないであろうあの者達はここに来る資格が得られなかったのだ」
「私を、解放しない可能性、ですか?」
戸惑うように疑問を浮かべる白蓮に、諏訪子が私をフォローするように声を掛ける。
すると白蓮は疑問の視線を私から諏訪子に移し、諏訪子はそれに答えるように言葉を紡ぎ始めた。
「聖白蓮、我らは確かにここからお前を解放できる。 だが、それも我らの提示する条件をお前が受けられた時の話だ。 そうでなければ、我らはお前のためにも、そしてお前の門徒でありフランの友である者達のためにも解放することはできない」
「私とあの子達のため…………単刀直入に聞きます。 その条件とは?」
「簡単なことだ。 人と妖怪、そして神の平等と平和を謳うことを暫く自粛してもらうだけのこと。 期間は……そうだな、お前達が我の庇護下にあると国中に知れ渡りお前達が再び封印される可能性が消えた後、尚且つ大幅に遅れてしまっている『幻想郷』が形となってからだ」
「では、庇護下にある間は私に人だけに教えを伝え、守れと? それに幻想郷とは一体何なのです?」
「なに、人だけである必要はない。 布教をせず、訪ねてくる者だけ受け入れ、我の庇護が届くよう目立たずにいてくれれば良い。 それならば人であろうと妖怪であろうと、神であろうと幾らでも受け入れて構わない。 それと幻想郷だが…………本来ならば、既に遥か昔に出来ていなければならない『全てを受け入れる理想郷』だ。 恐らくは我とフランが原因なのだろうが……まぁこの話はここで話しても意味のないこと。 おおよそお前が布教をしても一切問題のない場所だと思ってくれれば良い」
「………………」
少しだけ気になることもあったけど、諏訪子が私の気にしていたことを全て白蓮に伝えてくれた。
そしてその内容を聞いた白蓮は黙って考え込み始め、場に沈黙が訪れる。
……どうか、どうかこの条件を受け入れてほしいな。
そうすれば、ナズーリン達の笑顔が見れるし……それに、さっきこそナズーリン達には『紅魔館』は手を貸せないって言ったけど、影で支え守ることぐらいは出来るから……!
「…………すみません、もう少し考えさせてください」
「良いだろう、答えが出るまで我らはここにいよう…………ねっ、フラン?」
「うん! 白蓮さんの答えが出るまで、何時まででもここにいるよ!」
白蓮にはとても決断しづらいことなのだと思う。
平等と平和のために今すぐにでも動きたい、でも現実はそれを許さない。
堪え忍ぶ、その辛さは本当に凄いものだから…………。
……せめて、後悔しない選択をしてほしい、そう思いながら私は白蓮の胸元を掴んだままの手に少しだけ力をこめたのだった…………。
ーーーーー
以上、諏訪子仕事モード&白蓮初登場回でした!
いやー、諏訪子に仕事的な意味で本気を出してもらったけど、ついでに伏線も出されちゃったよちくせう……まぁどうにかなるよね!?
……それにしても、オーエンとセプテットとハルトマンとエイリアンの同時アレンジは厳しかった……orz
それではまた次回にてお会いしましょう!




