それは怒り? それとも……?
どうも、東方転妹録最新話です!
えー、今回は紅魔館sideでホラー?、になってます!
……まぁ、フランがいないとこうなるよね(笑)
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー1時間後、紅魔館、玉座の間。
ーーーーside ルーミア
まるで紅い虹のように様々な紅さを見せるステンドグラスからうっすらと日の光が玉座の間に入ってくる。
しかし、それは朝の光ではない。
太陽は既に高く上り、夜行性の多くの妖怪が眠りについている時間の光ーーーー昼の光だ。
「……それで、助けた時にフランの分身は消えて、こいしは医務室に運ばれたのね?」
「うん、御義姉様。 それとこいしは朝からずっとくすぐられていたみたいだから、体力や精神的に今日はもう動けないと思うのかー」
「そう…………となると、地下で閻魔に捕まっているさとりと同様、こいしを動かすことは出来ないか…………」
玉座に片手をつき、私と話している間ずっと俯きながら話す御義姉様。
おかげで御義姉様の表情を窺うことは出来ず、私はただ御姉様の次の言葉を待つだけになった。
「……封獣、客人達は今どうしているのかしら?」
「天狗二人は協力できることがあるなら手伝うって言ってくれたから八雲紫を探しに行ってもらったよ。 それとムラサ達は事情を話して部屋で待機してもらってる。 ムラサ達もフランに聞きたいことがあるから、能力も人探しには使えるし何か手伝えることがあるなら手伝うってさ……まぁ、フランには意味ないんだけどね」
「あら、行動が早いのね? 素晴らしいわ、後で褒美を与えましょう……」
「ん、ありがと。 まぁフランに関することだから、これくらいはね……」
なんだかんだで行動が早いぬえのおかげか、ほんの少しだけ声色が明るくなる御義姉様。
しかし、それと同時に御姉様の周囲の雰囲気がじわりと重くなった。
それを私と同様に感じ取ったぬえは、言葉を続けるに連れてゆっくりと声が薄れていく。
「……それにしても、まさかこの短い間に二回も出し抜かれるなんてね? 一回目は、まぁ私が大きな原因だったけれど…………今回は理由もよくわからないまま。 おまけに前日の夜に交わした約束も一瞬で破られるときたわ」
「「…………」」
「ここまでされたら、幾らフランといっても少しはお灸が必要よね? それに、只でさえ部屋を同じにするという約束を延期されたのよ? 幾らなんでも…………そろそろ、こっちが我が儘を言ってもいいと思わない?」
玉座に座り、俯いたまま淡々と語り続ける御義姉様。
その体は少しも動くことなく、ただ口だけを動かしている。
その姿と言葉に、御義姉様の中にある、今にも爆発しそうな感情が垣間見えた。
……しかし、それは私が望む姿ではなく、また私が望む感情でもない。
私にはフランとの約束があるのだ、フランの道を塞ぐモノを全て排除するという約束が。
だからこそ御義姉様には、『フランの姉』としての行動をとってもらわねば、私が動くことはできない。
「……まぁ、私はフランのやりたいようにはさせてあげたいのだー。 それがフランとの約束だし、私の意思なのかー」
「あら、それじゃあルーミアは手伝ってくれないのかしら?」
「うん、『御義姉様が自分の感情だけでフランの邪魔をするなら』、私は手伝わないし、むしろ御義姉様の邪魔をするのだー」
「……まどろっこしいたらありゃしないね」
私の一言で身の内に溢れる感情の一端を見せた御姉様に、ハッキリと拒絶をした私の隣でぬえが呆れたような声をあげる。
そんなぬえの声に、御義姉様と向き合っているはずの私は思わず『ぬえは出来るだけ敵に回したくない』と、御義姉様とは全然関係のないことを考えてしまった。
ぬえは色んなことを割り切るのが早い、そしてその根拠となる判断は的確だ。
フランがオーエンになった時も、失敗したとはいえある程度フランが傷付くのを覚悟の上で行動していたし、前回フランが脱走した時も、1人だけ冷静に妖精メイド達を動かし私や御義姉様とは別の方法で私達よりも早くフランを見つけ出した。
……だから、戦士としては勝てる……しかし策士としては、私はぬえに遠く及ばないのだろう。
こちらの予想を超える策を持って戦う者を、私は出来るだけ敵には回したくない。
「ふふっ、封獣に言われてしまってるわよルーミア? ……まぁでも、フランとの約束なら仕方がないわよね。 それじゃあお願いルーミア、『1人の姉として、嘘をついたり家族に一杯心配を掛ける大切な妹に少しだけ説教をしなくちゃいけないから』、私のすることを手伝って頂戴?」
「……了解したのだー。 『優しい姉』のために、一肌脱ぐのかー」
「ありがとう、ルーミアにも後で何か褒美をあげないといけないわね」
ーー…………コンコンッ、ガチャッ。
私と御義姉様のやりとりが一息ついた時、ノックの音がしてから玉座の間の扉が開かれた。
その音を私とぬえは振り向くことなく背中で受け止め、入ってきた人物が歩いてくる足音を静かに聞き続ける。
「……御話し中失礼します。 妖精メイドの配置について、報告を申し上げに参りました」
「御苦労、美鈴。 続けて頂戴」
「はっ! 先日妹様が脱走された際に封獣さんが作ってそのままにしていた人里の仮拠点、そこに妖精メイド10名、警備メイド5名を送り、他勢力との連携を図れるよう手配いたしました。 それ以外のメイドにつきましては、抜けた人数分のシフトを埋めた点以外は通常通りとしています」
私の横、ぬえから見て私を挟んで右に美鈴が立ち、メイド達の配置変更の報告を済ませる。
ただならぬ雰囲気を漂わせるこの空間に気圧されることなく立つ姿は、やはりある程度の実力者であることの証明なのだろう。
……が、実力があるだけでは意味がない。
私とてぬえには劣るけど、やはり策がたてられねば真の実力など発揮できはしないのだから。
「美鈴、仮拠点に送った妖精メイド達の属性内訳はどうなっているのかしら?」
「はっ! 妖精メイドは火が2名、水が3名、土が3名、風が1名、雲が1名。 警備メイドは花が1名、氷が1名、雷が3名となっています」
「そう、目と盾と剣は揃っているのね……」
「風と雲…………あの子達、もう帰ってきてたんだ……」
必要な属性が揃っているか確認した御義姉様と、少しだけ配置されたメイドに興味を持ったように呟くぬえ。
おそらくぬえの方は、先日風見幽香に消し飛ばされたという妖精達のことを言っているのだろう。
……そんなことに頭を巡らせていると、今度こそ御義姉様がゆっくりと顔をあげ始めていた。
「……美鈴、どうせなら屋根の上で凍ってる『あの子』も言いくるめて送りなさい。 実力的には申し分ないでしょうし、もし『あの子』がお友達の大妖精を連れていってくれれば、大きな氷に優秀な火と風が手伝ってくれることになるわ」
「っ!! り、了解しました! それではすぐに手配して参ります!」
ーーカッカッカッ……ガチャ、バタンッ。
「……御義姉様、ちょっと顔が怖くなりすぎてるのかー。 美鈴がびっくりしてたのだー」
「ほんと、それじゃあフランに逃げられちゃうんじゃない? 御姉様が怖いー、って」
「あらあら、その言葉はそのまま貴女達に返すわ。 ……本当に、嬉しそうな顔をしているじゃない?」
あぁ、どうやら私の顔にも御義姉様と同じように出てしまっていたらしい。
今まさに御姉様が浮かべている…………猟奇的で、それでいて愛情に満ち溢れた狂ったような笑みが。
……この気持ちも笑顔も止めることはできない、止まることはない。
御義姉様の本気の雰囲気に呑まれてしまったのだ、そう簡単に収まるはずがない。
大切なフランを迎えに行ける理性と本能の両方の喜び、逃げる獲物をじわりじわりと追い詰める本能の喜び、計算しつくして勝利することへの理性の喜び。
あぁ、止まることはないだろう。
逃げるフランをこの手に抱くまで、捕まえたフランに接吻をして愛でるまで、怒られて落ち込むフランを慰めるまで…………元気になって笑顔を振り撒くフランを、全てをもって私の中に包み込むまで。
「……さぁ、準備は良いかしら?」
「うん、何時でも行けるのだー!」
「まっ、ちょっと本気でいってみるかな?」
「ふふっ、頼もしい限りだわ…………それじゃあーーーー」
「ーーーー愛らしい小鳥を捕まえに、行きましょうか」
ーーーーー
以上、割と本気で悪魔の館な紅魔館回でした!
……うん、あれだ、いつも通りフランがいないとマジで怖くなるいつも通りの紅魔館でした。
説教をしてやると意気込むレミィ達だけど…………フラン相手だからなぁ(笑)
とりあえず、フラン包囲網スタートですよ!
それではまた次回にてお会いしましょう!